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~その後の物語~ 2人⑥

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こんばんは。
ご感想や拍手、いつもありがとうございます。
mameです。

今回は、早目の更新を目指しましたが、相変わらず展開は遅いです。
それでも宜しければ、お読み下さいませ。



~その後の物語~2人 ⑥

いるかの前にお茶が置かれ、彼の前には湯気の立つそれが置かれ、春海が隣にすわる。

「一口含むといい。」

自分のを持ち上げ、いるかにも薦める。

彼女の・・・頼りなげな、しかしその中に見える決意。

「ありがとう。春海。」いるかはそう言って、湯飲みを口に運んだ。

温めに入れられたそれは、彼女の喉と胸を満たす。

お茶を呑み込み、深い深い息を一つ吐いて言った。

「独り言みたいになるかもしれないけど、最後まで聞いてね。お願い、春海。」

あえて、目をあわさないで語っているのだろう。

真直ぐに前だけ見るいるかの言葉に、春海は、「ああ、分かった。」と言うしかなかった。

「あたしね。春海とのお見合いだったら、嬉しいよ。でもね、本当に良いのかな、とも思ってる。」

いるかは、一呼吸置いた。

途端、じっとりした汗が、春海の手を湿らせる。

「春海には春海の道っていうか、人生を歩んで欲しいって思うんだ。あたしの事に、巻き込みたくない。」

いるかは少し、下を向いた。

あのときの事を思い出す。

本人の為を思えばこそ見送って・・・あたしはどれだけ、春海の道を変えて来たんだろう。

「春海は、絶対にあたしを助けてくれる。無茶しても。・・・でもね。」

言いたいことは通じているのだろうか?

「あたし、つい最近ね。自分のやりたいことが、少し見えて来たんだ。それを叶えようと思うと、あたしが、ずっと、如月いるかじゃないと出来ないんだって。」

下を向きながら話していたいるかが、顔を上げた。

「だからね。尚更思った。春海には、春海のやりたいことをやって欲しい。」

いるかは、グッと湯飲みを握る。

「希望を叶えて欲しい。春海をこれ以上、あたしの事に巻き込みたくない。これが言いたかったの。」

先程とは打って変わって、強い光を目に宿し、いるかは言い放った。

「いるか、お前、俺とのお見合いが嫌になったのか?」

春海の言葉にいるかは驚き、「そんな事、絶対無いよ。」と即答した。

「安心したよ。・・・いるか、俺も話していいか?」

「うん。聞きたい。聞かせて。」

いるかが、やっと春海の方を向いて答えるのを確認して、春海は胸をなでおろし、独り言のように

「・・・俺は、巻き込んで欲しいんだが。」

どう言えば、解って貰えるだろう。

いるかの云わんとしている事。俺が伝えたいこと。

春海はすっくと立ち上がり、紙とペン、各々分を持ってきた。

「確かに俺にも、大事なこともあるし、将来やりたいこともある。もちろん希望もある。いるかにあるようにさ。」

いるかはゆっくりと頷いた。

「この紙に書いてくれないか?いるかの、今、一番大事なこと。そして将来、何がしたいのか。将来の希望や夢。もちろん、俺も書くよ。」

少し躊躇するいるかに、紙とペンを渡しながら、春海は言葉を続ける。

「俺達は、会話が足りないんだと思う。もっとお互いを知ったほうがいい。俺も、正直に、書くから。」

いるかの前に置かれた白い紙とペン。

春海の前に置かれた白い紙とペン。

彼は、それらをもって立ち上がると、いるかから少しはなれた所に座りなおした。

「お互い書いてから見せあおう。いるか。お前にとって、今、一番大事なことと、将来の望み。何がしたいのか。どうしたいのか。何が欲しいのか、だぞ・・・遠慮は無しだ。」

春海は、視線を手元の紙に落とし、ペンを掴み走らせ始めた。

いるかは、最初はじっと紙を見詰め、おもむろに春海を見、ペンを持ち上げた。

そして、ゆっくりと、書き始めた。

~その後の物語~2人 ⑦へ続くいるかちゃんヨロシク二次小説 いるかちゃんヨロシクファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシク漫画

~その後の物語~ 2人⑤

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~その後の物語~2人 ⑤

疲れたのか安心したのか、お約束のごとくいるかが寝息をたてる頃、大方の雑用も終わり、窓から差し込む光が、薄いもみじ色に染まり始めた。

「そろそろ帰ろうぜ。」

巧巳が声をあげ、春海の方を見た。

その言葉を受け、しょうがないなという風に、声をかけられた本人は腰を上げる。

それが合図と玉子も立ち上がり、書類をサクサクと片付ける。

1人いるかだけが、机に頭をのせたまま動かない。

「今日はよく頑張ったよ。試験勉強で、誰よりも疲れてるはずなのにさ。」

本人が起きていれば、決して言わないであろう一言を玉子がもらすと、「そうだな。」と巧巳が呟いた。

そして、「2人は先に帰っていいよ。もう少し寝かせてから俺達は帰るよ。」と春海が言った。

確かに、この熟睡状態を起こすのは忍びない。

かといって、ただ待っているのも・・・。

玉子が「それじゃお先に失礼するね。」と片手を上げてドアに向う。

「俺も帰るわ。」

巧巳もその後に続き、生徒会室のドアをくぐる。

そして、扉が閉まる寸前振り向き。

「鍵は開けといても大丈夫そうだな。」

そう一言残して、消えた。

その場には、苦虫を噛み潰したような顔の少年と、天使のような寝顔の少女が残された。




あのね、春海を巻き込みたくなかったの。

解った。俺には相談出来ないんだな。

違う。そうじゃない。

違う。そんなことじゃない。ごめんね!だってね。だって!




「いるか。おい!いるか!」

突然の出来事だった。

魘されたいるかを、優しく揺り起こす。

春海が小説を読む傍らで、つい先程まで、すやすやと天使のような寝顔を披露していたのに。

目の端に浮かぶ涙を、指で拭う。

いるかがゆっくりと顔を上げると「いるか?どうしたんだ?」と春海は声をかけた。

「あ・・・春海。」

覚醒しきれない頭で、周囲を見渡す。

見慣れた生徒会室。

目の前には、春海。

さっき、あたしに背中を向けて歩いていった・・・。

「春海」

名前を口に出すと、何かが零れた。

「いるか、大丈夫か?」

心から心配する声に、現実に引き戻され、徐々に頭の中が澄んでくる。

背中を向けて歩いていったのは夢。

春海は、いつもあたしに手を差し伸べてくれる。

今まで背中を向けていたのは・・・あたしだ。

「あのね。春海に、大切な話があるんだ。」

いるかは一言そういった。

春海は驚き、戸惑った。

涙が気になった。

ごめんね・・・と確かに言ったのだ。今、話を聞いてしまっていいのだろうか?

「いるか、無理するな。」

「ん~ん。無理してないよ。大事な話なんだ。多分、今じゃなきゃ言えない。」

凛とした空気さえ纏った姿。

「分かった・・・だた、俺もいるかに話があるんだ。一緒にいいかな。」

「うん。」

いるかは、静かに頷いたのだった。

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~その後の物語~ 2人④

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こんばんはjuniです。
mameさんの連載~2人~のつづきをどうぞ。


~その後の物語~2人 ④

「は~~~!外務大臣?春海、いるか、あんたたち(お前ら)何者(だよ。)?」

どちらかと言うと、玉子と巧巳は、里見学習院内では一般的な方の生徒である。

各々の得意とするスポーツで、エリートとされる里見学習院への門戸が開かれた(とは言っても、里見における一般は外部では裕福と言う。)彼らには、想像しがたい内容なのだ。

里見学習院は確かに、良家の子女が多く、お見合いというフレーズに関しては、そう珍しくも無い。

しかし、外務大臣が取持つ縁談など、エスカレーター組の2人でも、初耳である。

玉子はいるかへ顔を向け、

「春海は別として、あんたがお嬢様だったなんてさ。世も末だね。」と呆れ顔で言った。

この私とガチンコで喧嘩したこいつが!?

玉子の言葉にいるかはムッとしたが、確かに中学2年の途中まで、遅刻・早弁・ケンカの毎日(現在も似たようなモノだが)そう言われても仕方が無い。

「五月蝿いやい。」

顔を真っ赤にして言い返す。

実際、自分でも、そんな柄じゃない!と思っているのだ。

女子2人がやいのやいのと言い合いながらも、お菓子に手を伸ばす横で。

「・・・見合いはいつ頃するんだ。」

巧巳が無表情で問うた。

「来年、2月か3月頭頃になるだろう。親達は早めにやりたかったみたいだが、こいつの試験の事とか、サッカー大会の事もあるしな。」

いるかへ視線を向け春海が答えると、ポテトチップスを食べていたいるかが、うん!うん!とのん気に頷く。

きっと2人で、大きな山を超えたんだろうな・・・。

半歩大人になったような彼らを見て、巧巳は思った。

「そうか、来年の春までは忙しそうだな。」

「そうなるだろうな。まずは、年末に2人で倉鹿に帰ることにしたんだ。今回の事では、如月学院長にご心配かけたしな。」

巧巳は、駅伝大会の折の、倉鹿修学院学院長を思いだす。

倉鹿の生徒会役員を引き連れた、見た目の年齢とはかけ離れた毅然とした姿と、孫娘の雄姿を見に、わざわざ東京まで来るほどの深い愛情を併せ持ついるかの祖父。

眼前の2人が全幅の信頼を寄せる人。

「いるかの元気な姿もお見せしたいし、これからの事もあるしな。」

春海がそう言うと、いるかが横でまた、うんうんと頷く。

言葉は出せない・・・両ほほがリスの如く膨らんでいる。

本当に緊張感のかけらも無い・・・男子2人は女子2人を見て、ため息とともに、安堵の吐息を吐いた。

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~その後の物語~ 2人③

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mameです。
いつもありがとうございます。

バレンタインを書き始めた時、~2人~の方は、あとほんの少しで、書き終えるところでした。
が!!最後で躓いてしまいました。

本当は、こちらの方を先に更新したかったのですが・・・。
とにかく遅い展開です。
ご不快でなければ、お読み下さいませ。



~その後の物語~2人 ③

「終わったぁ~~~。」

教室の至る所から声が上がる。流石のいるかも今回は・・・

「う~、疲れたぁ。」と机に両手を投げ出した。

こんなに勉強したのは、里見の受験以来だ。

ともかく試験は終了し、赤点は無いだろう!?という、手ごたえさえ感じる。

一山超えた充実感を感じながら、この後の事を考えていた。

玉子・巧巳・私達4人での、試験の打ち上げ・・・とは名ばかりの集まり。

2人には、自分達が不在の間、多大にフォローして貰ったのに、何の話もしていない。

晶・圭子・一子らは、いるかの大変さを慮って。

「私達はね。いるかちゃんが無事帰って来た。それでいいよ。」と言ってくれた。

しかし、その後。

「でも、東条君と玉子はね。とんでもなく大変だったみたいだから・・・。」

せめて2人には、きちんと説明しなければ。

そしてもちろん、春海との話し合い。

年末に倉鹿へ帰って、爺ちゃんに相談と報告をする為にも、絶対に必要だ。

母と話してから時間がたち、少々気後れがちだが、これ以上先延ばしにする訳にはいかないのだ。

「いるか~巧巳~、生徒会室に行くだろ。」

2組も終わったらしい。玉子が1組に首だけ突っ込んで声をかけてきた。

「ああ。」巧巳は、鞄と大きな包みを掴む。

「うん、ちょっと待ってて。」

いるかは、鞄に筆記用具を仕舞い込み、立ち上がる。

「晶、圭子、一子。じゃ~ね~。」

3人に声をかけ、教室を飛び出した。

彼女らも「ばいばい。」と軽く手を振り返す。だがその時にはもう、いるかの姿は消えていた。




急ぎ足の3人が、連れ立って生徒会室に入ると、先客が書類を広げ、机に座っていた。

文化祭後から3年が抜け、実質的な生徒会役員は、山本春海・如月いるか・東条巧巳・犬養玉子の4人のみである。

試験期間中であろうとも、日々の雑務は貯まる。

その上、年明け3学期ともなると、行事ごとは目白押しだ。

それらの準備で、今は忙しい時期でもある。

その為、通常ならば試験終了すぐ部活!だろうが、彼らの今日の練習は無しとなっている。

「春海、早いね(な)。」

早速仕事をしている生徒会長に、3人が声をかけた。

「ああ、とっとと片付けないとな。」

チラッと視線を上げて言う。

「春海、お昼ご飯は?」

もちろんいるかの質問だ。

「ん?ああ、まだだよ。」

「じゃぁ、お昼ごはん食べてから、やっつけちゃおう。」

その一言に、3人の視線がいるかに集中した。

どうしたの(んだ)?と一様に驚く。

しかし、やる気に水を注すのも何だからと、あえて「珍しい。」とは口に出さず、そそくさと昼食をとり、仕事に入った。

始まって30分。

やっぱり・・・珍しい・・・と思いながら、春海、巧巳、玉子の3人はいるかを凝視していた。

いつもなら、ものの10分もすれば、舟をこぐいるかが、一心不乱に作業に没頭している。

何かあるのかな・・・あるんだろうな、と、春海は思う。

今までの経験から言って、そうとしか考えられない。

4人は黙々と作業を続け・・・おやつの時間を迎える頃に、あらかたの作業を完了させていた。

後は、雑談を交えながらでも出来るものばかりとなった所で、春海が口を開いた。

「‎一休みしよう。」

それが合図のように、3人が顔を上げた。

「う~~~~ん。疲れたぁ。」

いるかが伸びをしながら言う。

「何とか終わりそうだね。」玉子が言うと、「そうだな。」と巧巳が、玉子いるか春海の顔を見て。

「打ち上げの場所だけどな・・・ここが一番だと思わないか?」と言葉を続けた。

そしておもむろに、教室から運んできた包みを会議机にのせ、アレコレと取り出し始めた。

中身は、大量のお菓子におつまみに飲み物・・・用意周到と言うしかない。

次々に机を占領していくそれらを前に、いるかの目が光り、玉子の口がほころび、春海は肘をつき目が(何だコレは?)と問いかける。

それに対し巧巳は、悪びれる様子も無く。

「聞かれる心配も無い!だろ。」と、彼らしい笑みを浮かべ、いるかと春海をかわるがわる見た。

2人は顔を見合わせ苦笑し、「まぁな。」「そうだね。」と笑い返す。

そして、いるかの家出事件の真相が語られ始めた。

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~その後の物語~ 2人②

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こんにちはjuniです。
mameさん!今回の②私は好きだぁ(〃^∇^)o



~その後の物語~2人 ②

期末試験の前日の放課後、2人は生徒会室で過ごしていた。

「この様子なら、今回の試験は大丈夫だよ。」

いるか専属の、最高の先生が言った。

4日前から試験週間に入り、部活は休み期間に入っていた。

昨日までの3日間、春海は六段に通い詰めた。

流石に今日は、お互い体を休められるようにと、六段での勉強は取止め、明日の科目のヤマ張り・・・あまり良いこととは言えないその作業を、生徒会室でやっていたのだ。

春海も、今までは躊躇しながらやっていたそれを、今日までの涙ぐましい努力へのご褒美と、余すところ無く披露した。

いるかは、お世辞にも良いとは言えない(春海と比べて)頭をフル回転させて、試験科目の重要項目を確認していく。

確認しながら問題を解き、解けなければ説明をしてもらう・・・の繰り返し。

単純そうで、教える側にとっては難易度の高いその作業を、事も無げに春海はこなしていく。

今更だけど、本当に春海って頭いいんだ・・・と、本当に今更な感心をいるかはしていた。

頭が良い・・・学業成績が良いというだけではない。

教えて貰っているからこそ判る。

彼は相手に理解をさせる、納得させる事が素晴らしく旨い。

いるか自身でさえ、どうしてわからないのか不明な部分でさえ、彼は見抜き、説明し、いるかに理解させる。

正解というゴールに、彼女を導いていく。

倉鹿修学院時代と違い、格段に難しくなった今でも、彼に影響は無いようだ。

それにしても、春海って本当に教えるの上手すぎ。

中学3年の冬、両親が雇ってくれた家庭教師は、厳しいことでも有名だが、教えるのが旨いことで特に有名だった。

その先生と比べても引けを取らず、その上別の能力・・・見抜く目?説得する?よく判らないが、とにかく凄いのだ。

一朝一夕で身に着けたものとも思えないし、練習でもしてんのかなぁ???何の練習?

こういう時は、結構厳しい先生になる恋人に、冷静な目を向けた。

味方につければ、これ程頼りになる人はいないだろう。

敵に回せば、勝てる気がしない・・・理屈では。

あたしは、理屈だけでは納得しないけどさ。

でも、頭脳で太刀打ちできる日は、絶対に来ることも、これ以上頭の良い人に出会うこともなさそうと。

負けん気の強さを覗かせながら、尊敬の眼差しで春海を見た。

いるかの動物的直感(失礼...)は、時に周囲を、春海さえ驚かせる事がある。

理屈を超え、的の中心を射抜くそれも、彼女の魅力の一つだろう。

「おい、いるか。聞いてるのか?」

大丈夫だよ・・・と言った途端、じっと見詰める目に、実はどぎまぎして、春海は声をかけた。

何かを見透かされたような・・・。

「え?あっ!ごめん。春海が言うなら、」

彼のたった一言で、らちもない事を、のんき気に考える余裕が出てくる。

「大丈夫だね。」

見上げたまま、にこ~っと満面の笑顔を春海に向け、いるかは答えた。

全幅の信頼をのせた表情に、彼は瞬間「うっ!」っと唸った。

何の我慢大会が始まったのだ・・・抱きしめたくなる強い衝動。

「どうしたの?」

彼女は小首を傾げて、無邪気に聞き返す。

それがまた、愛らしい。

折しも2人きりの生徒会室・・・白旗・・・と、春海がそっと腕を伸ばした時。

ガチャ!

生徒会室のドアが突然開けられた。

「あ~、やっぱりここに居たんだな。」

巧巳がそう言いながら入ってくると同時に、いるかの背に伸ばされかけていた手が降りた。

他の者なら気付かないかもしれないが、春海と張り合うほどの運動神経と、彼以上とも言われる動体視力を持つ彼が、見逃すはずは無い。

「・・・・・。」

巧巳は春海と目を合わせ、ニヤッと一方的に笑う。

「お邪魔したようだな。」何の邪魔かは言わぬが花。

「ん~別に?大体終わったし。」

意味深なセリフの意味に、いるかだけが気付かず、春海はちょっと紅を散らした顔をそむける。

ニヤニヤ笑いのまま、巧巳は言葉を続けた。

「いや、靴があったから、多分ここだろうと思ってさ。試験が終わった後、お前らと玉子と俺、4人で打ち上げでもどうかってな。」

久しぶりの楽しい話に、いるかはすぐに飛びついた。

「うん。いく~。ねぇ、春海も賛成だよね。」

春海の方を見て答える。

「ああ。いいよ。」

言葉とは裏腹に、憮然とした表情で肘をついて答える彼に、どうしたんだろ?と一瞬思うが、まぁいいかと受け流す。

倉鹿時代から、結構見慣れたその表情。

怒っている訳でも、自分が不愉快にしている訳でも無いらしい。

春海からは「いるかのせいじゃないから。」と言われ、でも、さすがに少々気になり、一度一馬たちに尋ねたことがある。

彼らからは、「いるかがどうこう出来ることじゃないし、気にしない方が、春海にとっても良いんじゃないかな~。」と言われた。

春海にとって良い???意味がわからない、でも、気にするのはやめた。

あたしにどうしようも出来ないことなら・・・。

不機嫌な春海を、巧巳は楽しそうに見物しながら、会議用の机を迂回し、ゆっくりと彼に近づき、肩に手を置いた

「そんじゃ、場所はこっちで決めとくよ。」

そう言いながら顔を寄せ、いるかに聞こえぬように耳打ちする。

「今度からは、鍵をかける事だな。」

「!!!!!」

言葉に詰まる春海の様子を見たいるかが、どうしたの?と2人を覗き込むと、

巧巳は「男同士の話さ。」と笑いながら返す。

春海は「用事は済んだんだろ。」と言いながら、去れとばかりに目線をドアに向けた。

その失礼な態度が、尚の事笑いを誘ってしまう。

しかし、これ以上からかうのは不味いと思ったのか「はい、はい。」と言いながら、巧巳はドアに向った。

そして去りしなに。

「じゃあな。明日はお互い頑張ろうぜ。」と言葉を残し、消えて行った。

春海は、バツの悪さを隠すように立ち上がる。

「明日の対策も終わったし、俺達も帰るか。」

「うん。」

「期末試験、頑張ろうな。」

「もちろん!赤点無しで冬休みを迎えるんだ。」

会議机の上を片付けながら、いるかは元気に答えたのだった。

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