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~さくら~ ③

激甘~(///∇//) 楽すぃです~ juni

なかなかブログの整理の時間が取れません!
もう少し先になりそうです。ごめんなさい。


~さくら~ ③

部屋を辞した二人は、再び中庭に向かっていた。

もう一度、桜を眺めようという事になったのだ。

やっと落ち着いてきた2人であったが、やっぱり気恥ずかしさが拭えず、いつものように会話が弾まない。

特に春海は落ち込んでいた。

彼の計画では・・・。

いるかが大の苦手の今日のような席では、俺がリードしないとな・・・と考えていた。

のにだ!!!いるかの艶やかな着物姿に、一発でやられて醜態を晒してしまった。

そして今、これからもっと綺麗になるであろう彼女に、頭を痛めている。

今年のバレンタイン、今思い出しても腹が立つ。これから、この先はどれ程だろう。

寄り添い、いるかの歩幅にあわせて歩きながら、ちらと見ると、見上げていたらしい彼女と目が合った。

「春海、大丈夫?さっき変だったよ。風邪でもひいた?」

いるかの頭には、今日の春海の醜態の原因が、彼女の姿にあるとは思えないらしい。

大人たちの言葉など、まったく本気にしてない。

お世辞か社交辞令とでも思っている。

「大丈夫だよ。ちょっと緊張したんだろう。」

「春海でも、緊張することあるんだね~。」

確かに・・・普段あまり?殆ど緊張することの無い彼を、唯の男にしてしまう少女は「ふ~ん。」と言いながら、ゆっくりと歩を進める。

「俺も、普通の男だからな。」

・・・クールなおまえらしからぬ言動・・・最近ひんぱんにさ、気がついてたか?・・・倉鹿の仲間の言葉が、ふと思い出された。

「普通の男?(男???)」

分かったような、分からないような・・・解からん!!!

いるかは口を、への字に曲げた。

その姿はいつもの彼女で、春海はやっと、人心地ついたような気さえする。

二人の間に、普段の会話がもどり始めた頃、中庭への入り口についた。

大きな一枚ガラスの両開きのドアからは、差し込む光と、桃色の満開の桜が見える。

ビル風だろうか?桜の花びらが舞い上がり、二人の間を抜け、大理石の床を彩った。

「綺麗だねぇ・・・。」

いるかは桜を見ながら、目を細めて言った。

「綺麗だな。」

春海は、いるかを見ながら言った。

そしてゆっくりと、ガラスのドアに向かって、再び歩み始めた。




緩やかな時が流れる。

飛び石を踏み、日本庭園を巡る。

随所に盛り込まれた春の花が2人の目を楽しませ、奥へと歩いて行くうちに、一段と立派な桜の木が望めた。

いつの間にか2人は、人の多いU字型の中庭から、少し外れた場所に来ていたらしい。

ホテル設立当時から植えられているそれは、ひっそりとした所にありながら、日当たりが良く暖かい場所にある為か、蕾を開かせて二人を迎えていた。

ホテル内でもっとも桜が美しい場所として、知る人ぞ知る場所である。

「わぁ~~凄いねぇ。春海、あたしね。桜の花、大好きなんだぁ。」

いるかは木の下に、トトッと小走りすると、頭上を見上げながら感嘆の声を上げる。

ゆっくりと追い、そっと後ろに立った春海は、桜舞い散る中、彼女と出会った日を思い出した。

春の嵐のごときあいつ・・・いるかは今、鮮やかに咲き誇り俺のそばに居る。

「俺も好きだよ。」と言いながら、春海はポケットに手をやった。

「そういえば、春海と最初に会った時も、桜の花びらが舞ってたねぇ。」

懐かしそうに言うと、春海も「そうだな。俺も丁度思い出してた。」と答える。

いるかが振り返ると、自然、春海と目があった。

ふっ・・・と2人は笑いあう。

微笑み合いながら、彼は手に持った小箱から、細い鎖を取り出した。

「いるか。動かないで・・・。」

春海はそう言いながら、いるかの首に優しく腕を回した。

抱きしめられる?・・・いるかはほんの少し体を硬くしたが、春海はそのままゆっくりと腕をもとに戻した。

カチ・・・微かな金属音が、彼女の胸で響く。

「え?何?」

いるかは、自身の胸元に眼をやる。

彼女の瞳に映る、光る五枚の花びら・・・桜色の。

「桜?のペンダント?」

「ああ、ホワイトデーのプレゼント。1日遅れだけどな。」

片目をつぶり、軽く言った。

いるかの胸に、優しい桜色の光・・・やっぱり似合うな。

一目見て、コレだ!と感じた。

"愛とやさしさの象徴"の石と聞いて、ぴったりだと思った。

「でも・・・あの。こんな、こんな高価なもの貰えないよ。」

いるかは慌てて、首の後ろに手を伸ばす。

着物の袖がふわりと揺れ、白い腕が春海の目を射す。

彼は、柔らかく、いるかの手を押さえ言った。

「いるかに、受け取って欲しいんだ。」

微笑みながら言葉を続ける。

「・・・でも、あたし・・・」

いるかは躊躇する。

ホワイトデーのプレゼントって、チョコのお返し?こんな高価な物を貰うなんて・・・。

「俺の気持ちを、いるかの胸に置いて欲しい。」

「春海の気持ち?」

春海の気持ち・・・いつもいつも貰ってるよ。

「もう、いっぱい、貰ってるよ。」

いるかの返事の中に、彼女の優しさが見える。

「なんて言えばいいかな・・・。ホワイトデーのお返しって言うのは、かこつけただけだよ。」

笑いながら白状する。

「本当は、俺がプロポーズしたかったんだぞ!これくらい受け取って貰わないとな。」

プロポーズという単語にいるかの頬が反応し、その顔を楽しそうに見ながら・・・春海はそっといるかの左手を取った。

「正式なプロポーズの時は、ここに指輪を送るから。」

そして、優しく薬指にキスをする。

「それまでは、そのペンダントを、いるかの胸に置いて欲しいんだ。」

いるかは、余りの気恥ずかしさに固まりながらも、小さく「はい。」と頷いた。

そして桜舞い散る中、2人だけの、誓いのキスを交わしたのだった。



そろそろ戻ろうかと、2人手を繋いでホテルのロビーへと向う。

顔を上げることが出来ないいるかは、俯いたまま春海に手を引かれていた。

その目に、きらりと胸の桜が飛び込む。

すると又、恥しさが込上げ、頬が熱を帯びる。

どうしよう・・・みんな気付かなきゃいいけど・・・。

これの事、聞かれたらどうしよう。

今までアクセサリーなどつけた事の無いいるかである。

初めて春海から貰ったプレゼント。もちろん嬉しい。

気にする必要も無いのだが、どうしても気になってしまうのだ。

しかし・・・このままでは逆に不味かろう(気付かれるかも・・・)と、やっと顔を上げ春海を見たとたん、いるかは真っ赤になった。

そして口ごもりながら立ち止まり、繋いでいた手を離し、何事かゴソゴソと探しだした。

「いるかどうした?」

春海が尋ね顔を近づけると、いるかは今迄に無く、ボッと顔から火を噴いたように赤くなった。

可愛い・・・。

楽しんでいる様相の彼に、いるかは手を突っ張って、ハンカチを差し出す。

「本当にどうしたんだ?」

流石に怪訝な表情で春海が尋ねると

「くち・・・口紅が、ピンクの、アノ・・・」

今度は春海が真っ赤になった。

「あ、ありがとう。」

2人が初めてルージュのキスを知った、記念すべき春の日の事である。

その一週間後、2人の婚約が正式に相成ったのであった。

~さくら~ 終わり?・・・つづくかも

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~さくら~ ②

こんばんは~juniです。

柱| ̄m ̄) ウププ!そんなに春海は驚いたんだねぇ。
良かった良かった?


~さくら~ ②

お見合いの席の向こうは、一面ガラス張りとなっていて、見事な日本庭園が眺められた。

和室の中には、非毛氈に瀟洒なテーブルと椅子が持ち込まれ、明治の日本のような雰囲気をかもし出している。

若い2人にあわせ、長時間の正座はきつかろうと、お世話人である外務大臣が、心を砕いてくれた結果だ。

そこへ、山本家、如月家面々が通される。

外務大臣が立たれて迎えると、席を案内される。

正面に世話人である外務大臣ご夫妻、その両側に、両家が合い対面する形で腰を下ろした。

両家が着座した所を確認して、

「本日は、昨日までの雨も上がって、本当に良いお日柄になりましたな。」

世話人である外務大臣が、柔らかな笑顔で言った。

「大安のこの良き日に、前途有望なお2人のご縁のお手伝いが出来て、本当に嬉しい限りです。」

その態度には、高飛車な空気は微塵も無く、今日の見合いの世話人を、心から喜んでいるのが見て取れた。

そんな中、何処までも緊張の面持ちのいるかと、常に無く、どこか上の空の春海、2人のお見合いは始まったのだった。



正式なお見合いともなれば、付添い人と親での出席だろうが、今回は未成年ということで、双方の親・家族(親族ではない・・・)が付添い人を兼任することとなった・・・はずであった。

かくして、山本家からは父と息子。

弟徹は「僕が出て行く席じゃないしね。」と、自ら出席を辞退した。

父は「一緒で構わないんだぞ。大臣にもあちらにも、ご了承を得ているから。」と言い、春海も異存は無かったのだ。

が、逆に徹の一言で、彼の辞退を有り難く受け入れた。

「僕がいたら、いるかちゃんが落ち着かないかもしれないよ。はしゃいじゃうかも・・・って思って。」

そんな事は絶対無い!とは言えないのが、「如月いるか」の「如月いるか」たる所以。

そして、如月家からは祖父と父と娘。

祖父上野介は、わざわざ倉鹿から上京すると、付添い人として絶対に見合いの席に出る!と言い張る。

「父さん、僕と葵といるかで出席しますから。」と鉄之介が言ったが、頑として聞き入れない。

「春海といるかを引き合わせた、わしに任せて置けばいいんじゃ~。お主こそ不要じゃ!」とまで言う始末である。

鉄之介は「そんなぁ~。」と半泣きで妻を見たが、葵は端から、上野介は同席するだろうと思っていたらしく。

「鉄之介さん、お義父様がご出席して下さるなんて有り難いことじゃない。お義父様と、あなたといるかで出席なさったら。」と、ケロッとして言った。

しかし当日になって、朝から緊張しっぱなしのいるかの状態を見て、ホテルまではと同行し、別室での待機と相成った。




外務大臣が、まずは主役の2人のご紹介をと、山本家の方を見ながらいるかを紹介をする。

「こちらは如月いるかさんです。」

いるかは両親に言い含められていた通り「いるかです。宜しくお願います。」と挨拶をする。

次に如月家の方を見て、春海を紹介する。

「こちらは山本春海君です。」

「・・・・。」

当然かえって来るであろう返事が来ない。

「春海君?」外務大臣がもう一度呼ぶが、上の空の彼の耳には入っていないらしい。

父は慌てて「春海!」と呼びながら、息子の肘を己が肘で小突いた。

はっ!と、彼は今しがた目覚めたように、「あ!申し訳ありません。山本春海です。宜しくお願いします。」と返事をした。

同時に、その場に居た大人から(春海父を除いて)どっと笑いがあがった。

「さしもの山本春海君も、今日のいるかさんの姿には驚いているようですなぁ。私もそうなのですよ。」

外務大臣の口ぶりは、2人の事をそれなりに知っている様子である。

それもそのはず、もともと大臣は無類の高校野球好きで、特に地元東京代表2校に関しては、毎年熱心に応援している。

去年の夏は、母校の里見学習院が代表に決まったことで、テレビに噛付いて尚更熱心に応援していた。

高校一年生ながら、控えの投手がまったくいない中で、夏の大会をたった一人で投げる山本春海投手の姿には、高校野球ファンでなくとも感動を呼んだ。

大臣にいたっては、母校里見学習院の山本春海投手の激投ぶりに、いたくいたく感動したのだ。

その上、かの駅伝大会のテレビ中継も見ていた・・・あの山本春海投手と東条拓己選手が助っ人で出場するとあっては、見られずにはおられないという訳である。

母校里見のアンカーは、信じられないことに女の子で、ふざけるのもいい加減にしろ!と憤慨して見ていれば、あの、いるかの男顔負けのラストスパートである。

その走りは鮮烈な記憶を万人に残し、最後の一幕まで、笑いを禁じえない青春の一幕として、大臣の記憶に深く残った。

その後、山本代議士から話があった時、代議士の説明と釣書を見て、すぐにかの投手が彼の息子とわかった。

ついで、お相手の釣書を見て、かのアンカーの少女だろうと思いつつも、その後、その場に居た山本代議士本人からも、その時の話を詳しく聞いていたものだから・・・。

外務大臣は、お世話人を喜んで引き受けただけでなく、常に無く心を砕いて、今日の良き日を準備したというわけだ。

「いるかさん、先頃の女子サッカー全国大会の決勝戦、テレビで見せて頂きましたよ。素晴らしい活躍でしたなぁ。」

大柄な選手達の中、ひと際小柄で華奢な彼女が、ゴリラのようなキーパーの顔面にシュートを打ち込み、相手選手の体ごとゴールポストに叩き込んだ。

「愉快、爽快、豪快なシュートでした。しかし、今日のご様子は・・・・本当にお美しいの一言ですよ。」

はっはっはっはっはっと笑いながら、外務大臣は至極ご満悦である。

いるかは恥しくて、真っ赤になってしまった。

そして、春海は、相変わらず、いるかばかりを見ている・・・様子に、とうとう祖父が口を開いた。

「申し訳ない。この爺も一言宜しいかな。」

「いるかさんのお祖父様、たしか倉鹿修学院の学院長をされておられるとか・・・どうぞどうぞ。遠慮なさらず。」

外務大臣は、快く言葉を譲った。

「春海君とお父上は、共に私の教え子でしてなぁ。そして、春海君と孫のいるかは、倉鹿修学院の中等部で出会っておるのです。」

「そうなんですか。」

大臣は、それは初めて聞きますといった体である。

ついで上野介は、春海を見ながら呆れたように言った。

「こりゃ春海、しっかりせんか!お主の気持ちもよう分かるがの。」

上野介はいるかに目をやり、確かに春海が驚くのも無理はないのう・・・と思う、思うが。

春海が、学院長の言葉に反応し赤くなる。

「さあすが、ワシの孫じゃ!と言いたい所だが・・・大変お忙しいお方が、わざわざお時間を裂いて下さっておるのじゃぞ。」

「申し訳ありません。」

素直に恥じ入る程、春海は、いるかの着物姿に見惚れていたのだ。

いつの間に、彼女はこんなに美しくなっていたのだろう。

一番近くにいたはずなのに・・・。

「いやいや、私の事は気にされないで下さい。あの落ち着き払った山本投手の、この様な姿が見れて、実は楽しんでおります。」

カンラカンラと笑いながら大臣が言うと、

「不肖の息子で、申し訳ございません。」と、父が頭を下げた。

「いやいや不肖だなどど。里見学習院の野球部のエース、その上首席と聞き及んでおりますよ。素晴らしい息子さんではないですか。」

「本当に、我が家のお転婆娘には、春海君は優秀すぎて勿体無いです。」

鉄之介も相槌を打った。

その後大臣は、さて・・・と言いながら、2人の顔をかわるがわる見る。

俯き加減のいるか、落ち着かない様子の春海。

「そうですなぁ。若いお2人にはこの席は堅苦しいでしょう。どうでしょう。ホテルの中を散策されては?」

時間的には少々早いが、世話人としての決まり文句を発する。

彼としては、この2人を今さら紹介する必要も無いだろう・・・そんなとこだろうか?

大臣の発言に、各々の父が声をかけた。

「春海、甘えさせて貰いなさい。」

「いるか、春海君とちょっと散歩でもしておいで。」

その言葉に、2人はほっと胸をなでおろす。

そして「失礼します。」といい置き、その場を辞したのだった。

2人が席を外すとすぐに、大人だけの会話が始まった。

「いやぁ、如月君。今日のいるかさんには本当に驚きましたよ。」

大臣がまず驚きを隠さず言うと、すぐさま山本代議士も同意する。

「息子が惚けるのもしょうがないと思います。私も驚いていたのですよ。」

「いやぁ。そんな、まだまだ子供です。」

鉄之助は、思いもよらぬいるかへの賛辞に、親馬鹿を全開にし、その様を、上野介は呆れて見ていた。

「たしかに、今日のいるかには驚きましたが・・・わしとしては、いつもの孫が好ましいですなあ。女の子の成長は早いですからのう。」

春の陽気に、桜が一斉に開花するように、少女は突如姿を変える。

「わたくしも・・・。」

それまで黙っていた大臣の細君が、静かに口を開いた。

「主人と一緒に、先だってのサッカーの試合を応援させて頂いておりましたから、今日は、元気な女の子を想像しておりましたの。」

そう言って、いるかが退席した場所に目を移す。

「大輪の華のようでしたわ。誰のために咲いたのでしょうね。」

ついで大臣が、春海がいた席に目をやり、

「ご子息は、きっと苦労しますよ。華の周りにはどうしてもね。」

からかうように言うと。

「それも本人が選んだことです。」父は笑って答えたのだった。

~さくら~ ③へ続く

~さくら~ ①

こんばんは、mameです。

最近、頻繁に更新している最大の理由。
桜が散る前に、この話の第一話をアップしたかったのです。

一度書き上げたはずでしたが、相棒juniのイラストを見てかなり加筆しました。
宜しければお付合い下さいませ。



~さくら~ ①

2人のお見合いは、予定よりかなり遅れて、3月の大安の日曜日となった。

お世話人の外務大臣は、もちろん大変忙しい方である。

予定がなかなか合わないのは当たり前だが、思いの他縁起を大事にする方で、先送りにしても大安の日が選ばれたのだ。

若い2人の大切な日に、縁起の悪い日はいけないと心を砕かれらしく、2人の縁を、大変気にされているのは明らかだった。



ホテルの中庭には、早咲きの桜、玉縄桜だろうか?今が盛りと咲き誇っている。

周囲には、染井吉野が準備万端と、もも色の蕾と三分程の花を見せていた。

かなり早めに到着したいるかは、緊張をほぐすためと中庭に出て、満開の桜を眺めていた。

「綺麗・・・。」

小さく呟き、ほうっと息を吐く。

今日は大切な日だし、失敗しないようにしなくちゃ・・・。

いるかは今朝からの、大騒ぎ?を思い出す。

早朝から美容室に行き、今来ている着物の着付けをした。

苦しい、痛いと叫んでも、葵は一言「我慢なさい!」と言って、着付けの先生と共に、締め上げ、引っ張る。

その後は、これでもかと丁寧に化粧を施された。

いったい何処までやれば、母の気は済むのか。

もういいよ~~~と、泣言を言ういるかにもう一言。

「綺麗な姿を見せたいでしょ。」

そう言われれば、いるかだって恋する少女なのだ。

頑張った。堪えた。耐えた。

その結果、息苦しい和服に、重い瞼と苦しい皮膚、唇の何とも言えない感触。

やっと終わって姿見の前に立つ。

馬子にも衣装ってこの事だよね。あたしじゃないみたい・・・と、鏡の向こうの自分に問いかけてしまう自分がいて。

「春海、笑わないかなぁ。」

不安で堪らない。

出来ることなら、今すぐにでもいつもの姿に戻りたい・・・などど考えながら、いるかは1人、ホテルの中庭に佇んでいた。



愛しい少女を探して、ホテル内を急ぎ足で歩く青年(実際は少年なのだが・・・)。

時々スーツのポケットに手をやりながら、落ち着けと言い聞かせながら歩いている。

春海がかなり早めに到着したのは、お見合いの前に、いるかとの時間を取るためだ。

つい先程、玄関ホールで彼女の身内に会い、中庭の方へ行った事は教えて貰った。

「ちょっといるかと話があるので・・・。」と、急ぎその場を離れようとした彼へ、よく知る恩師と、ご両親が意味深な言葉を送った。

「春海、ありゃお主でも驚くぞ。わしゃあ、いつものいるかの方が良いがなぁ。」

「今日は特別な日ですからねぇ。」

「春海君、きっと惚れ直すわよ~~~。そうそう、今日は、桜色のお着物だから。」

葵のくすくす笑いに見送られて、いるかを追う。

大理石のロビーを抜け、白を基調としたフロント前を通り過ぎた時、中庭から戻って来ているらしい一団とすれ違った。

彼らの話し声が、途切れながらも耳に流れ込む。

「桃色のお着物・・・綺麗な・・・。少女のような大人のような・・・不思議な色香・・・。」

桃色の着物・・いるかのこと?まさかな・・・・。

可愛いと評される事は格段に増えたが、幼さの抜けない彼女への言葉とは思えず・・・それこそ、色香なんて単語は想像すら出来ない。

中庭へ入ると、寒さの残るこの時期に咲き誇る桜に驚きながら、いるかの姿を探す。

すぐに、桜色の着物が目に飛び込んできた。

彼女の愛らしい姿を、笑顔を想像しながら。

「いるか!」

春海は、いつものように声をかけた。




いるかがなれない着物に辟易していると、聞きなれた声が彼女を呼んだ。

その声に自然に微笑つつ、息苦しさに漏らす吐息と、やや伏せ加減の目で、いるかはゆっくりと振り返る。


いるかちゃんヨロシク 春海 二次 画像 イラスト



思考が止まり、驚きで声が出ない。

イッシュンデ、アタマガ、マッシロニナル。

時間さえ、止まってしまったようだ。

一枚の絵のような・・・こんないるかは知らない。

知らな・・・かった。

ピクリとも動かない、実際は動けない春海に、いるかは笑顔で話しかける。

「春海。」

しかし、返事は返って来ない。

「春海?どうしたの?」

見上げて尋ねても、春海の口から言葉は発せられず、どう見ても、いつもと違う彼の様子に、もちろんいるかは不安になり。

「あたし変?こんな大人っぽいの、やっぱり似合わない?・・・どうしよう。」

不安が的中したと、オロオロする彼女を見て、やっと春海は。

「変なんかじゃないよ・・・あまりに綺麗で・・・驚いただけだ。」

春海は右手で、どこまでも赤く染まった顔を出来るだけ隠しながら、やっとそれだけ言った。

そのセリフにいるかは言葉を無くし、俯いて耳まで赤くなった。

同時に、桜色に染まったうなじが、春海の視界に入る。

2人は、葵が呼びに来るまで、言葉も無く佇んでいたのだった。

~さくら~ ②へ続く

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juni+mame

Author:juni+mame
「いるかちゃんヨロシク」の二次創作サイトです。
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