fc2ブログ

「いるかちゃんヨロシク」大好き!のmame+juniが運営しています。

~夏も終わり~

こんにちはjuniです。

今日はお休みです。
外はとても暑いのでついつい家に篭ってしまいます。

体調の管理には十分お気を付け下さい。

今回は~夏の終わり~の続編だそうです。
読み切り~!


~夏も終わり~夏の終わりのおまけ

「今度はいつだ?」

夏も終わり、いるかと春海が東京へと戻る日となった。

長い夏休みの中での短い帰還は、宝物の時を2人と友に残しながらも、何度でも名残惜しい気持ちを提供する。

「今年の冬は帰れない、だろう?」

冬の選手権、女子の前に男子の試合があるしな・・・含みのある春海の言葉に。

「頑張ってはみるさ。でもまだ2年だしな。」

控えめに、進が答える。

「銀子とお杏は来る気満々だよ。あたしだってもちろん。」

横に立っていたいるかが、笑いながら言った。

「あんまりプレッシャーかけるなよ。」

言葉を返す彼に、お杏が言う。

「何とかなるんじゃない。結構良いチームになってるしね。」

「まぁね。」

電車の発車まで後30分。

当分は、この顔ぶれが揃うことも無い。

次に会えるのはいつだろう・・・誰しもがそう思ってしまう。

そんな空気を払うように、湊が口を開いた。

「いるかちゃん、何か食べ物買っといたほうが良いんじゃない?道中長いしね。」

「そうだね。」

一にも二も無くいるかも同意し、博美も、

「私も行こうかな。銀子さん、杏子さんはどうする?」

「あたし等も行くよ。ね!お杏。」

「ああ。」

センチな空気を吹き飛ばすように、明るい声でおしゃべりをしながら、女子全員が売店へと向かう。

結局、駅のホームは男だけになった。

しばしの沈黙。

「・・・・・・・・。」

きっかけを探るような視線が、進と一馬の間で交わされる。

・・・なぜかいやな予感がする・・・そんな変化を察知しない春海ではない。

「俺も、何か飲み物でも・・・。」

その場を離れようとする彼を、逃がすまいと口火を開いたのは、進だった。

「春海、お前さ。いるかに合わせるって・・・何かしたのか?」

あまりのストレートな物言いに、春海はグッと歯噛みし頬を赤くした。

「そうそう、俺も気になってな。殴られ噛みつかれはお手の物だろ。今更、合わせるって。」

一馬が突っ込む。

話を聞いた時は、別段気にもしなかったが、考えてみれば、それこそ今更だ。

手が早いのは彼の十八番だし、生傷の絶えない交際こそ、いるかと春海だろう。

「・・・怖がられた。」

春海がボソッと呟くと、余りの小さな声に進が聞き返した。

「何だって?」

「いるかに怖がられたんだよ!」

少々開き直りの含まれた強い声。

「・・・なるほどな。」

春海が、いるかに惚れている理由の一つ。

何があっても臆さない彼女・・・完璧な彼に対してさえ。

進が、納得したり!と頷くと、一馬は。

「自業自得じゃ・・・。」と言い出すそばから春海に睨まれ

「ツ、ツライナ・・・。」とムンク顔で言葉を結んだ。

兵衛は、彼らの会話でやっと解ったという顔をすると、春海を見た。

「春海、婦女子は守るもんだぞ。」

真剣な表情のそれには、さすがの彼も「そうだな。」と言う事しか出来ず、それを他の2人は苦笑いで見守る。

ある意味、しょうがない展開というか・・・。

・・・確かに、同じ男としては、少々同情もする。

しかし、別な心配もしていて・・・あの春海のことだ。婚約までしたんだ。どこまでも突っ走るんじゃないか?

いるかは、見たままの幼さだ。

まかり間違って傷つければ、いるかを一番大切にしている彼が・・・。

春海はもちろん、いるかも彼らにとっては大事な友人だ。

だが結局のところ、春海を突っ走らせるのも、止めるのも、”如月いるか”という、たった一人の少女なのだ。

「さてと、そろそろお嬢様方が戻る頃だ。この話は終わろう。」

言いだした手前、収拾を付ける進と彼らの耳に、くだんのいるかの声が届く。

「春海~!今年の冬はね~。皆が東京に来るかもって~。」

両手にビニール袋を持って、叫びながら駆けてくる彼女に、4人は目を細めた。

「いるか!転ぶなよ。」

何も無いところでなぜかよく転ぶ、運動神経抜群少女に、春海が声をかけながら駆け寄る。

「わきゃ!」

お約束のようにいるかが躓くと

「危な!」

春海が、いるかと荷物をキャッチした。

そんな2人を見て

「大丈夫だな。」

「ああ。」

「うむ。」

「まぁ、怖がられるくらいが丁度いいのかもな。」

進・一馬・兵衛の3人は、笑顔で頷くのだった。

~夏も終わり~


mameさんの新作が続けて読めて幸せです。
進っていいですよね~。
最初は進ファンだったんです。(原作4巻の春海の涙にやられました。)


スポンサーサイト



~夏の終わり~④最終話

こんにちは?~juniです。

今日は仕事が休み!だったのでPCの更新に集中しました。
ようやく最低限は使えるようになりました。

う~ん短い寿命だったなぁ。
ノートからデスクに戻りました。

挿絵を入れるのを忘れてました~( ̄□ ̄;)!!
ごめんなさいm(_ _;)m
追加します7/6




~夏の終わり~④最終話

「あいつらいい感じじゃないか。」

どうしても目立つ2人を、遠目から眺める一団の1人が言った。

男女合わせて7人の彼らも、十分に人目を集める存在であるのだが。

しかし、今回に限っては春海といるかがいる・・・そんな状況で、楽しく見物を決め込んだ。

「こんなのを何ていうんだっけな。」

進がちょっと首を傾げつつ言うと、

「野次馬?・・・出刃亀だね。」

杏子が答えた。

「それ位いいんじゃない。折角いるかちゃんとの夏祭り楽しみにしてたのに、譲ったんだから。」

「そうよ。そうよ。」

湊と博美が少々憤慨気味に言う。別に本気で怒っている訳ではない。

待ち合せ場所に集まり、一緒に来るはずの2人の姿が無い事に一瞬落胆したが、その後の計画にほくそ笑んだ。

譲ったのは本当なのだから、コレくらいの愉しみは当然だ。

それにしても、遠目に2人を眺めながら思うこと・・・本当にあの2人、付き合ってから数年たった、婚約者同士なのか?

何?あの初々しさ。こっちが恥ずかしくなるわ!

幼馴染同士でちょくちょく連絡をとる彼らと、いるかと手紙のやり取りをしたり電話したりの彼女らの情報を総合すれば、不憫な彼の姿が見えてきた。

相手があのいるかちゃんなのよ。

しょうがないわ!と彼女らは言うが、同じ男としては・・・。

当の本人に尋ねてみれば、

「いるかに合わせる事にした。」と大人の発言をしつつ、「まぁ、仕方ないだろ・・・フゥッ。」とため息と共に本音を漏らす。

優等生のわりには、口は悪ぃし(関係ないだろ!)手も早い彼であっても、現実は厳しいのだろう。

幾度と無く見た傷跡(殴られ、張り飛ばされ、蹴っ飛ばされ、噛み付かれ・・・)を思い出す。

(春海ちょっとは協力できたか?頑張れよ。)三人は心の中でエールを送った。

静かに皆が2人を見る。

様々な壁を乗り越え、ずっと2人でいることを選んだ彼と彼女。離れても切れなかった絆。

「さてと、そろそろ声をかけるか。」一つ伸びをし、一馬が言った。

「そうだな。明日の相談もあるしな。」兵衛が相槌をうつ。

それを合図に駆け出した女性陣を、笑いながら見送る。

「い~る~か~ちゃ~ん。」

「いるか~。」

ぎょっとした春海の顔。

わぁっと笑顔で駆け寄るいるか。

それが又、何とも可笑しい。

「よっ春海、いるか。ちょっと用事があったからさ。来てみたよ。」

進が声をかける。

(何の用事だ!)と凄む視線を受け流し、皆で目配せして言った。

「お2人さん。デートは楽しかった(か)?お邪魔したかな~?」

お前ら~っと今度は照れる彼を鑑賞し、彼女を見てみれば・・・。

りんご飴を握りしめ、赤くなりつつも、ちょっと唇をとがらせ、残念そうなその表情。

いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク春海


見たことの無いそれに皆が驚き、一瞬間をおいて、春海は嬉しそうに微笑んだ。

「お邪魔とか、そんなこと無いよぉ。」

言葉と裏腹の表情に、全員が嬉しくなるのは何故だろう。

「はいはい。明日の事もあるからさ。」

「皆で相談しようと思ってな。」

進と兵衛がそういうと、堰を切ったように女性陣がしゃべり出す。

「いるかちゃん、何かしたいことある?」

「私達、楽しみにしてたんだから。」

「えっと何がいいかなぁ。皆で遊びたいなぁ。」

「どっかに行くのもいいね。」

先程の様子は何処へやら、女同士のおしゃべりが花開く。

そして、いるかの視界から外れたところで、春海が幼馴染らから「良かったな。」と軽く小突かれていた。

仲間同士だからこその、楽しい時間が始まる。

夏祭りも終わりに差し掛かって、人ごみもまばらになり、物悲しさが漂い始めていた。

その中にあって、光り輝くような笑顔が溢れる彼らがあった。

2人を中心に、あーでもないこーでもないと語り合い笑いあう。

夏の夜更け、終わりの見えない楽しい時間。

~終わり~

初めての注文パソコン(;^_^A
デカイです。圧迫感あります。
でもサクサク (o^∇^o)


~夏の終わり~③

こんばんは~juniです。

私が復調してくるとパソコンが不調になる。
昔からです。謎です。

とうとう買い換えることになりました。
嬉しいんだか悲しいんだか複雑です。



~夏の終わり~③

コロン、コロン、夜道に響く下駄の音。

街頭に近づくたび浮き上がる、細く白い首とうなじ。

浴衣を着る前にシャワーでも浴びたのだろうか。石鹸とシャンプーが香る。

それが彼女らしくて、気づかれない様にほんの少し近づく。

(暗くて良かった。)

縮めたい距離と相反し、上気する頬と表情は見えぬよう。

「ねぇ、みんなと何処で待ち合わせなの?」

「え!」

ちょっと驚いた風の春海に、逆にいるかが驚く。

別に頭を覗かれた訳でも無いのに、なぜかバツが悪い。

「あ・ああ、みんな用事があるってさ。誘ったんだけどね。」

2人で行って来いと言われた事は伏せておこう。どんな言葉が返ってきても複雑だ。

(いるかの事だ。みんなと行きたかったって言いそうだもんな。)

「そっかぁ。突然帰ってきたもんね。みんな忙しいよね。」

「そうだな。でも、明日はみんな集まるってさ。」

「うん。えへへ、楽しみ~。」

満面の笑みで見上げられ、瞬間愛しさがこみ上げる。春海は、いるかの頭をポンポンとなでた。

一瞬照らされた光で、湛えられた笑みが見えた。その笑みと、彼の手の心地よさに頬が上気する。

言葉が無くなり、また、下駄の音だけが響く。

(へへ、こういうのって良いなぁ。)

(こんな風に、ゆっくりいるかと過ごすのも、久しぶりだな。)

何となく顔を見合わせ微笑みあい、なおゆっくりと歩を進める。

東京では何かと忙しく、こんな時間はなかなか取れない。

その中にあって、一緒に行動することを努力する2人?いや、おもに1人である。

あんな手痛い数々はもう十分だ!と、彼は常々思っていて、努力を怠ることは無い。

そんな久しく、優しい時間を2人が共有していると、いつの間にか鹿々川に近づいたらしい。

人々のざわめきが、川音と共に流れてきた。

鹿々川の川原には、倉鹿夏祭りの会場が設えられ、賑やかな装いを見せている。

今日ばかりは、いるかと兵衛が整えたグランドにも出店が並んでいた。

土手の上からは、色とりどりの光が川面を照らすのが見える。

「うわぁ、綺麗だね。」

「ああ。そうだな。」

この光景を綺麗だと思ったのは、今は亡き母との夏祭り以来だ。

そういえば・・・倉鹿夏祭りに来たのは、母が亡くなって以来ではないか?

そんな事にふと気づく。でも、彼女がそばにいれば、寂しい思い出ではなく、優しい思い出として甦るのが嬉しい。

土手を下る階段で、いるかに手を差し伸べる。

何故かよくコケル、運動神経抜群の婚約者殿は、素直に手を取った。

普段、手を繋いで歩く事が殆ど無いからか、彼女は少々気恥ずかしいらしい。

手を繋いだ分縮んだ2人の距離は、彼を喜ばせた。

「結構、盛大なんだね。」

川原に並ぶ出店を見て、いるかのテンションが急上昇した。

「焼きそばに、たこ焼き、お好み焼き。わぁ、パイナップル、綿菓子もあるよ。」

もうこうなると、春海は苦笑しながら、着いて行くしかない。

「春海、何食べる?いろいろあって迷うね。」

「ああ、お前は何が良いんだ?」

人差し指を顎に当て、真剣に悩む姿は、可愛く少々幼く、高二には見えない。

そして、いつもの事だが集める視線にも気づない。

もともと、彼女のファンが多い倉鹿。今は、サッカーや駅伝での規格外の活躍で、全国的にも有名になった。

だが、一番の原因は、最近、いるかが綺麗になってきたこと。

彼の欲目だけでないのは、格段に増えた視線が物語る。

そして、今後も増えるであろうそれが疎ましい。

そんな嫉妬心は、いるかには知られたく無いな。いるかにだけは・・・。

周知の事実のそれを、彼女だけが気付かない。ある意味すごいと思う。

当の本人はと言うと、夜店を見渡しては、あっちがいいかなぁ、こっちかなぁ~と、真剣に考えている。

春海は、何とも自分の悩みがバカらしくなり、笑いが込み上げてきた。

「春海、なぁに笑ってんの?何にするか決めた?」

彼の視線には気付いたらしい。

ぱっと振り返ったいるかは、笑った彼の顔を見て、頬を膨らませた。

それが又、可愛くて可笑しくて嬉しくて。

「はは、ごめんごめん。楽しそうだなと思ってさ。おれは焼きソバにするかな。」

「焼きソバか。いいね。聞いたら食べたくなってきた。」

「・・・他にも食べるんだろ。」

「もちろん。たこ焼きと、お好み焼きはずせないし。綿菓子にクレープでしょ。」

いつもの事ながらよく食う。この体の何処に入るのだろう。

「おまえは、ほんと楽しそうだなぁ。食い物があれば。・・・祭りより、出店の食い物が主役のタイ、」

ボク!

「いて~、おまえなぁ。そんな格好して殴るかぁ。」

「春海が余計な事言うからでしょ。こんなにイロイロあるし・・・すごく、すっごく楽しみにしてたんだから。」

真剣に言い返す。

どれだけ自分が、今日の日を楽しみにしていたか。

そう、さっき手を繋いだ時だって、どんなにドキドキしていたか、春海は気付きもしない。

最近、気になる恋人同士の姿。

手を繋いで歩く姿を見た時、少し羨ましくなった。

春海と手を繋いだら、どんな感じがするのかなって

・・・思い出しただけで赤面する。

どう言えば伝わるのだろう。いま、春海と2人でいるのがどれだけ嬉しいか。

いるかは、黙って春海を見上げた。

やば、怒らせたかな・・・彼は少し慌て、最も効果的な方法でお詫びを入れた。

「はいはい、すみません。お詫びにお好きな物をおごりましょ。」

(ラッキー!)

「やったぁ。」

全身で喜ぶ。もう、先程の事は頭に無い。

「何が良いんだ。買って来るよ。」微笑んで言う。

いるかが楽しければそれでいい。

その時、彼女の一番そばに居れれば、自分は幸せなのだから。

(・・・そういえば。)

「いるか、この後は花火もあるから。」

「花火も!へぇ、楽しみだね。」

「まぁ、隅田川のに比べたら規模は小さいけどな。」

「きっと今までで一番だよ。だってさ、春海と一緒だよ。」

いるかは笑いながら、春海を見上げてそう言った。

(うっ!)

心臓を射抜かれる瞬間とは、こういう事を言うんだろう。時々、彼女はひどく俺を驚かせる。

(他の奴にはやってくれるな・・・って言ってもなぁ。無意識だから無理だろうな。)

誰よりも大胆で、誰よりも恥かしがり屋。

真直ぐで、それまでの時間など関係なく、誰の心にも入り込む。

相思相愛なのに、前途多難な恋?愛?

つい腕を組み、考えてしまう。

「どうしたの???あたし、綿菓子がいいな。それとね~。」

「まぁ、まずは綿菓子だな。」

「うん!それと焼きそば!」

はいはい・・・彼はちょっと肩をすぼめ、彼女と共に人ごみの中に歩き出した。

~夏の終わり~④最終話へつづく


~夏の終わり~②

~夏の終わり~②

その頃別室では・・・、小柄な少女が薄紅色の地に、花の散った浴衣を着て、あれやこれやと騒いでいた。

ほんのり色の入ったリップを唇にのせ、髪を結い上げた姿は何とも初々しい。

「大丈夫かなぁ。可笑しくない?」

浴衣を借りたことはある。お見合いの時は着物を着て、一応化粧もした。

でも、その時とは、やっぱり、勝手が違う。

(あの時はしょうがなく着たんだし。似合うとか似合わないとか以前の問題で。)

今日は、初めての倉鹿での夏祭り・・・。

ちゃんと着付けた浴衣姿を見せるのも、一緒にお祭りに行くのも初めてで。

春海はどう思うかなぁ。

皆に笑われたらどうしよう。馬子にも衣装とか言われたら?

気になりだしたらきりが無い。

「お可愛らしいですよ。」

締めた帯を軽く叩き、お手伝いさんが言った。

(本当に愛らしい。初めてお会いした頃とは大違いだわ。)

「本当?」

「本当ですとも。」

気にする姿まで愛らしく、彼女の変わりようが微笑ましかった。

桜がほころぶように、少女に春の盛りが近づいてくるのが見えるようで。

「いるか、何時までかかってるんだい。春海君がお待ちだよ。」

ひょっこりと現れた叔母は、彼の最後の準備が終わるや、姪の様子を見に来たようだ。

「おや、可愛いじゃないか。馬子にも衣装とはよく言ったもんだよ。」

「五月蝿いやい。」

「なんだいこの子は。折角褒めたのに。」

彼女は一番いわれたくない言葉を言われ、とたんに不機嫌になった。

似たもの同士で、よると触ると喧嘩するこの2人である。

今にも喧嘩の始まりそうな様子を見て、お手伝いさんが口を挟んだ。

「春海さんがお待ちなんでしょう。いるかさん、急がれたほうが宜しいですよ。」

「いっけな~い。急がなきゃ。おばちゃんのバカー!」

急がなきゃと言いつつ、去り際に一言を残し駆けていく。

「バカとはなんだい。こら、いるか。そんな姿で走るもんじゃないよ。」

無理を承知で叱ってはみる。

私だって、あの時分は恋人を待たせまいと駆けていったものだ。

早く会いたい。すぐに見せたい。でも、何て思われるかな。

はやる気持と期待。あせる気持ちと不安。

「姪ばかって言われそうだけどさ。本当に可愛いねぇ。」

「そうですね。」

いるかを見送り部屋に残った2人は、小さく笑いながらそう言いあった。

当の本人は、叱られた事など構わず、そのまま小走りで廊下を移動し、居間に顔を覗かせる。

「春海、待った?」

くるりと部屋を見渡すが、らしき姿が見あたらない?

院長先生と向き合い、浴衣姿の男性が、自分に背を向け座っているだけだ。

(誰だろ。祖父ちゃんのお客さん?・・・春海、どこ行ったんだろう?)

きょろきょろする孫の姿を、祖父は可笑しそうに楽しそうに見ている。

「準備できたか?」

突然男性が振り向いた。

優しい笑みと、瞳にイタズラ心が見え隠れするその人は・・・。

いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク春海


「え?春海~~~どうしたの?それ?」

見慣れない格好に、一瞬彼だと解らなかった。

「いるか。おまえ今、俺だって解んなかっただろ。酷いなぁ。」

少し傷ついたような顔をして、彼は言った。実際はそんな事は無いのだが。

「ごめんごめん。どうしたのそれ?」

「ああ、院長先生がご用意して下さったんだ。」

2人のやり取りを、ヒゲをなでつつニコニコ笑顔で見ていた院長が、口を開いた。

「どうじゃいるか。わしの見立ては。よう似合っておろう。」

「うん。すごくかっこいいよ。」

普段あまり聞かない言葉を臆面も無く言われ、春海が少し照れつつ口を開く。

「いるかこそ可愛いよ。」

今度は、いるかが恥ずかしがる番で・・・。

「あ、ありがとう。」

おままごと?新婚さん?さながらである。

院長は片手で額を押さえ、息を吐きつつ2人に言い放った。

「お前達、祭りに早く行きなさい。祖父さんには熱すぎるわい。」

・・・・。

「熱すぎるって、何て事言うのさ、じいちゃん。」

いるかは真っ赤になり、春海は何となく上を向く。

「とにかく早く行かんか。鹿鳴会の面々がが待っるぞ。」

学院長はもう一方の手をひらひらと振りながら、追い出すように2人を送り出したのだった。

~夏の終わり~ ③につづく

mameさんが主だって書くいるかちゃんと春海はとっても甘いです。
パンダが参入するとお笑いです。
どっちも好きす。


~夏の終わり~① 再アップ

こんばんは~juniです。

以前のブログに載せていたものを再アップします。


~夏の終わり①~

「2人で行ってこいよ。」柔らかな色合いの髪をした幼馴染が言う。

黒髪の彼は答える。

「遠慮なんかいらないぞ。東京ではいつも一緒にいるし、お前らとは帰ってきた時にしか会えないんだから。」

そういいつつも・・・2人で夏祭りに行った記憶が無いな、と思う。

あのキスから考えれば、いるかとはもう3年目に突入するのに。

「でも、本当は、2人で行きたいだろ。」茶化すような言葉と笑顔、春海の肩に腕をのせながら、もう一人の幼馴染が言った。

畳み掛ける彼らに、ちょっと下を向き歯噛みする。

「おい、あんまりからかうなよ。春海も、俺らには遠慮するなよ。」

諭すような言葉と柔らかな笑顔。

大柄な体格とは裏腹に、繊細で優しい彼は、思い人との関係を良い形で進めている。

進・一馬・兵衛。

そうだ、この三人に限っては遠慮はいらない。

フッと肩の力が抜けた。

「サンキュー、倉鹿祭り、2人で行ってくるよ。」

浮き立つ気持ちを顔に出すまいとする自分と、含みのある笑顔で自分を見透かす幼馴染らの関係には、距離も時間も関係ない。

三人のニヤニヤ笑いに見送られ、いるかの待つ院長宅に、春海は向かった。




いるかと共に、倉鹿に着いたのは昨日の夜。

久しぶりに帰ってきた故郷では、昔馴染みの夏祭りが明日あるという。

夜店に花火、下駄と風鈴の音がよみがえる。

去年はイロイロあって帰れなかった。今年は間に合うかも・・・と、ほんの少しの期待はしていた。

結局、彼女とは行かずじまいの祭り。

夏の夜の記憶の中に、彼女がいないのがほんの少し寂しかった。

(そういえば小学生の頃、夏祭りを本当に楽しみにしていたな。休みの終わりも感じてたっけ。)

8月31日の武士道水練大会と、その前の倉鹿夏祭り。倉鹿の夏の二大行事。

つらつらと思い描いていると、いつのまにか如月院長の自宅の門前に立っていた。

入りなれた玄関にお邪魔する。

「こんばんは。」

「はーい。よく来たねぇ。」彼女の叔母の声がし、浴衣姿で玄関に現れた。

「お世話になります。」

帰郷先は誰もいない実家、故に食事などは如月宅でお世話になる予定となっている。

「堅苦しい挨拶はおよしよ。もう身内同然なんだから。ちょっと上がってお行き。見せたい物もあるしね。」

もともと気さくな女性で、その上、可愛い姪っ子の婚約者ともなれば、もう甥も同然という訳だ。

「はい。ありがとうございます。」

いるかと同じモノを感じる彼女を、好ましく思えない訳もなく。言われるまま中に導かれる。

彼が居間に入ると、すぐに声がかかった。

「おお、春海か。いるかのばか者は、まだ準備中なのでな。すまんが少し待ってもらえるか?。」

「こんばんは院長先生。はい、待たせて頂きます。」

相変わらず元気な如月院長が、ヒゲに手をやりつつ(言葉とは裏腹の至極ご機嫌顔で)出迎えた。

手中の珠とも言える可愛い孫娘の婚約者は、過去最強の自分の教え子。

こうなる事は万に一つも無かろうと思いつつも、最高の相手として出会わせたのは自分で。

事実は小説より奇なり。瓢箪から駒。嬉しい誤算。

「葵、アレの用意は間に合ったのかのう。」

もう、孫同然の彼の事も、可愛くて仕方が無い。なお一層顔を緩ませて娘に問う。

「ああ、出来てるよ。春海君あちらにいいかい?」

「はい・・・?」

何だろうなと思いつつ、彼らが自分を悪く扱うことは無い。素直に後に従う。

隣の、控えの部屋の襖が開けられる。十畳はあろうか。それでもこの屋敷においては狭いほうの部屋。

電灯を点けた真下に、何かがあった。その何かを叔母は持ち上げ言った。

「今日は夏祭りに行くんだろ。これを着て行ってはどうだろうね。」

手の中には、紺の地の浴衣と男帯。

「これは・・・。」

「父さんがね。春海君の浴衣をどうしてもってさ。春海君のことが、可愛くて仕方が無いようだよ。」

ふふふっと笑いながら、彼女は浴衣を広げた。

彼の為にあつらえられたのだろう。真新しく、糊付けのされている。

「ピッタリだねぇ。」肩にあわせながら、葵は言った。

彼は何とも嬉しく、でもどうしようかと思案していると、彼女が言葉を続けた。

「祖父さん孝行だと思って着ておくれよ。本当喜ぶからさ。」

可愛い孫娘の婚約者に着せる浴衣を、それはそれは楽しげに選んだ父が思い出される。

(兄さんは殆ど帰ってこないし、連絡も無いしねぇ。)

それまで、あまり倉鹿に寄りつかなかった孫娘が、頻繁に帰郷するようになった。

孫娘はもちろん、目に入れても痛くない。

婚約者も、とにもかくにも可愛いのが見て取れる。

逆に春海は、祖父母の愛情というものに恵まれた経験が殆ど無く、今の状況は実際こそばゆい。

しかし、気にかけてくれる気持ちは純粋に嬉しい。その上、これを着ることで未来の祖父が喜ぶのなら・・・。

「ありがたく着させて頂きます。」

彼は軽く頭を下げそう言った。

「ああ、そうかい。こちらこそありがとうね。それで、着付けはわかるかい?」

「帯以外は大体わかります。帯締めをお願いできますか?」

武道の経験のある彼だ。羽織ることはできる。しかし浴衣の帯は、自分で結んだことがなかった。

「ああ、もちろん。帯を締めるときは呼んでおくれ。それじゃ、私は隣にもどるから。」

そういい残して、葵は部屋を出て行き、彼は一人静かに着替えはじめた。

~夏の終わり~ ②につづく

今年の夏風邪はしつこいです。
皆様気をつけましょう。


プロフィール

juni+mame

Author:juni+mame
「いるかちゃんヨロシク」の二次創作サイトです。
 <mame二次小説/juni イラスト>
当サイトはリンクフリーです。
当サイト内の画像や文章の転用転載をお断りいたします。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
月別アーカイブ