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~その後の物語~ 大晦日のお土産話(祖父と5人編 ②後編)

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juniです~おこんばんは。
後編をアップしますね。


~その後の物語~ 大晦日のお土産話(祖父と5人編 ②後編)

そんな思惑など露知らず、いるかが言葉を続け、

「何か、あたしのことばっかりじゃん。こっちで変わったことは?」

何の気なしに尋ねた。

「別に変わらないと思うけどね・・・あたしらは女子サッカー部を作ったよ。さすがに今回は、県の代表にはなれなかったけどね。」

相変わらずのサッカー好きを露見させ、銀子が報告すれば、

「そっかぁ。来年が楽しみだね。今度こそ国立でやりたいね。その時は敵同士だけどさ。」

いるかがあっけらかんと答えた。

彼女らの実力は、自分が一番知っている。

「ああ、あたしらも来年は狙ってるよ。絶対優勝しなよ。」

「もっちろん。」

県予選を突破した里見の女子サッカー部は、高校サッカー冬の女子選手権の、優勝最有力候補として名前が挙がっている。

「私も女子ソフト部を作ったの。相変わらずのメンバーで頑張ってるわ。高等部からの子で、いい球を投げる進入部員が入って来てる。」

「へぇ、良かったねぇ。キャッチャーは誰がしてるの?銀子?」

博美と銀子を見ながら、いるかが尋ねた。

「キャッチャーは私。銀子さんにはサードを守ってもらってるわ。普段はサッカーの練習があるから別だけど。」

へぇ~~、いるかが感嘆の声を上げて、

「さっすが銀子、相変わらずのマルチプレイヤーぶりだね。」

「まぁね。怪物のあんたにゃ負けるけど。」

「せっかく褒めてるのに、怪物言うなぁ~!」

喧嘩のような言葉遊び、時間も空間も飛び越える絆、楽しくて仕方が無い。

「私は変わりない・・・かな~。剣道部でレギュラーになったくらい。」

ついで湊が、それとなく近況を報告する。

「一年でレギュラーなんだぁ。おめでとう。」

いるかがお祝いの言葉を送ると、杏子がニヤリと笑いながら言葉を添えた。

「日向さん?もう一つ、大事なおめでとうがあるだろ。一色君とのことは、あたしの勘違いかねぇ?」

「・・・杏子さん・・。」

湊は真っ赤な顔で俯き、否定もせずに押し黙った。

「えっ?そうなの?いつの間に?」

最も付き合いの長い博美が湊を見て驚くそばで、いるかは天井を見上げ、何事か考えている。

「湊と、一馬がおめでとうって・・・おめでとうってことは・・・2人結婚するの?!!ええええええ~~~~。」

いるかの発言に、湊が目を見開いた。

あんたらじゃあるまいし!!そんな訳ないし、一色君まだ結婚出来ないし!!!

「違う違う!クリスマスから付き合ってるの!」

冷や汗をかきながら告白する。

「びっくりしたぁ・・・。湊おめでとう~~~~。」

「びっくりしたのはこっち!」

叫ぶ湊もろともいるかは抱擁し、再度お祝いの言葉を言う。

そんな中ほかの3人は、いるかちゃん(あんた)の言葉に驚いたわ!と、言葉なく突っ込んだ。

爆弾を落とした本人は、もう飄々の体でお菓子をつまみながら、みなの顔をかわるがわる見て

「そっかぁ。こっちでもいろいろあってんだねぇ。」などと言っている。

相変わらずの彼女に、安心するやら慌てるやら、楽しいやら可笑しいやら、輪の中心はいるかなのだと再確認するばかりだ。

「あたしさ今日、祖父ちゃんに、倉鹿修学院を頂戴って言ったんだ。」

「へぇ~~って、えぇ?!」

事もなげに言うこととは思えない内容に3人が驚く中、博美だけが身を乗り出し

「倉鹿修学院を継ぐってこと?それじゃ、倉鹿に帰ってくるの?」

「うん。」

会話を続けている。

「ってことは、将来は山本君も倉鹿に?」

「そう、えっと、みんなだから言うけど、春海に”如月春海になって下さい”って言った。」

「山本君が、お婿さんになるってこと?」

「うん。春海も今日、あっちでみんなに話してると思う。倉鹿に来る途中で、みんなには話そうって2人で決めたんだ。」

あまりの展開の速さに、頭が付いて行けないかも・・・と博美は思いつつ、彼のことが頭に浮かんだ。

「そう。山本君、倉鹿に帰ってくるのね。その話聞いたら、太宰君、喜ぶだろうなぁ。」

・・・どうして進の名前が出てくるんだろう???

きょとんといるかが博美を見ている中、湊と銀子と杏子が、おやおやと視線を交わす。

「山本君が東京に行った後、太宰君すごく落ち込んでたんだよ。ぼ~~~っとしてね。」

「確かに酷かったねぇ。サッカーにも身が入ってなかったくらいだから。」

博美の言葉に、銀子が同意する。

グランドでのリフティングの練習中に、普段の彼なら考えられないミスを連発する。

それを兵衛に話すと、

「進は、春海に一番近いところにいたからな。本人も、こんなに落ち込むとは思わなかったって言ってたよ。」

時間が解決するまで見守るしかない。

いるかが行ってしまった後でさえ、こんな姿を見せることは無かったのに。

「太宰君、いるかちゃんの事好きだったけど、それ以上に、山本君との友情を大切にしてたから。」

ゲホゲホ!!!いるかは博美の一言にむせた。

「何でそれ知ってるの?進が話したの?」

大慌てのいるかを見て3人がため息をつき、銀子だけが「えっ!太宰君そうだったの?」と、恋愛奥手を披露する。

「いるかちゃん、あのね。あの頃の太宰君の行動を見れば、だいたい判るわよ。」

湊が代表しているかに言うと、

「あ・・・ぁ、そう、なんだ。でも、何も無かったんだよ。」

恥ずかしそうにいるかは答えると、「だからね・・・。」と博美が続ける。

「いるかちゃんが東京に行った後は、山本君を元気付けるくらい余裕があったんだけどね。山本君の時は、本当に凄く寂しそうだったのよ。」

修学院高等部に入学し、偶然にも進と同じクラスになった博美は、ボーっと窓からグランドを眺める彼に、言葉をかけては色んな話をした。

ちょっとでも気がまぎれるように。

どうしてるかな~あいつら~~と、気軽に話せるようになるまで・・・。

徐々に彼の、いつもの優しさが見え出した頃には、女子の中では、最もよく話す友人となっていた。

「太宰君、大学もこっちの医大を希望していて、将来はお父さんの病院を継ぐつもりなんですって。2人が東京にずっといるのなら、なかなか会えないなぁって。」

目指している夢の性質上、その学業の大変さはもちろん、叶えても、その多忙さは、父の背中から学んで知っている。

現在のサッカーと学業の両立は、有能な彼だからこそ出来ている芸当だ。

考えれば考えるほど、昔のようには行かないだろうなぁ・・・と、少し寂しそうに微笑む彼。

「そっかぁ。進、そんなこと言ってたんだぁ。」

春海にとっても、進は、ちょっと、特別な存在のようだと、今までも感じたことがある。

「いるかちゃんと山本君が倉鹿に帰ってくるの、絶対太宰君喜ぶわ。」

まるで自分のことのように、博美は喜びの笑顔を零れさせながら言った。

「博美、進のこと、すっごくよく見てるんだねぇ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

いるかの他意の無い、彼女の投げる剛速球のような重い一言に、博美は後頭部を打ち付けられ、言葉を失った。

その、途切れそうも無い沈黙に、湊が助け舟を出すように口を開いた。

「いるかちゃん、博美はね。ずっと前から、太宰君のことが好きなの。」

多分これも、気づいていないのは、いるかちゃんと銀子さんだけ。

「博美が進のこと・・・進のことを?!!博美、あの、ごめんね。ごめんなさい。」

いるかは、どうすればいいのか分からないと、おろおろと首をふった。

さっきの一言、彼女はどんな気持ちで言ったのだろう。

「いるかちゃん。ごめんなんて言わないで。」

その様子を見て、やっと言葉を発した博美は、いるかの目を見て気持ちを伝える。

「いるかちゃんのお陰で、太宰君と話せるようになったんだから。それだけで十分。ほんとよ。」

彼女と出会う前、彼らは高い場所に立つ憧れの人で、友達として話すことなど考えられなかった。

「太宰君がいるかちゃんを好きなんだって気づいた時、不思議と辛くなかったの。凄く納得しちゃって。だってしょうがない事だし。」

私自身、いるかちゃんをこんなに大好きなんだから。彼が惹かれても当たり前。

「そうね。」湊が小さく頷く。

「いるかちゃんは何も悪くないんだから、謝らないで。ね!お願い。」

彼女から伝わる本心。

他の3人も、軽く頷き微笑む。

「うん・・・うん!わかった。」

そうだ、私がウジウジしていたら、博美が気にしちゃう。

人の気持ちはしょうがないのだ。誰にも縛りようが無いのだから。

想うのは自由で、想われることに罪は無い。

ずっと会話を聞いていた杏子が、不意に口を開いた。

「これはあたしの私見だけどね。太宰君は、いるかのことは、かなり前に吹っ切れてる感じだよ。」

だからさ・・・。

さらっと言った一言に、

「私もそう思うわ。」湊が同意し、「だったら、2人が気にする必要はないね。」と、銀子がしめる。

いるかと博美は顔を見合わせ、クスッと笑った。

誰も嘘を言っている感は無いが、彼女達にとっては優しい響きのそれら。

冷え込む外気とは裏腹に、暖かい仲間の心に触れて温まりながら、女5人の夜は更けていく。

さて翌日、楽しい時間をたっぷりとを過ごし一度家に帰った湊を、その日の夜に迎えに来た一馬が相談した内容は、彼女を驚かせるに十分な内容だった。

~祖父と5人編 終わり~いるかちゃんヨロシク二次小説 ファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク漫画
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~その後の物語~ 大晦日のお土産話(祖父と5人編 ②前編)

下記はmameさんからです。そのままアップします~。by juni

こんばんはmameです。
あまりにも長くなったので、前後編とさせて頂きました。

これらのお話を書く前に、彼らの将来像を三人で考えました。とても楽しい作業でした。
皆様のイメージと異なっているかもしれません。その点は、ご容赦下さいませ。

~その後の物語~ 大晦日のお土産話(祖父と5人編 ②前編)

夕方になり、お泊り会の皆が集まり始めた。

湊、博美、銀子、杏子の順に現われ理事長に挨拶すると、いるかが倉鹿に居た時に使っていた部屋へ順次通された。

いつ孫が来ても良いようにと、そのままの姿にとどめ置かれた部屋である。

居心地の良いその部屋で、5人は丸くなって話しはじめた。

年末にいるかが帰ると聞くやいなや「修学旅行のやり直しをしたい!」と声が出た。

修学旅行の醍醐味と言えば夜の雑談・・・誰が言い出したのかは定かではないが、もちろん反対の声は無かった。

倉鹿修学院、中学3年の修学旅行。

いるかを中心に仲良くなったメンバーなのに、一番肝心の彼女が居ないと、どれ程がっかりしたことか。

しかしそこは、鹿鳴会のメンバーに「女は怖い」と、言わしめる彼女らである。

行き先は関東・もちろん東京にしてね!と言い、対して鹿鳴会メンバーが否を言うわけが無く・・・正確には言える雰囲気では無く。

東京行きが決まり、やったぁ~会える~と喜んで約束の場所へ向かえば、一筋縄では会えない所が、いるかのいるかたる所以、本領発揮と6時間の遅刻。

何かがあったのは一目瞭然で、会えてよかったね~と歓喜した次の瞬間には、すでに門限オーバーでバイバイとあいなった。

不完全燃焼極まりない。

今回の里帰り、山本君にしてみれば「うれし恥ずかし初めて?の2人旅」だろうが、そんなこと知ったことではない。

一緒に高校生活を送れる幸せを享受している彼に、何の遠慮が必要か!と、帰って早々いるかを独占する!と勝手に決めていた。

電話口のいるかも・・・

「うんうん。楽しみだねぇ。もちろんあたしはオーケーだよ。祖父ちゃん家でやればいいじゃん。あたしから頼んどくよ。部屋はいっぱいあるんだしさ。」と即答である。

彼女達が確信犯であったことは疑いようも無く、もちろん春海は渋い顔で了承した。

反対しても無駄なことは、最初から解っているのだから。

それじゃ男だけの集まりでもやるか・・・と進が言い出し、倉鹿に着いたその日は男女別のご帰還会となった。



年頃の少女が6人揃えば、かしましいことこの上ない。

早目とは言っても、各自夕食を済ませて来たというのに、中心に置かれた小さめのテーブルには、お菓子が山と詰まれている。

別腹のそれらをつまみ、ジュース飲みながらでも、口が閉じることは無い。

「ホント、いるかちゃんが東京に帰ったって山本君から聞いた時は、みんな泣いたんだからね。」

湊が言うと、博美がうん!うん!と頷きながらいるかを見た。

それを言われると辛いなぁ~と思いつつも・・・何も言わず、突然行ってしまったのは自分。

「ごめんね。」と小さく言った後、

「どうしても、みんなに、さよならって言いたくなかったんだ。さよならっていったら、終わっちゃう気がして。」

・・・やっと彼女たちへ、当時のことを語り始めた。

「倉鹿がね。あたしの心の故郷みたいになった頃かなぁ。突然ね。帰って来いって両親から手紙が来てさ。結構無理して、仕事を終わらせたみたいでさ。」

かもめや琢磨とは、長い長い歴史があって、もちろんかもめとは血の繋がりがあるから、切れる縁じゃない。

でも倉鹿の皆は、たった一年半でかけがえの無いモノになって、さよならって言ったら、永遠に終わりになる気がして。

「誰にもさよならって言いたくなかったの。泣き顔を見せたくなかったし、見たくなかったの。だって辛いじゃん。」

しんみりと語るいるかに、他の4人は何も言えなくなった。

倉鹿で東京で、一人で耐えていたのは、彼女なのだから。

「あたしらはさ、大丈夫だよ。全然違う環境や、考え方をしてたのに、今はこんなに近いしね。」

銀子が言う横で、杏子が笑う。

「そうよ。変わりようが無いでしょう。」

博美がそう言うと、湊が涙目で頷いた。

「そうだね。うん、今ならわかるよ。」

いるかは微笑みながら答える。

「倉鹿を出るときね。春海が気付いて、あたしが乗った電車を追いかけながら、東京へ行くって言ってくれたんだ。」

遠い目をして言う彼女の言葉に、皆が耳を傾けた。

「それを聞いてから、東京に着くまで一生懸命考えてさ。あたし自身が、諦めてたことに気付いたんだ。」

眉間に皺を寄せ、

「もっと足掻けばよかった。父ちゃんと母ちゃんに倉鹿に居たいって言えばよかったって。祖父ちゃんだって力になってくれたと思うし。」

後悔を滲ませる顔、

「もしかしたら、皆と一緒に、倉鹿修学院を卒業出来たかもしれないし。」

今となってはしょうがない。でも、ずっと心に残るだろうなぁ。

「だからさ。今回は諦めないぞ、親の言いなりになるもんか!って家出したら、大騒ぎになっちゃった。」

てへへへへ・・・と照れ笑いをしながら言葉をしめる。

はぁ~~~っと一同が溜息を吐くと、

「いるかちゃんは、ほんとに極端なんだから。」と、湊が一言いった。

続いて杏子が

「山本君には、今度からは相談したほうがいい。このままじゃ彼、心配しすぎて禿げるかもよ。」と言うと、

ブッ!っと、銀子が噴出し、無きにしも非ず!!!と、一同笑い転げた。

「きゃはははははは、そうする~。春海にもすっごく言われた。この前は外務大臣とか出てきたから、春海に迷惑かけられないって、何も言わないで家出したら。」

「それが間違い!」

博美がこらっ!と怒ったように言った。

「そうだね。追いかけて来てくれたもん。こんな事なら、ちゃんと話せばよかったって思ったよ。新潟でもいろいろあったし、それは明日話すけど。」

無鉄砲極まりない行動の中には、必ず優しさが隠されている。

そんな彼女を、愛さずにはいられない。

望まずにはいられない、留め置かずにはおれない。

山本君大変だ~~~と一同思う。

きっと彼女はこれからも、誰からも望まれる、愛される・・・老若男女関係なく。

もちろん私たちも。

今回は私たちの勝ち!

次だって負ける気も、譲る気も無い。

~後編につづく~

~その後の物語~ 大晦日のお土産話(祖父と5人編①)

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大変ご無沙汰しておりました~juniです。
mameさんより久しぶりに新作が送られて来ましたので更新します。

三日前までパソコンが仮死状態で泣き泣きでした。
何とか復活 データも無事でしたぁ (T T)

~その後の物語~ 大晦日のお土産話(祖父と5人編 ①)

二人の心は決まっている。

まずは、おのおのの両親に話をした。



鉄之助は手放しで喜んだ。

自分が長男であり、本来ならば如月家の後(いるかに婿養子)を考えねばならない。

しかし、可愛い一人娘を家の犠牲にはしたくないと、目を瞑っていた。

先だっての行動の理由には、それも含まれていたのだ。

周囲にイロイロ言われる前に、望まれて望まれていく・・・断ることさえ難しい縁ならば、周囲も納得するだろう。

上野介とて一緒で、本当は分家の口さがない者等にアレコレ言われたくもないし、修学院のことも、本心を言えば・・・いるかに継いで欲しかった。

が!それはとどのつまり、婿養子を迎えるということ。

困ったことに、如月いるかの婿養子なら喜んで!と、ごり押ししそうな連中は片手では足りぬのに、孫を幸せに出来るような器の持ち主は居なかったのだから。

この者ならいるかを託せる!そう思った教え子は、どう考えても山本家が手放すとは考えられない、頭脳・技量・器、全てを持ちえている。

少々?いやかなり強引なやり方だったが、2人に接点は持たせた。

後はなるようになろう・・・と、期待していなかったが、瓢箪からコマが飛び出した。

信じられないことに運良く?双方惹かれあい、それだけでも嬉しい限りと十分満足していたのに、彼にとっては・・・上野介の可愛い孫は、かつて自分も出会った「珠玉の女」らしい。

内心驚きつつも、愛する孫が幸せになれる最高の相手、必ず娶わせるやりたい。

ご先祖様には申し訳ないが、可愛い孫の幸せにはかえられないのだから。

嫡流の存続など諦めてしまおう・・・そう決意した矢先、沸き起こったのが家出騒動だったわけだ。

少々複雑な気持ちになりながらも、春海の父へは言うだけのことは言って、後は本人達次第と納めた。

いるかと春海、2人の防波堤になり、彼らが漕ぐ舟が求める所に行き着けば、それでいいと考えたからだ。

あの責任感の塊のような春海が、まして山本家が、こんなに簡単に婿養子を了承するとは・・・思ってもみなかったのだ。



「年末に2人が行きますので、宜しくお願いします。」と、両家から連絡が入り、

「春海から話は聞きました。宜しくお願い致します。」という春海父には、心底驚き申し訳なくなり。

「春海君が婿養子になってくれるそうです~。」と鉄之助から喜びの電話が入ると、上野介は一喝した。

「何をすべて子供任せにしておる。気兼ねしておるやも知れぬだろう。人一人、いや、二人の人生と家など、比べようもなかろうが!」

鉄之介は肩をすくめつつも、

「でも、これで如月家は安泰ですよ。あちらには弟さんもおられることですし。」とのたまった。

それに対して、

「とにかく、年末にいるかと春海が来た時にわしがじっくりと話すわ!」と怒りを顕わにしたのだった。



早朝2人して東京を出発し、昼過ぎ?いや夕方といったほうが正しいのか、倉鹿に到着したいるかと春海は、早速如月邸へと向かった。

もちろん、祖父・学院長と話をする為である。

その日は、春海は進の家に泊まり、いるかは学院長宅で女子宿泊会が決まっていた。

面々がそろう前に、大事な話をせねばならないと、2人は挨拶もそこそこに祖父と対座した。

「祖父ちゃん、話は聞いたと思うけど、あたしが如月を継ぐから。」

春海は静かな表情で横に座っている。

行きの列車の中で、まずは2人の気持ちを伝えようと相談したのだ。

父鉄之助から、祖父は喜びの声を発しなかったといるかは聞き、その事を春海に話すと、いるかの気持ちと・・・それを応援したい自分の気持ちを伝えよう、という事になった。

「家のことを気にかけてくれるのは嬉しいが、お前たちのようなヒヨッ子に心配してもらう必要はないわ。」

上野介は言い放つ。

瞬間湯沸かし器のいるかは、カーッと頭に血をのぼらせたが、横に座っていた春海が、いるかの服の袖を軽く引っ張る。

そうだった・・・。祖父ちゃんは、あたし達の為に反対をするだろうって春海が言ってたっけ。

学院長はきっと、お前がカッとなるようなことを言うだろうが、それはそれとして、自分の気持ちをシッカリと言うんだ。

俺の本心、いるかは解っているだろう?学院長にはきちんと説明するさ。

きっと理解して頂けるよ。

「心配なんかしてないよ。祖父ちゃんには悪いけど、別に如月家なんてどうでもいいんだ。」

孫のあまりな発言に、祖父は蛸のように口先をのばし、何じゃこいつら何しに来た?と言わんばかりに、かわるがわる2人を見た。

「確かにさ。孫はあたしだけだから、考えなきゃいけないのかも知れない。でも、父ちゃんと母ちゃんから気にするなって言われたし・・・」

いるかはそう言うと、祖父の顔を覗き見た。

「祖父ちゃんだってそうだろ。」

そして、にっこりと笑った。

拍子抜けしたのは上野介で、どうも自分の考えていた事とは違うらしいと思う。

「あたしが如月を継ぎたいと思ったのは、倉鹿修学院が大好きだからだよ。一年半しか居れなかったけど、心から大好きなんだ。」

いるかは自分の思いを祖父に伝えようと必死だ。

「ほんとに倉鹿修学院って変だと思うよ。あまりにも祖父ちゃんらしくて、何だこりゃって最初思った。」

言うに事欠いて、学校の最高責任者と、3年間生徒会長を勤めた者の前で言う言葉とは思えない。

こいつめ(は)・・・と、2人はちょっと睨む。

「でもさ、みんな凄く楽しんでて、元気が良くて、真直ぐで。」

懐かしいなぁ・・・と少し寂しげな表情に、祖父と春海は最後の夏を想い出した。

結局、一番寂しい思いをしたのはいるかなのだ。

倉鹿修学院を、どれ程卒業したかったろう。

たったの一年半、それをきっかけに人生を決めようとしている。

だからこそ、応援したい・・・そう春海は思った。

「祖父ちゃんがさ、春海と出会わせてくれた場所だしね。」

さらっと気なしに言う言葉に、彼の胸が熱くなる。

「修学院を守りたいんだ。祖父ちゃんごめんね。如月家は、ホントにどうでもいいんだ。へへへ。」

彼女が一呼吸置くと、上野介が口を開いた。

「いるか、お前はそんなに倉鹿修学院が好きか?」

「うん。」

いるかは即答すると、つづけて

「多分ね。修学院を辞めなきゃいけなかったり、里見に行ったから気付けたんだ。ココがあたしにとってどれだけ大切か。」

首を傾げて尚を言葉を探す。

「去年の夏、倉鹿を去る時にね。ここでの1年半を、十年たっても二十年たっても絶対忘れないって思った。」

そう・・・

「だってさ、忘れられない思い出がいっぱいだもん。そしてね。ココが変わるのは絶対いやだ!って事にも気付いたの。」

里見みたいになったら・・・。

「十年、二十年後の倉鹿修学院を守れるのはあたしだけでしょ。それって凄いことじゃん。ラッキーって言うかさ。」

そういうと、いるかはにっこり笑って、

「だからさ、祖父ちゃん。倉鹿修学院をあたしに頂戴。」

両手を差し出して、単刀直入に言う。

「いるか、一応言うておくが、倉鹿修学院を継ぐということは、もれなく如月家当主がついてくるのだぞ。」

グリコのおまけみたい・・・いるかはちょっと可笑しくなった。

「しょうがないよ。何とかなるよ。」

如月の当主の座が欲しくて、やいのやいのと言ってくる連中が聞いたなら、どう思うのだろう。

わが孫ながら、これも器の大きいやつと思いながら、隣の大器を見た。

「いるかの気持ちはよう分かった。のう春海、お主はこれで良いのか?」

「はい。」

これまたにっこりと、一点の曇りなく微笑み、言いのける。

「僕の希望は、法曹界に入ることです。多分、学院長はお気付きだったのではないですか?」

上野介は頷きつつ、答えた。

「そうじゃな。検察官になりたいと文集に書いておったろう。何とも渋い奴!と印象に残っての。」

顎鬚を触りつつ、ほっほっほっほ!と笑う。

「すべての生徒の分とは言わぬまでも、入学者に関しては、出来るだけ知る努力をしておる。」

祖父は教育者としての姿を垣間見せた。

いるかは春海を除き見た・・・検察官?弁護士じゃなく?

「いるかに出会ってから、少し考えかたが変わったんでしょう。官憲の力に頼らず、自分の能力のみで戦ってみたくなりました。」

春海は力強く言う。

「特に、冤罪問題や弱者救済に興味があります。今は弁護士になりたいと思っています。それに弁護士ならば、ずっと倉鹿にいれますから。」

すっきりとした顔で言い切る姿に、上野介は自分の杞憂を理解した。

「そうか。そうか。お前達の気持ちはよう分かった。わしとしては嬉しい限りだが・・・」

上野介はいるかに視線をやると

「いるか、後はお前の頑張り次第じゃな。馬鹿に倉鹿修学院はやれん!」

ふんっと腕を腰にやり、胸を張って祖父は言ったが、その態度とは裏腹に、その顔は喜びに溢れかえっていたのだった。

~②につづく~いるかちゃんヨロシク二次小説 ファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク漫画

~その後の物語~ 大晦日のお土産話(春海編)

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mameです。

先日ご報告しておりました「大晦日のお土産話(春海編)」を更新します。
宜しければお付き合い下さいませ。


~その後の物語~ 大晦日のお土産話(春海編)

「いるかにプロポーズされた。」

ブ~~~ッ!!!

三人は、春海の一言に、そろってお茶を噴出した。

「汚いなぁ。」

そう言いつつ、爆弾発言の本人は、頬を染めている。

「相変わらずぶっ飛んでんな。公衆の面前で告白したと思ったら、今度はプロポーズか。」

一馬が顔を引きつらせて言う。

ほんのこの前、お見合いにからむ家出事件を起こしたばかりだというのに、話題に事欠かない2人である。

「それと、お前らだから言っとくよ。俺、将来、如月春海になるから。」

先程までの表情が、一転して真剣な眼差し・・・プライドが高く、孤高だった頃を知る幼馴染は、感慨深く彼をみた。

春海自身が決めたことだ。

「お前が良いなら、別にいいんじゃないか?」

進が言う。

「俺らにとっては、山本春海だろうが、如月春海だろうが、同じだしな。」

兵衛が笑いながら言い、一馬が頷く。

いるかを追って東京に行き、まして、家出した彼女を、学校を・・・すべてを放り出して、新潟まで追いかけて行った彼だ。

きっと、一番大切な人を得る為なのだろう。今更、驚く事ではない。

少なくとも、常識の範囲内なのだから。

「そう言ってくれると思ったよ。」

和んだ面持ちで、進・一馬・兵衛の顔を見回す。

いるかと出会ってから気付いた事の中で、最高の一つ。

奇跡のような彼らの存在。



大晦日の前日、女だけで!と言い張る彼女らを止める術も無く、泊りがけの男だけの集まりが、太宰家で行われている。

「いるかが、倉鹿修学院を守りたいって言ってさ。」

春海は、幼馴染に説明する。

「倉鹿道場時代からの伝統で、如月家の当主が、道場の流れをくむ修学院院長を継ぐことになってる・・・だろ。」

実はこの話、倉鹿で剣道をやっている者にとっては、それなりに有名な話である。

いるかだけが知らなかったと言っても良い。

「あいつが言うには、如月家の親戚っていうのが一癖も二癖もある人達で、いるか曰く”如月家一番のいばりんぼ”だそうだ。」

あいつら大嫌い!!!眉間に皺を寄せ、大声で言い放ったいるか。

「・・・そりゃまた、学院長といるかからは、程遠い親戚だな。」

一馬が口を開く。

4人は、隔世遺伝としか表現しようの無い、祖父と孫を思い浮かべる。

名家・旧家・格式高いはずなのに、フランクというか・・・飛びぬけているというか。

全国大会の合宿、いるかがお嬢様と知った時のあの驚き!、つい先日も、忘れていたくらいだ。

「成る程ね。いるかはたった一人の直系の孫だから、いるかが嫁に行けば”如月家一番のいばりんぼ”の誰かが、修学院を仕切るわけか。」

もっとも聡い進が、つらつらとすすめると。

「あいつが言うには、リコール前の、里見学習院みたいになるだろうってさ。」

春海が完成させる。

3人は、春海からの手紙で、2人の入学当初の里見修学院を少しは知っている。

たしかに、稀に見る名門校として、ずっと続いているが。

学校の名誉の為なら、すべてを闇に葬り、生徒が泣きをみることも辞さない・・・校風。

「いるかは真直ぐだし、弱い者の味方だからなぁ。面白くないだろうな。」

兵衛が一言いった。

「まぁ、少なくとも、エリート意識はそうとう強い方々らしい。」

春海が、もう一言添えた。

これまた・・・あの2人からは程遠いと皆が思う。

確かに、あの一風変わった伝統を継げるのは、いや・・・継ぐのは、いるかくらいのものだろう。

そして、たった一年半しかいなかった倉鹿修学院を、こんなに大事に想ってくれている仲間が誇らしい。

「春海は、いるかの夢を叶えてやりたいわけだ。うん?」

ニヤニヤと笑いながら、一馬が言った

「その為に、如月春海になると。」

進が続く。

「春海の将来に、影響は無いのか?」

優しい兵衛の一言に、春海は答える。

「ああ俺は別に、親父の仕事を継ぎたい訳じゃないから、何の支障も無いよ。」

「そうか。」

にっこりと彼は微笑み

「だったら2人とも、近い将来、倉鹿に帰ってくるわけだ。」と言った。

嬉しさを確認するようなその一言に「ああ、いるかと2人で帰ってくるよ。」と、春海は笑顔で答えた。

「にしても、お前の父親、よく許したな。」

一馬がポソッと言う。

昔から(・・・特に母を亡くしてから)あまり仲のよろしくなかった、春海と父。

仲が良くないというより、春海が一方的に毛嫌いしていたと言った方が正しい・・・と、3人は思っている。

「親父には、家出事件の後、代議士は継がないとはっきり言ったよ。それと、いるかが望めば如月になるってこともな。許しは貰ってる。」

その柔らかな物言いは、彼が父を語る時には、今まで一度たりとも見られなかったものである。

あまつさえ、笑顔さえ湛えている。

へぇ~~~っと彼らの視線が春海に集まった。

変われば変わるもんだ・・・。

いるかとの出会いは、この幼馴染の人生に、どれだけ笑顔を増やしていくのだろう。

その上、以前は目立ちたがりだったのに、いるかが現れてからは、縁の下の力持ちを素でやっている事に、本人は気付いているのだろうか?

「愛だな。」

「愛だねぇ~。」

「・・・五月蝿い!」

春海は真っ赤になりながら、噛み付くように言った。

「親父さんともいい感じのようだな。良かったな。」

兵衛は、春海を見ながら、安堵の笑みと共に呟いた。

「とにかく、春海といるかの無事の帰還を祝って、乾杯でもするか。」

進がそう言うと、缶入りの飲み物を皆に配る。

「お!タコハイかよ。気が利いてるな。」

一馬が、受け取るやいなや、缶を開けながら言う。

メンバー全員が、雪山ツアーを思い出しているのを肌で感じながら、おのおの目配せし「乾杯!」と祝杯を挙げた。



軽いとはいえ、アルコールが入れば口が軽くなるというものだ。

きっかけは些細なこと。

「明日のことだが、夜に集まるだろ。女性を一人で夜歩きさせるわけもいかないからなぁ。」

相変わらずの責任感の強さに、性分だねぇ・・・と進が視線を送った先は、もちろん春海である。

「銀子と杏子は俺が迎えに行く。」

兵衛がずいと身を乗り出していった。

彼にとっては、元スケバンの銀子もかよわい女子なのだ。もちろんその親友も。

「湊は俺が迎えにいくよ。」

一馬が言ったとたん視線が集中し、当の本人は、しまったぁっと顔を背けた。

「・・・へぇ、日向じゃなく湊なんだ。いつからだよ。」

ここぞとばかり、春海が突っ込み、

「ついこの間までは日向だったよな。・・・なぁ、兵衛。」

進が兵衛に確認すると、彼は「確かにそうだったな。」と返した。

話すのが嫌なわけではない。

揶揄われ、魚にされるのが目に見えていたから、自然にまかそうと黙っていたのに。

「クリスマスに告白した。OK貰ったんだよ。」

アルコールのせいばかりではないらしい。

精悍な顔が、どこまでも真っ赤になっている。

進は、そんな一馬を見ながらタコハイを持ち上げ、言葉を続ける。

「・・・長かった片思いに終止符か。もう一回乾杯するか?」

えっ!?っと、春海と兵衛が進を見た。

一馬は、何故それを!!!と目を見開く。

そんな事はお構いなくと、進が声を挙げる。

「ほら、もう一回乾杯するぞ。一馬の恋の成就に乾杯!!!」

3人は、わたわたと彼の後に続いて乾杯し、今日の魚は俺か・・・と、一馬は深くため息を吐いたのだった。



その隣で、春海は、少々複雑な心境で進を見ていた。

当然のように彼はその視線に気付き、「何だ春海?」と怪訝な様子だ。

「いや別に、それじゃ大川は・・・俺といるかで迎えに行くよ。」

言葉を濁すために、春海はそう言ったのだ・・・他意は、まったく無かった。

実際、誰かが迎えに行くべきで、いるかは喜んで行くと言うだろう・・・そう思ったまでだ。

一瞬の間の後。

「いや、俺が行く。」

突然進が、語気を強めて言った・・・春海には見覚えのある、その顔。

「お前、大川が好きなのか?」

珍しい彼の声色に、一馬がやったとばかりに、しかしかなり驚きを含め突っ込んだ。

「え?別に。そんなこと無いと思うけどな~。」

しれっと進が答えると、一馬がコケ、兵衛と春海が顔を見合わせる。

(・・・こりゃ、確かめないとな・・・。)

小さな波紋を残しながら、男4人の夜は更けていったのだった。

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~その後の物語~ 2人⑦最終話

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こんばんはjumiです。最終話をアップします。


~その後の物語~2人 ⑦最終話

自分に素直になるのは難しい。

人に正直になるのも難しい。好きだからこそ、良く思われたい。

その当たり前の感情が、物事を難しくする時もある。

感情のまま、正直すぎる行動が、誤解を招く時もある。

先に書き上げたのは、春海だった。

いるかの様子を窺うと、彼女はまだペンを動かしている。

春海とて、初めての作業で戸惑いはあったが、あえて書き出してみると、何と単純なことか。

自分が見えたな。もう少し複雑な人間だと思っていたが・・・。可笑しさを隠せない。

くっくっくっと春海は苦笑した。

その声(音)がいるかの耳に入る。

もう、書き終わったらしい春海は、何故か面白そうに笑っている。

あたしを見て笑ってる訳じゃないみたい・・・自分で書いたのを見て笑ってる?

好奇心が湧き上がる。

早く自分のを書き上げないと!と、いるかは手を走らせた。

「で~きた~!」

彼女は威勢よく両手を上げた。

先程までの気持ちは何処へやら・・・自分を整理すると、こんなに清清しいものだろうか。

春海が立ち上がり、いるかの隣に座る。

何となく紙の上に体を被せて、中身を見えないようにした。

「いるか見せろよ。」春海も不敵な笑みをのせて言う。

「え~~~、春海の先に見せてよ。」いるかは唇を尖らせて言い返した。

「・・・せーので見せ合おう。それならいいだろ。」

妥協案を提示する春海に、いるかはニヤッと笑い

「じゃ、せ~の。」掛け声をかけることで同意した。

「はい!」

二枚の紙、並べられた箇条書きの文章。

見入る2人・・・そして、お互いの顔を見合わせ、2人で苦笑した。

おもむろに、春海は内容を読み出す。

「俺の今一番大事なことは、いるかの傍に居て、いるかの笑顔を守ること。」

いるかも、頬を染めながらも後に続く。

「あたしの今一番大事なことは、春海と一緒に高校生活を送ること。」

誓いに似た響きが部屋を満たす。

「俺の将来の希望は、弁護士になる事。いるかと俺の家族が一つ屋根の下に暮らして、一番傍で、愛する人の笑顔を守りたい。」

「あたしの将来の夢は、春海や皆と出会った倉鹿修学院を守る。それと・・・春海と、ずっと一緒にいたい。」

いるかは、胸がすっと軽くなるのを感じた。

春海は、照れくさそうに語りだす。

「いるか、俺はさ。いるかに出会ってから、やりたいことをやってるよ。」(少なくとも、鹿鳴会の連中が驚くくらいには。)

「巻き込みたくないってお前は言うけどな。俺の本音を言わせて貰えば、巻き込まれたいんだよ。」

そこで、照れたような表情が一転した。

「何も言わないで・・・消えられることには耐えられない。俺の道っているかは言ったよな。俺は、2人の道にしたいんだ。」

春海の胸の中に、苦い思い出が甦る。あの夏の日と、ついこの間の家出騒動。

「何でも言ってほしい。関わらせて欲しい。巻き込んで欲しい。俺が欲しいのは、いるか、君だけだから。いるかだけなんだよ。」

彼の、狂おしいほどの、真直ぐな想いに囚われる。

どう答えていいのか分からない。

でも、あたしも・・・あたしが、正直にならなくちゃ。

「春海、あたしね。春海と、皆と出会った倉鹿修学院を、守りたいんだ。」

「それで?」

「如月いるかじゃないと、駄目なんだって。爺ちゃんの跡を継げないんだって。」

「そうか。」

「あたしね。春海とずっと一緒がいい。け・・けっこんする人は、春海じゃなきゃ、誰もいらない。」

「俺もいるかだけだよ。」

優しく微笑んで、即答する。

2人は静かに見詰めあうと、お互いが書いた紙に視線を移した。

いるかはもう一度、春海の書いた希望を読み返し、ついで自分の正直な気持ちを見て・・・春海の言葉を胸の中で反芻する。

俺は2人の道にしたいんだ・・・あたしも、そうしたい。

目を閉じ、すうっと深く息を吸い込み、深く、深く、モヤモヤ渦巻いたいたモノを吐き出して・・・。

意を決したように、春海の方を向き、右手を突き出し、言った。

「春海、私と将来結婚して下さい。き、如月春海になって下さい。」

春海は、一瞬驚いて目を見開いたが、

「喜んで。」

大したことでも無い事のように、すっとその手を取り、握り返し、グッと引き寄せた。

そして、ポフッと胸に収まったいるかを、春海はぎゅっと強く抱きしめる。

一瞬見失った彼女が見えた安堵。

「本当にいいの?マスオさんになるんだよ。」

プッ!

いるからしい表現に、ついつい噴出す。

「弁護士になるのに、何の問題も無いだろ。一番大事なのは、いるかの隣に、俺が居ることだからさ。だから、その為にも・・・」

そう言いながら、なお一層強く抱きしめる。

「これからは、何でも話してくれるか?巻き込んで欲しいんだ。それが、俺の、望みなんだ。」

胸の中で、いるかは小さくコクリと頷き、顔を上げ。

「今度からは、春海に何でも言うよ。今までゴメンね。」

そう呟く。

春海が腕を緩め、彼女の頭を優しく両手で囲い込むと、いるかはおずおずと春海の頬に触れた。

コツン

そして2人は、優しくおでこを合わせ、微笑みあったのだった。

いるかちゃんヨロシク いるかちゃん 春海 二次 画像 イラスト



翌日の放課後、野球部室でのことである。

「巧巳、誰にも内緒で相談したいことがあるんだが。」

春海が、チームメイトの背中に話しかけた。

何だ?!と、ベンチに座っていた巧巳が首を上げ振り向き、

「珍しいな。頭脳明晰生徒会長殿にしては。」と、ワザと茶化すようなセリフを返す。

対して春海は、本当に困った表情で・・・。

「茶化すなよ。巧巳にしか出来ない相談なんだよ。」と答えた。

普段見せないその顔、初めて聞くその言動。

「すまん。内容は何だ。」

その光景に驚きながらも、今度は真面目な表情で、体ごと春海の方を向き見上げる。

すると安心したように、春海は事の様を話し始めたのだった。

程なくして、彼の一応の話が終わる。

成る程な。

確かに俺に相談するはずだ・・・と巧巳は納得し、春海に一言いった。

「丁度、良い話があるぜ。明日には詳しく話せると思う。」

そして笑いながらもう一言。

「俺にも最近悩みがあってな。今の話、最高のタイミングだったよ。」

そう答える巧巳に、春海は一瞬困惑した。

が、しかし、信頼する彼の言うことだと、思い直す。

そして・・・。

「宜しく頼むよ。」と一言だけ言った。

その翌日、春海と巧巳の悩みが解消されたのは、2人だけが知る秘密である。

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