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~バレンタイン~高1 後編

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mameより
いつもありがとうございます。

何とか間に合いました。
予想より長くなり、初めて焦りました。

前編でご不快を感じた方は、読まれないで下さいね。


~バレンタイン~後編

家出事件の後、彼らは、出来るだけ一緒に帰るようにしている。

特に、約束をしているわけではない。

出来るだけそうしようと、主に春海が努力している。

いるかも・・・していない訳ではない。

唯、帰りに何か食べて帰ろう!と誘われると、断らないだけだ。(断れない・・・ではない。)

そんな時のメンバーは大体決まっているし、生徒会のメンバーの時は、春海も一緒だ。

2人で帰る時は、春海はいるかを自宅まで送り(サッカー部の練習は結構遅くまであり、冬ともなると真っ暗だ。)玄関の前で別れるようになった。

いるかは、練習で春海も疲れているのだからと、強く辞したのだが、「俺が、出来るだけ一緒にいたいんだ。」と押し切られた。

最初の頃は、悪いなぁと引き気味だったが、今では、2人だけの貴重な時間として、楽しみの一つとなっていて。

そんな、嬉しそうな彼女の笑顔が、春海を何よりも喜ばせていることを、いるかは気付いていない。

そして今日、いつもなら和気藹々と帰る道、いるかは、どうしようもなく緊張していた。

考えてみれば、バレンタインデーに普通に?手づくりのチョコを渡すのは、初めてなのだ。

一回目は、遅れに遅れて一ヶ月過ぎて、春海の強い希望もあり・・・なし崩しに?

二度目は、早く渡さないと電車が出ちゃうよ・・・と、逼迫した状況で・・・何とか。

今回は・・・。

バレンタインチョコレートって、どんなタイミングで渡すの???

いつもの駅で降り、そこから自宅まで歩きながら、どうしよう!どうしよう!とオロオロする姿を、ワザと春海は見物していた。

可愛い。お前って本当に可愛いよ。今日ぐらいは、いいよな。

噴出す寸前まで見物し、このまま行くと、六段に着いてしまうな・・・それは困る・・・と。

彼は、助け舟を出す。

「この先の公園に、寄ろうか?」

時々、寄り道する公園の手前で話しかけた。

いるかは、はっ!と見上げて、「うん。」と勢いよく返事を返し、そのまま公園へと、2人で向った。

そこまでは良かったが、さて、何と言って渡せば良いのか・・・彼女の悩み?は尽きない。

2人は言葉も無く、並んでベンチに座っている。

この状態がずっと続いている。

いるかのひざにはバックが乗っているから、チョコはあの中にあるのだろうと、推察できた。

さて・・・春海は考えた。

出来れば、いるかから言って欲しいが、もう公園に着いてから、軽く10分は過ぎただろう。

あまり遅くなると、ご両親が心配するし。

まぁ、さっき十分に楽しんだことだし。

「いるか、今日、バレンタインデーだよな?」

いるかは、あわてて春海の方を振り向いた。

「俺さ。楽しみにしてたんだけどなぁ・・・。」

「あ、あ、あのね。あの、」

彼女は、そっとバックの中から、緑の小箱を取り出した。薄黄緑色のりぼんが結ばれている。

「これ。」

いるかはそう言いながら立ち上がり、彼の正面に移動した。

「今年は作れたの。前より、ずいぶんマシだと思う。」

おずおずと手を伸ばし、渡されたそれを、春海は両手で受取った。

数十個、数百個、数千個の好意より、この一個があれば何もいらない。

俺が愛するたった1人からの、世界で唯1つのチョコレート。

「ありがとう。嬉しいよ。」

春海のその一言で、いるかから、柔らかな笑顔が零れた。

「開けていいか?」

「うん。」

彼の指が、黄緑のシフォンのリボンに触れる。

・・・いるかは、ドキドキしながらその姿を見ていた。

大きな春海の手が、大切そうに、優しく、優しく、ラッピングを剥がしていく。

一つの絵のような、綺麗な景色。何だか、羨ましい気持ちになる。

いいなぁ・・・あたしが渡したチョコレートだけどさ・・・。

じっと見入るいるかの視線に気付いた春海は、

「いるか、ここに座れよ。」

片手を、自分の膝に置いた。

「はぁ!!!?えぇ!」

驚く顔を見て、笑いながら、「冗談だよ。横に座ったら?」と、元々彼女が座っていた方へ目を向けた。

「あ・・・うん。」

いるかがベンチに座ると、ゆっくりと、とてもゆっくりと、彼はチョコレートの箱を開けた。

中には、ハート型のミルクチョコレートが4つ、鎮座している。

「今1個、食べていいかな。」

春海はいるかの方を見やり、微笑んで言うと、

「もちろんだよ。春海に作ったんだから。」

いるかは、首を縦に振りながら答えた。

そして、またも彼の手に見入る。

「いるか?何かあるのか?」

流石に気になり問いかけると、彼女は顔を上げ

「・・うんっと・・・、春海の手がさ。すごくすごーく優しく、チョコレートに触るからさ・・・。」

そう言って、再び彼の手を見る。

・・・こいつって!!!

俺が、本当に触れたいのは、お前なんだぞ・・・とは、まだ言えない。

そのかわり。

「いただきます。」

春海は、チョコレートの一つをつまんだ。

いるかの視線もそれを追う。

ゆっくりと口に入れると、いるかの視線も、春海の口元で止まる。

その甘い味を味わいながら、いるかの頬に、そっと優しく手を添えて。

「・・・味見してみる?」と問いかけた。

いるかは、パッと頬を紅に染めた。

そして、静かに目を閉じたのだった・・・。

~バレンタイン 後編 終わり~いるかちゃんヨロシク二次小説 いるかちゃんヨロシクファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシク漫画
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~バレンタイン~高1 前編

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mameより
皆様 こんばんは。いつもありがとうございます。

バレンタインのお話、ショートだったはずですが、前項編となってしまいました。
大変申し訳ございません。

それでも宜しければ、お付合い下さいませ。


~バレンタイン~高1 前編

「いるか~、本当に、もらっても良いのかい?」

泣き出さんばかりに、鉄之助は叫んだ。

娘から初めてバレンタインチョコを貰ったばかりか、それが手作りチョコレートだというのだから。

少々?いや、かなり大胆な形だろうと、そんなことは些少なことだ。

「こんなにいっぱい!」

彼の心情的には、チョコの量と父への愛情が比例しているのだろう。

大皿に山盛りにされたチョコの前で、感動している。

「あは、はははは。うん。いつもお世話になってるからさ・・・。」

歯切れ悪くいるかが答える横で、母葵はニコニコと笑顔だ。

昨夜、出来上がった山盛りのチョコを前にして。

「お父さんにおあげなさいな。」と、笑顔で言った彼女は、その後、

「私は当分、チョコレートの匂いも嗅ぎたくないわ。」とのたまった。

そう、目標は達成した。

思い起こせば2年前、「手づくりの神話の崩壊」とまで言われたチョコレート。

今年は、かなり良い出来である。

しかしその代わりと言っては何だが、食べ切れないほどの量の、微妙なチョコが出来上がった。

たった4つの、2年前とは比べ物にならないチョコを得るが為に。

春海に渡す分は、父ちゃんには見せられないなぁ・・・。

保冷財と共に、バッグの中に入れられた、深緑の和紙に、薄黄緑のシフォンのリボンが結ばれた小箱。

「いやぁ、春海君に悪いなぁ。」

鉄之介がそう言うと、いるかは、そそくさと学生鞄とバックを握り、

「それじゃ私、学校に行くね。」

苦笑いを浮かべながら、学校へと向かったのだった。




校門の前に、見慣れた姿が見えた。

門柱に寄りかかり、学校へと歩いてくる生徒を見ているようだ。

ちらちらと視線を向ける女子生徒を無視し、いるかに気づいたのか、歩み寄ってきた。

それに気付いた彼女は、「春海~。」と元気よく駆け寄り、問いかける。

「こんなところで何してたの?」

こんな風に校門に立つと言えば、遅刻の取締まりか、風紀検査くらいのものだ。

しかし、そんな話は聞いていない。

・・・また、会議中に寝てたかな?

自分には、あまりにもありがちな事を考える。

「まぁな。丁度時間的に、お前が来るかなって思ったからさ。」

最近、遅刻を(あまり)しなくなったいるかの登校時間に合わせたとは、あえて語らない。

「そっか。へへ。おはよう。」

いるかは指で、自分の鼻にちょっと触れながら言った。

春海は、そのしぐさが可愛くて、彼女のフワフワの頭に手を載せ、「おはよう。」と微笑む。

そして、二人連れ立って校舎に向かい歩き出す・・・いつもより春海は、ほんの少し引いた位置で。

その事を、いるかには気付かれないように。

それ以外は、一見すれば普段の2人だ。

そこへ、男子生徒が1人近づいてきた。

手には、花束が握られている。

クソ・・・春海は心の中で毒ついて、そのままそれを目に乗せる・・・と、彼はUターンして行った。

「よし。」

春海の小さな独り言に、「どうしたの?」といるかが反応した時、次なる害虫(失礼)が、意味深な箱と花束を持って現れた。

「いるかちゃん。」その、自信満々な声。

呼ばれたいるかが声のする方へと顔を向けると、その目の前に、プレゼントが乗った手が伸ばされ・・・。

「君のこと、が~~~~~・・」

春海の沸点は、ある条件に限ってのみ極端に低い。

幼馴染でさえ引きつるその殺気を、まともに受けた男子生徒は、言葉が続かない。

「いるか、知り合いか?」

その質問に、いるかは首を横に振る。

「そうか。」と言いながら、春海は目の前の男子生徒に、鋭利な刃物のような視線を送った。

彼は顔を引きつらせ、かくかくと足を鳴らしながら、その場を去った。

その後は、いるかと春海の邪魔をする者も無く、教室までしゃべりながら行ったのだが・・・。

「いるかちゃんの頭上で、山本会長が睨みを利かせて近づけなかった・・・涙」というのは後の噂。

朝のホームルーム前、中休みと、春海のガードは固く、ありの子一匹とは行かないまでも、昨日ほどの混雑?は無く。

もちろん放課後も、お姫様ヨロシクいるかを教室に迎えに行き、生徒会室に移動するその間も、春海は殺気を放っている。

その上、相乗効果というか、副産物と言おうか、婚約前の恋人を横にしてチョコレートはと、春海へのそれも激減した。

実際は、余りにもあからさまな彼の愛情表現を目の当たりにしては、渡せる訳も無く、周囲に放たれる殺気に、近づくことも出来なかったのだが・・・。

お弁当を食べる為に生徒会室に入っても・・・勇者?愚者?が1人、尋ねて来たお陰で・・・春海の機嫌が、良い方向に向くことは無く。

いるかにしてみれば、倉鹿修学院の時から見慣れた光景で、周囲のように戦々恐々とすることはない。

1人無邪気に「今日はいっぱい一緒にいれたね~。」と喜んでいた。

そしてそのまま、春海はいるかを、サッカー部の部室までエスコート?した。

その部室の前で・・・。

「春海、今日も一緒に帰るよね?」

いるかは大事を取って確認した。

今日は何だか一日、周囲がドタバタしていたような気がする。

春海に、ゆっくり話しかける雰囲気じゃ無かった。沢山一緒に居れたのは、嬉しかったけどさ。

「ああ。」

もちろん!の部分は声に出さない。

「終わったら中で待ってろよ。出来るだけ急いで、迎えに行くよ。」

また、害虫(失礼)が群がっても困るしな・・・。

そういい残して、春海は野球部の練習へと向ったのだった。




部活の練習が終わり、着替え終わったいるかは、珍しく言いつけを守って、部室の中で春海を待っていた。

椅子に座り、先程までのことを思い出す。

玉子が、他の1年の女子を、やれ急げと部室から追い出した後、玉子といるかの2人は、帰る準備を始めた。

その時に、玉子に言われたこと・・・。

「いるか、ちょっとは私にも責任があると思うからさ。言っとくけどね。」

「何?」

キョトンとした目で、いるかは玉子を見た。

「意外と、あんたを好きってヤツ、多いからさ。」

「うん。嬉しいよね。いっぱいチョコレート貰ったよ。」

この自覚の無さが彼女の魅力でもあり、弱点でもあるのだろう。

玉子自身、こんないるかを好ましく思っているが、如何せん、里見の男共は自信家で、プライドの高いヤツが多い。

今日の昼、生徒会室で巧巳に聞いた限りじゃ、春海がピリピリしてもしょうがないと思えた。

「自分の彼女に、香水にアクセサリーを贈られたら、いい気はしないだろ。」

「まぁね。でもいるかはさ、それに左右されるようなヤツじゃないし。」

巧巳は同じく、まぁな。と返しながら、視線を例の箱に移す。

「でも、それとコレとは別だろ。」

春海に対する宣戦布告とも受取れるそれら。

確かに・・・金持ちのボンボンの頭の構造に目眩かぁ。同感だね。

突然黙っているかを見詰める玉子に、いるかは不安になり、言葉を続けた。

「玉子も貰ってたじゃん!」

「そっちじゃないよ。あんたが意味不明って言ってたヤツ。」

不意にいるかの表情が曇る。

「あ・・・あれは・・・。」

「いるか、あんたさ。全然、自覚が無いわけじゃないだろ。さすがに今回はさ。」

いるかは返答に詰まる。

「多分、信じられないとか・・・そんなもんだろ。」

「うん。」

素直にいるかは頷いた。

こんな自分に、異性が好意を持ってくれるなんて、信じられないのだ。

男勝り、はねっかえり、チビ、化物、小学生、チンクシャ・・・さんざん言われ続けてきた。

何の冗談?悪戯?ドッキリ?

「いるか、あんたね。綺麗な格好して、静かにしてれば、結構可愛いんだよ。」

「嘘だぁ。そんなの。」

即答で異論を唱える。

「はぁ、こんな時、嘘なんか言うもんかよ。ちょっとは春海の身にもなってやれって事だよ。」

伝わるだろうか?無理かなぁ・・・。

入学すぐの頃の扱いとは、天と地の差だからなぁ。

「とにかく、春海は心配なわけ。それだけでも理解しな。あんただって、春海が本命チョコ受取ったら、いい気はしないだろ。」

「そりゃ~・・・。うん。わかった。」

いるかの返事を聞いて、玉子は部室を出て行き、いるかは部室の中で、春海を待った・・・という訳だ。

いつもの彼女なら、わざわざ中で待ったりはしない。

春海の姿が見えたら、すぐに駆けて行けるように、ドアの外にいるのだが。

コン、コン、

女子サッカー部の部室がノックされた。

いるかは鞄とバックを握り、急いで入り口に向かい、ドアを開ける。

そこには春海がいて。

「待ったか?」

微笑みながらそう言った。

「ちっとも!早く帰ろう。」

いるかも笑顔を返してそう言った。

~バレンタイン 後編へ続く~いるかちゃんヨロシク二次小説 いるかちゃんヨロシクファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシク漫画

~バレンタイン イブ~高1

こんばんは~juniです。
バレンタイン3部作の2つ目です。

前から書きたかったお話の一つだそうです。


~バレンタイン イブ~

里見学習院に共に入学して、最初のバレンタインデーは土曜日。

今年は、特別な日にしたい、そう春海は思っていた。




さて、前日からバレンタイン攻撃?は始まった。

去年と同じで、倉鹿と東京、場所は違えど言う事は同じ。

「すまない、受取れない。」それだけを、春海は繰り返す。

野球部員や同級生達は「減るもんじゃないし、貰ってやればいいのに。」と口々に言うが、頑として彼は断った。

同じく人気の巧巳は、「サンキュー」と軽く笑顔で答えて受取っている。

断る春海には何も言わない。

そして、同じく人気のいるか。

リコール運動、球技大会、高校対抗駅伝大会、サッカー大会の活躍で、最初の頃の扱いは何処へやら、女子の人気はうなぎのぼりだ。

もともと里見中等部は男女別で、女子校的な文化?も盛んだったこともあり、結構な数を貰っている。

春海は、倉鹿修学院での経験で驚きもしないが、他の者はそうでもなかった様で、当のいるか本人も、想像していなかったらしい。

「え~~、新顔組だよ。あたし~。」と、最初は驚いていたようだが、次から次へと来る彼女らに、笑顔で「ありがとう。」と受取っていた。

結局、教室に置けない量のそれは、案の定、生徒会室に持ち込まれた。

その累々たるプレゼント・・・気にしていなかったはずなのに、気になる物がある。

花束となると、気になるものである。

その上、どう見ても、女子とは思えないカードに書かれた名前を、春海はじっと見詰めた。

巧巳がそれに気付く。

「里見はさ、気障なヤツっていうか、外国がぶれが多いんだよ。向こうじゃ、男が好きな女にプレゼントをやる日でもあるんだろ。」

好きな女・・・リコールの時の舞台衣装、文化祭の時の姿、女神と評される・・・いるか。

春海は、黙してプレゼントを睨み続け、その背中からは・・・。

「おい、殺気を漲らせるなよ。」

向けられた経験のあるそれに、巧巳は慌てた。

「・・・・・・。」

「やめろっ!」と巧巳は言うが、一向におさまる気配は無い。

そんな中。

ガチャ!

その音に、男2人がドアの方を見ると、大きな紙袋を持った、女子生徒が現れた。

「ふ~、高等部に来たら減ると思ってたのにさ。」

女子サッカー全国大会優勝の立役者の一人、玉子である。

ドサッ

そして、無造作に紙袋を置いたとたん、顔をしかめた。

「何だよ、2人して。それに何さ。この雰囲気。」

殺気みなぎる狭い空間。発信先は・・・。

「春海、何見てんのさ?」

山本春海を呼び捨てにする、数少ない(どちらかというと恐いもの知らず)女子の一人は、プレゼントの山に、再び見入る彼に話しかけた。

「ああ、いるかが貰ったヤツね。あいつ、すごい人気だよね。性別関係ないしさ。」

最後の台詞にぴくっと反応する。

「女子からのは、一応慣れてたみたいだね。男子からのは、慌てようが可笑しくてさ。」

彼の首が、ゆっくりと玉子に向けられると・・・。

ゾクッゾクッ!言いようの無い寒気が彼女を襲った。

「なんだよ。」

「春海、落ち着け。」

玉子の言葉を聞きながら、ヤバイか!と思ったものの、さすがに女子に対して、アレは無いだろうと・・・思った俺が甘かった。

一歩、二歩と進んだ春海の肩を掴む。

玉子は後ずさりながら、言葉を続ける。

「い、いるかもね。男子からのは断ってたんだよ。うん。」

春海が止めたのか、巧巳が抑えたのか、彼の足が止まったのは確かだ・・・しかし。

「でもさ、無理やり机に置いていったり、受取らされたり、大変みたいだよ。男って強引だよね。」

つづく言葉が原動力のように、半分巧巳を引きずるようにして、春海は一歩進んだ。

文化祭の後の、”いるかちゃん”ブームを思い出す。

プロデュースしたのは、た・ま・こ・お前だろ。

お姫ないるかちゃん(mameリク~)


いるかは可愛い。そんな事は、俺だけが知っていればいいんだ。

・・・長めの前髪の下の目は、見えないというか、恐ろしくて見れない(ねぇ)!と2人は思った。

その時である。

「開けて~~~。誰か中にいるんでしょ~。」

聞きなれた声がする。

彼の行動は早く、そのはずみで、巧巳が前のめりになる。

そんなことはお構い無しと、ドアの前に立った春海は、さっと生徒会室の扉を開けた。

・・・段ボール箱が2段。想像していた顔は無い。

「いるか?」

「春海?良かった~。」

ダンボールが喋っているようだと一瞬思ったが、ヒョイッと、彼女に比べると大きな2個の壁を取り除く。

「ありがとう。」

笑顔のいるかに会えた・・・と、何故か当たり前な事を喜んでしまう。

倉鹿でも、プレゼントの山の前に座っていた彼女だ。今現在の活躍を考えれば、当然といえよう。

「大変だったみたいだね。こりゃ、明日はどうなるだろ~ね~。」

玉子が呆れたように言った。

中等部時代、玉子は結構同性に人気があり・・・別に嬉しい事でもないのだが。

まぁ、お菓子は好きだし、皆で食べれば良い事で、それなりに楽しんでいたのだ。

そして周囲には、彼女以上に同性から、バレンタインチョコを貰う者はいなかった。

上には上がいるもんだ・・・と思いながら春海を見ると・・・すでに箱を下ろした彼は、さっきの倍増しのアレを撒き散らしている。

何だ?玉子は恐いもの見たさで近づいてみる。

ダンボールの中には、女子で無い(名前のカードの)代物がチラホラ見てとれ、比例するように例の(アレ)が発生している。

これ以上近づくのはやばいなと、野性の勘が告げ、自然と腰が引けた。

それでもいるかは、何も気付いていないようで、平気な顔で、春海の横に立ち、一緒にダンボール箱を覗いている。

あいたたたた・・・巧巳と玉子が顔を見合わせ、これってまずいんじゃないの(か)?と、目と目で会話した。

いるかの鈍感さは周知の事実で、それはどうしようもないとして、婚約者がバレンタインのプレゼントを貰って、平然としていられる訳が無いだろう。

まして春海ならば・・・。

そんな中問題の彼女は、ダンボール箱を覗きつつ、ため息を一つ吐いて言った。

「困っちゃうなぁ。どうしようコレ。」

花束の一つを持ち上げる。

「受取る理由も無いって、ちゃんと断ったんだよ。」

ヨシ!!

「食べられないしさ。」

基準はそこか!!

「大体さ。バレンタインは女の子がチョ、チョ、チョコレートをあげる日でしょう。意味わかんないよ。」

解れよ!!すげぇ、気づいて無い(ねぇ)!!

突然、唯黙っていた春海が、顔を上げて言った。

「俺が返しておいてやろうか。」

何気なく、明るく軽く言ったその顔は、朗らか・・・無駄に爽やか?だ。

「いいの?」

いるかは笑顔で返す。その顔には一点の曇りも無い。

春海、何を企んでんの(だ)!!と、玉子と巧巳は声にならない叫びをあげた。

「春海、ホントありがたいけどさ・・・名前は書いてあるけどね。あたし、顔なんて覚えてないよ。」

いるかが心配顔で言うと。

「別にいいだろ。」

春海は笑顔で答える。

2人は・・・お前はな!!と無言で見たが、だ・ま・れ!と、彼は目で殺す。

「何年なのかも、もちろんクラスもわかんないし。」

表情を曇らせいるかが言うと、春海は、いるかが持つ花束に差されたカードを一瞥する。

「山南敬介・・・2年3組だな。」

ついで視線を落とし、別の花束のカードを見る。

「あっちは・・・伊庭八郎、1年5組。」

今度は体を屈ませ、箱を一つ持ち上げた。

「これは、3年1組、学年トップの竹中半兵衛。」

まだまだ続くであろうそれに、3人は心底驚いた。

「春海、生徒の名前とクラスを全部覚えてるの?」

驚嘆の声をいるかがあげ。

「そんな訳無いだろう。まぁ、ちょっと、気になっててね。」

気になって・・・ああ、成る程・・・と、2人は納得する。

「ふーん、そう。とにかくコレ返せるんだよね。よかったぁ。」

春海のそのセリフは、彼女にとっては別段重要では無いらしい。相手がもし女子ならば、気になるだろうが・・・。

手間を取らせるのは、本当に申し訳ないと思っているが、顔も覚えていない相手なのだから、どうしようも出来ない。

それよりもいるかは、意味不明のプレゼントの数々を、返却できる事を喜んだ。

「春海ありがとう。それじゃ、お願いするね。」

「ああ、任せとけ。返しとくよ。きっちりとな・・・。」

春海は、プレゼントを再び一瞥した。

そんな彼を見ながら・・・確かにきっちり返すヤツだよな。お前は!・・・と、巧巳がニヤッと笑う。

一方玉子は、言葉の要らない2人の会話を、静かに見守るのだった。




当面の問題は片付いた。

いるかは、意味不明のプレゼントを見ながら思う。

あたしは今、それどころじゃないんだから!

いるかにとって重要なのは、春海へのチョコレートに尽きるのだ。

今年こそは、

「手づくりの神話の崩壊ならぬ、復活!を目指す。」と目標を立てて、この一週間、頑張ってきた。

昨日の夜、母葵からは、

「もう、チョコレートは食べないわよ。」と言われたばかりだが、それでも何とか、何となく、何だろう・・・形になってきたのだ。

もう1回作って、良いものを選んで・・・。

せめて、手づくりチョコレート用の箱、4つのスペースが全部埋まるように!

今年は、箱を包む紙も買った・・・春海には緑が似合うと思って選んでみた。

りぼんなんて、初めて買ったのだ。

色も色々、太さも色々、模様があったり、頭がくらくらする程並んだ中で、シフォンの薄い黄緑色を手に取って。

家に帰ったら、今日はチョコレート作りと、ラッピングもしなきゃ・・・。

いるかが百面相をしながら考えている横で、春海は、チョコ?の仕分け作業を進めている。

そして、1つ1つ確認していた彼が立ち上がり、ダンボール箱の一つを、入り口横に移動した。

今日の分の作業は終了したらしい。

その間も、いるかは会議用の机に紙を一枚置いて、うんうん唸っている。

それを見物する男子生徒が1人。肘を突き呆れ顔だ。

アホらしと女子生徒が1人。貰ったばかりのチョコを開け、口に放り込む。

春海は、入り口前から戻るや「いるか」と声をかけた。

彼女は顔を上げ「何?」と答える。

「あっちの箱が返却分だから、もし、男に何か貰ったら、あの箱に突っ込んどけ。」

「うん。」

彼は、剣呑な空気を漂わせて言った。・・・いるかが気付く程だ。

「どうしたの?なんかあった?腐ってたとか?」

「腐っ・・別に。」

そう言う春海の眉間には、深い皺が刻まれている。

「ごめんね。えっと春海、私から返そうか?クラスを教えて貰えれば、自分で行くよ。」

軽い気持ちで頼んだのが失敗だった。

何が彼を、こんなに怒らせたのだろう。いったい何が入っているの?

チラッと、ドア横の箱に視線を送ったいるかに春海は気付き、しまった!と思う。

中身は知らせたくない。

彼女はその意味に、多分、気付かないだろうが、俺が嫌なのだ。

「そんなに気にするな。金持ちのボンボンの頭の構造に、目眩がしただけだ。」

今度は笑いながら、軽く皮肉る。

「プッ・・・春海の家も、結構お金持ちじゃん。」

軽口で返しながらも、いるかが視線の端で、例の箱を気にかけているのに、気付かぬ彼ではない。

時計に目をやり、軽い口調で言葉を続ける。

「そう言えばいるか。玉子。時間はいいのか?」

いるかに声をかけた後、春海は玉子の方を向き、片目をつぶる。

意味深なその行動に、気付かぬ彼女ではない。

「わっ!いるか。もう、こんな時間だよ。練習行かなくちゃ。」

玉子が立ち上がると、いるかも時計に目をやり叫んだ。

「あ、ホントだ。春海ごめん。練習に行くね。あのこれ・・・。」

そして、ドアに向いながら、視線をダンボールに落とす。

「そいつの事は、本当に気にしないくていいよ。俺のほうでやっとく。練習に遅れるぞ・・・今日も、一緒に帰ろう。」

殊更優しい声色で春海が言うと、いるかはニコッと頷いて玉子の後に続き、生徒会室を後にした。

バタン

ドアが閉まったと同時に、巧巳が春海に尋ねた。

「何が入ってるんだ。」

プレゼントなんてものは、箱を持ち上げ振ってみれば、大体の物・形状は察しがつく。

中には、これ見よがしにラッピングされた物もあった。

にしても、春海がこれ程不機嫌を顕わにするなんて・・・。

「お菓子に花束ならまだいいさ。香水にオーデコロン・・・アクセサリー。」

声のトーンが下がる。あえて詳細は語りたくないらしい。

自信過剰なボンボンどもめ。自分達ならいるかに相応しいとでも言いたいのか。

「確かにな・・・。まぁしかし、モテル彼女を持つのも大変だな。」

香水にコロンにアクセサリー、確かに意味深過ぎる。

「とにかく、いるかには指一本触れさせない。」

まぁ、そうだろうな・・・声も無く巧巳は同意した。

その後、2人は野球部の練習へと向ったのだった。

~バレンタイン イブ~終わり

mameさんリクのお姫ないるかちゃんの謎が解けた!って最初に思いました。
文中の名前はjuniの趣味です。
ラッピングとかりぼんの色等もjuniが妄想して話していたものです。
mameさ~ん。あ( ̄○ ̄)り( ̄◇ ̄)が( ̄△ ̄)と( ̄0 ̄)う

~去年のバレンタイン~中3

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juniで~す。
嬉しい楽しい大好きmameさん!y(^ー^)y

バレンタインなんで~ 昔の落書きとか~ 妄想とか~ メールで送りました!
こんな形で返ってくるとはΣ(゚д゚;)

バレンタイン三部作だそうです!


~去年のバレンタイン~

バレンタインを心待ちにするようになったのは、中学2年のあの日から。

想いが通じていると実感できるその日は、春海にとっては、特に特別な日になった。

心を殆ど言葉にしない恋人の気持ちを、その恥しげな態度と、いるかから渡される甘い菓子が実感させる。

去年のその日は、里見の試験最終日の翌日。

東京の私立高校の受験日は、ちょうどバレンタインの前後が大多数を占め、ご他聞にもれず里見学習院もそうで。

彼女の頑張りを知るだけに、完全に諦めていた。

春海が東京を去る日、彼らは2人だけの時間を少し楽しんだ後、東京駅のホームにいた。

楽しい時間が過ぎるのは早い。あっという間に、電車の発車の時間が近くなる。

駅のホーム、電車に乗り込もうと、ゆっくりといるかに背を向けた時、トンっと軽い力が彼の背中にかかった。


いるかちゃんヨロシク 二次 イラスト 春海

何だろう?と振り向いた。

彼女は大きな目を見開いて、ぎゅっと何かを握っている。

「今年も、チョコ作りたかったんだけど・・・ごめんね。電車の中で食べて。」

その両手には、りぼんが結ばれた箱が握られていて、その手が伸ばされ・・・可愛らしいピンクの箱が手渡された。

いるかちゃんヨロシク 二次 イラスト 春海


あまりな日程に、期待をしてはいけないと言い聞かせていた分、喜びは大きく。

春海は衆目の中、いるかを抱きしめてしまった。

お約束のように、眼前の鳩尾に一発、顎に一発貰ったが、それさえ楽しい思い出。

帰りの列車の中で包みを開くと、甘い匂いが思い出をくすぐった。

初めての、甘く柔らかな時間。触れた唇の、暖かな感触。

甘い甘い、長く短い記憶。

自然と緩む口角、熱を帯びる頬。

人に見せられたものじゃないな・・・と苦笑いしながら、その中の一つを口に入れた。

もっと鮮明になれと。

それが、2度目のバレンタインの思い出。

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落書きメールと妄想電話がmameさんによって実を結びました。
嬉しい\(*T▽T*)/でも…落書きなのでイラストが荒すぎる(TmT)
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