いるかちゃんヨロシク二次小説ファンサイトイラストjuniです~ 出来るだけ元通りにとキャッシュを探してみましたが、見つかりません。
mameさんごめんよう。
~ 8月31日 ~(いるか編)
「春海ぼっちゃま~、いるかさんからお電話ですよ~。」
ドダダダダダダァー
受話器の向こうからは、今までに無い音が聞こえる。
程なく彼が出るだろう・・・。
「もしもし、いるかなのか?」
落ち着きの無い声におののく。
「もしもし?」
「うん。」
催促の声に、やっと返事を返した。
そして、真っ先に言おうと思っていた言葉を口にした。
「ごめんね。・・・ごめんなさい。」

消え入りそうな声で言うから不安になる。
このまま会話が終わりそうで。
「もういいんだ。」
だから話を続けた。
「電話ありがとう。疲れていただろうに。」
疲れなんかより、春海の声が聞きたかった。
「大丈夫だよ。」
「そうか。」
言いたい事がたくさんあるのに言えない。もどかしい。
「あ・あの・・・あの。」
「ん?」
列車の中でずっと考えた。私の気持ちを伝えようって。
言わなければ伝わらない事はたくさんある。
私だって言って貰った。だから、電話する勇気が持てた。
「あのね。」
「ん?」
あせらず待っていてくれる。お世辞にも、言葉が上手とは言えない私のために。
「7月に手紙が、父ちゃんと母ちゃんから来たの。それで・・・。」
「それで?」
「それでね。初めてこんな長い期間、かもめのお家以外に預けたから、私の事が心配だったって。
とにかく、急いで仕事を終わらせたんだって。寂しかっただろうって。」
「そうか・・・。」
「私ね。父ちゃんと母ちゃんに、とうぶん帰って来なくていいって、手紙に書いたことがあるんだ。」
あれは確か去年の7月だ。剣道大会に春海の代わりに出場した後。
あの頃から、自分の中で倉鹿という場所が特別になって来た。
「うん。」
「でも、私が倉鹿に行った頃って、喧嘩と早弁ばっかりしてて、すごく心配かけてたし。
東京に居たい、倉鹿に行きたくないってずっと言ってたから、我慢してるって思ったみたいで。」
喧嘩と早弁、それは倉鹿でも、あまり変わって無い気がするが・・・最近は別として。
珍しく、自分を語るいるかの言葉を聞いていた。
耳元に聞こえる声、瞼を閉じる。
「父ちゃんと母ちゃん、すごく頑張って、急いで仕事を終わらせたんだって、書いてあった。
だから・・・倉鹿に居たい。修学院を卒業したいって言えなかった。」
みんなと一緒に居たい。でも、本当に頑張ってくれた両親には、言えなかった。
予定では、最低でも中学までは倉鹿に居たはず。
両親がこれまでに無いほど、私の為に頑張ってくれたのが伝わってくる手紙だった。
「本当に・黙って・・て・ごめんね。最後に・・・ウソついて・・・ごめんなさい。みんなにも・・伝え・・て。」
途切れ途切れの声の中に、涙が混じるのがわかる。
見えないはずの、いるかの涙が見える。
いるかの気持ちが十分に伝わってくる。
「大丈夫だから。」
春海が一言言った。
「初めはみんな、泣いたり怒ったりしたけどね。」
「だってね。本当に見送られる・の・・」
「辛かったんだろ。それも伝えたから大丈夫。」
いるかを安心させる様に、優しくゆっくりと言葉を紡ぐ。
解ってる。
君がどれ程倉鹿を、みんなを好きだったか。
「いるか、みんなからの伝言を伝えるよ。”何時でも倉鹿に帰っておいで”だってさ。おれも同じ気持ちだ。」
帰っておいで・・・優しい響き。
「私・・・ありがとう。」
ああ、何時でも帰っておいで。春海は無言でそう言った。
「・・・春海」
「ん?」
「目を閉じて声を聞いてるとね。春海がそばに居るみたい。」
いつの間にか涙を止めたいるかは、小さく呟いた。
「そうだな。いるかがそばに居るみたいだ。」

瞼を閉じていた春海は頷いた。
そう、見えないものをみるなら、瞼を閉じればいい。
「いるか、おれたち、来年はまた一緒にいるからな。」
「うん。」
「また、みんなとも会えるから。」
「うん。」
呪文だね。幸せの呪文。優しく真綿でくるまれているみたい。
「大丈夫だから。」
「うん。」
確かに、春海が、いるかが、そばにいるのを感じた。
瞼を閉じれば見えてくる。
倉鹿の町のこと、みんなと過ごした日々のこと。二人で歩いた川のほとり。春海からの・・・。
その日の電話の結び。
「今日、父と話して決定した。来年の春、徹と二人で東京に行くよ。」
あまりの展開の速さに、少し驚きつつも
「うん、待ってるね。」といるかは元気に答えた。

~終わり~
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