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~ 8月31日 ~(徹編)

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~ 8月31日 ~(徹編)

いつまで見送るつもりだろうか?

兄の後姿を見ながら、徹は思った。

こんな兄は初めて見た。

背中の向こうは、泣き顔であろう。

見えないまでも感じられる。

兄の涙。

多分、おかーさんが死んだ時以来だ。

激しく泣く自分の隣で、グッと堪えながらも、しずくを拭っていた兄が思い出される。

「東京に行く」と兄は叫んでいた。

つい先日まで、東京には行かないと言っていたのに。

しかし、徹の中にも「東京に必ず行く」と決意している徹がいる。

(だから、お兄ちゃんがそう思わないわけが無い。)

そして、少女が現れる前の自分たちの事を思い出す。

(お兄ちゃんはそうじゃないと思っていたけど、僕は寂しかった。)

兄の自分への愛情に疑いは無い。

どちらかと言うと、通常の兄弟よりも繋がりは強いと思う。

でも、正直、どうしようもなく寂しかった。

亡くなった母へ?なかなか家に帰らない父へ?忙しすぎる、忙しくしているような兄への慕情?

いったい誰への思いなのかさえ分らない。誰へ向けて良いのかも分らない。

少なくとも、兄は一人で乗り越えたのだろうと思っていたし。

自分は頼るべき人が居るのだし、でも・・・・。

抱きしめる暖かさが恋しくて、たまらなく寂しかった。




列車に乗って行ってしまった少女。

(いるかちゃんが来てから、お兄ちゃんは怒って、怒鳴って、笑って、あわてて、泣いて。)

自慢の兄。

強くて何でも出来て冷静な・・・でも、今のお兄ちゃんのほうが何倍も好きだ。

(もしかして、お兄ちゃんも寂しかったかな・・・。また寂しくなるのかな。)

自分が、寂しさを忘れていたからそう思った。

暖かさを教えてもらったから、そう思った。

そして、今まで知らない感情も。

「もしかして、僕の初恋っているかちゃんかなぁ。」

小さく呟いてみる。

先刻の二人。終わってしまった淡い思い。

母に対する思いとは、ちょっと違う気がするモノ。

兄が振り向き自分を見た。

小さく微笑む彼が、たった一刻程の間に、少し遠くなった(大人になった)気がした。

立ち上がって話しかける。

「お兄ちゃん。東京に行くんだね。」

”確認 ”する。

「ああ。」

「僕も行くよ。」

「そうだな。」

分かっているよ、と言わんばかりの表情。

(僕たちはいるかちゃんを取り戻すんだ。僕の全力を出して頑張ろう。)

自分に伸びた兄の手を握り、彼は強く決意した。

彼の全力・・・。

その日の夜、徹は、冷静沈着(兄を凌ぐ)で名高い彼の父を右往左往させ、速攻で東京行きを獲得した。

勿論兄弟で。

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~ 8月31日 ~(いるか編)

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juniです~ 出来るだけ元通りにとキャッシュを探してみましたが、見つかりません。
mameさんごめんよう。


~ 8月31日 ~(いるか編)

「春海ぼっちゃま~、いるかさんからお電話ですよ~。」

ドダダダダダダァー

受話器の向こうからは、今までに無い音が聞こえる。

程なく彼が出るだろう・・・。

「もしもし、いるかなのか?」

落ち着きの無い声におののく。

「もしもし?」

「うん。」

催促の声に、やっと返事を返した。

そして、真っ先に言おうと思っていた言葉を口にした。

「ごめんね。・・・ごめんなさい。」


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消え入りそうな声で言うから不安になる。

このまま会話が終わりそうで。

「もういいんだ。」

だから話を続けた。

「電話ありがとう。疲れていただろうに。」

疲れなんかより、春海の声が聞きたかった。

「大丈夫だよ。」

「そうか。」

言いたい事がたくさんあるのに言えない。もどかしい。

「あ・あの・・・あの。」

「ん?」

列車の中でずっと考えた。私の気持ちを伝えようって。

言わなければ伝わらない事はたくさんある。

私だって言って貰った。だから、電話する勇気が持てた。

「あのね。」

「ん?」

あせらず待っていてくれる。お世辞にも、言葉が上手とは言えない私のために。

「7月に手紙が、父ちゃんと母ちゃんから来たの。それで・・・。」

「それで?」

「それでね。初めてこんな長い期間、かもめのお家以外に預けたから、私の事が心配だったって。

とにかく、急いで仕事を終わらせたんだって。寂しかっただろうって。」

「そうか・・・。」

「私ね。父ちゃんと母ちゃんに、とうぶん帰って来なくていいって、手紙に書いたことがあるんだ。」

あれは確か去年の7月だ。剣道大会に春海の代わりに出場した後。

あの頃から、自分の中で倉鹿という場所が特別になって来た。

「うん。」

「でも、私が倉鹿に行った頃って、喧嘩と早弁ばっかりしてて、すごく心配かけてたし。

東京に居たい、倉鹿に行きたくないってずっと言ってたから、我慢してるって思ったみたいで。」

喧嘩と早弁、それは倉鹿でも、あまり変わって無い気がするが・・・最近は別として。

珍しく、自分を語るいるかの言葉を聞いていた。

耳元に聞こえる声、瞼を閉じる。

「父ちゃんと母ちゃん、すごく頑張って、急いで仕事を終わらせたんだって、書いてあった。

だから・・・倉鹿に居たい。修学院を卒業したいって言えなかった。」

みんなと一緒に居たい。でも、本当に頑張ってくれた両親には、言えなかった。

予定では、最低でも中学までは倉鹿に居たはず。

両親がこれまでに無いほど、私の為に頑張ってくれたのが伝わってくる手紙だった。

「本当に・黙って・・て・ごめんね。最後に・・・ウソついて・・・ごめんなさい。みんなにも・・伝え・・て。」

途切れ途切れの声の中に、涙が混じるのがわかる。

見えないはずの、いるかの涙が見える。

いるかの気持ちが十分に伝わってくる。

「大丈夫だから。」

春海が一言言った。

「初めはみんな、泣いたり怒ったりしたけどね。」

「だってね。本当に見送られる・の・・」

「辛かったんだろ。それも伝えたから大丈夫。」

いるかを安心させる様に、優しくゆっくりと言葉を紡ぐ。

解ってる。

君がどれ程倉鹿を、みんなを好きだったか。

「いるか、みんなからの伝言を伝えるよ。”何時でも倉鹿に帰っておいで”だってさ。おれも同じ気持ちだ。」

帰っておいで・・・優しい響き。

「私・・・ありがとう。」

ああ、何時でも帰っておいで。春海は無言でそう言った。

「・・・春海」

「ん?」

「目を閉じて声を聞いてるとね。春海がそばに居るみたい。」

いつの間にか涙を止めたいるかは、小さく呟いた。

「そうだな。いるかがそばに居るみたいだ。」


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瞼を閉じていた春海は頷いた。

そう、見えないものをみるなら、瞼を閉じればいい。

「いるか、おれたち、来年はまた一緒にいるからな。」

「うん。」

「また、みんなとも会えるから。」

「うん。」

呪文だね。幸せの呪文。優しく真綿でくるまれているみたい。

「大丈夫だから。」

「うん。」

確かに、春海が、いるかが、そばにいるのを感じた。

瞼を閉じれば見えてくる。

倉鹿の町のこと、みんなと過ごした日々のこと。二人で歩いた川のほとり。春海からの・・・。



その日の電話の結び。

「今日、父と話して決定した。来年の春、徹と二人で東京に行くよ。」

あまりの展開の速さに、少し驚きつつも

「うん、待ってるね。」といるかは元気に答えた。

いるかちゃんヨロシク


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~8月31日~春海編

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~8月31日~春海編

大人の都合で俺達を振り回すのなら、いるかと一緒にいる為に、何処までも彼らを利用する。

駅のホームに一人佇み、たどり着いた・・・彼の結論。



一瞬触れた、泣き顔の彼女。遠く小さく見える列車。その場を離れる事が出来なくて。

もしかしたら、彼女は戻ってこないとも限らない。

ありもしないことを考えたり、彼女を引き止められない自分の不甲斐なさを思ったり。

力の無い事、支えてあげられなかった自分や、最後の表情を。

いろんな思いが渦巻いて、涙が止まらない。足が動かない。

どうして今、いるかは行ってしまう? どうしても、いるかが居なかった事には出来ない。

彼女が隣に居なかった時には戻れない。

孤独を、寂しさを知った。たくさん暖かな気持ちをくれた。一番守りたい者だった。

そう、いろんな事に気づいてしまった。気づく前には戻れない。

さんざん思いを巡らせての結論、やっと彼は彼女の去ったほうに背を向けた。

目をやると、弟がやはり自分同様泣きながら、ベンチに腰掛けてこちらを見ている。

つと立ち上がると、兄に語りかけた。

「お兄ちゃん。東京に行くんだね。」

「ああ。」

「僕も行くよ。」

「そうだな。」

弟と自分は似ている。自分にとってかけがえの無い存在なら、彼にとってもそうだろう。

最愛の弟に手を伸ばし、二人手を握って駅のホームを歩き出した。

「お兄ちゃんと僕。また、いるかちゃんと一緒に居れるようになるよね。」

「ああ、絶対そうする。」

彼はひときわ強く弟の手を握った。徹はその手を握り返した。

「徹。今年の春の事覚えてるか。」

「お兄ちゃんが東京の里見って学校に行かなかった時のこと?」

「ああ、そのとき思ったんだが・・・」

2人は顔を見合わせていった。

「お父さんは僕達に東京に来てほしい。」

二人笑みを漏らす。

(父さんには申し訳ないが、使える手は何でも使わせて頂きます。)

内に湧き上がる力。そう、全力で戦う。絶対に諦めない・・・そうすれば、道は拓ける。

彼女が身をもって教えてくれた事の一つだ。

「僕もね。協力するよ。」

うん?と弟を見る。

「お父さんに泣いて泣いて泣きつくよ。お父さんと一緒にいたーい。お兄ちゃんと一緒にいたーい。僕の武器は涙だね。」

思わずぷーっと噴出した。



 ずっと、優等生だった。

兄と弟二人、「よく出来たご兄弟ね。」と言われて来た。

亡くなった母が、人の口の端にのぼらぬように。父にとって自慢の息子であり続けるように。

しかし今、以前感じていた、彼らの父親に対する遠慮?愛情への疑念?も薄らぎつつある。

それを確かにする為にも、東京へ行こう。彼女のもとへ。

春の嵐が去った後の夏空。眩しすぎて涙がにじむ。

すんだ空気の中で見えてくる確かなモノ。

「まずは会場に行って、知らせないと。」

「みんな泣くかな。」

「そうだな。」

涙を拭った兄と弟は、仲間のことを思いやりながら鹿々川へと向かった。

夜に待つ戦いの作戦を練りながら。

~おわり~いるかちゃんヨロシク二次小説 いるかちゃんヨロシクファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシク漫画
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