こんばんは~juniです。
後編をアップします~。
~ミラーイメージ~ 後編
「もうそろそろだよな。」
浮き立つ心を隠そうともせず、佐藤が春海に声を掛けた。
平尾も、人の悪い笑みで彼を見る。
「ああ。」
春海は憮然と短く答えた。
・・・やっぱり気乗りしない。
もう避けられない状況とは理解しているが、どうにも気が進まないのはしょうがない。
進や一馬に兵衛、倉鹿の仲間、巧巳に玉子。
揶揄われるのには慣れている・・・いや、慣れた。
だからと言って、歓迎できる訳はない。
・・・だいたい、いるかの事だからすぐに友達になるだろうし、あいつの男友達をこれ以上増やしてどうするんだ。
くそ!
自身に悪態を吐きながら、春海はいるかが降りてくるはずの階段へ視線を向ける。
「お!あの子いいな!」
平尾が一人の少女に目を付け、控えめに指差した。
佐藤も男の性と、首を向ける。
「おお!背はちょっと小さいけど、スタイルいいし可愛いし・・・隣の男、彼氏かな。」
・・・いいなと思う子には必ずいるよな・・・声を下げて語尾を結ぶ。
その間も、春海はある場所から目が離せない。
少女の隣に当たり前の様に立っていた男が、軽く彼女の頭に触れると同時に、春海の足が動いた。
「おい山本!どこ行くんだ。」
平尾と佐藤が同時に叫んだ。
少女は笑顔で男を見上げ、彼へと何事が言いながら片手を上げて、方向転換した。
少女の髪が、フワッと揺れる。
途端に何かに気付いたのか、大きく目を見開き微笑んだ。

春海の行動が気がかりながらも・・・彼の肩越しに見える少女の笑みに、2人は思わず「おお!」と感嘆の声を上げた。
彼女は足早に改札へと向かう。
男は少女の背中を見送る・・・瞳に、恋情の色をありありと浮かばせながら・・・。
そして、少女は右手を上げて、嬉しそうに名を呼んだ。
「春海!」
一瞬遅れて、春海もいるかに声を掛けた。
「いるか!」
彼らは微笑みながら、一緒の時間の始まりを喜び合ったかの様に見えた。
片方は間違いなく・・・。
春海は、いるかが改札を抜けたとほぼ同時に肩を抱き、その後方へ暗い視線を送った。
その先には、苦しいような、挑むような双眸が佇む・・・それは、鏡の向こうの自分。
佐藤と平尾は、固唾のを飲んで、その光景に見入っていたのだった。
予約していた店に4人が到着し、いるかが「家に電話してくるね。」と席を外した。
食事だけの予定が、変更になった為だ。(笑い)
彼女が離れるのを待っていたかのように、佐藤が口を開いた。
「彼女・・・いるかちゃん可愛いな。」
褒め言葉だが、喜べない。
”いるかちゃん”と呼ばれるのはもっと嬉しくない。が・・・当の本人が許したのだからしょうがない。
「ああ。」
どう取れば良いのか、不明の答えが返って来る。
「あの男、どう見てもいるかちゃん狙いだよな。」
春海は、暗い視線を平尾に向けた。別に彼が狙っていると言った訳でも無いのだが。
改札から店までの道程で、彼の発言の意味を理解した2人だった。
興味が無いと言うよりは・・・彼女に首ったけ・・・もっと言うと、気が気でない。
道すがら、彼女の笑顔に魅入られ、チラッと横目で見る男に、何人もすれ違った。
当の2人もそうなのだ。
そのたびに、言葉無くけん制する彼と視線が合い、何とも気まずい道中であった。
とにかくと、佐藤が春海に言う。
「もう、コンパにゃ誘わないからさ。」
「ああ。ヨロシクな。」
春海は短く返事してから、「いるかも今日の事喜んでたし、楽しもう。」と笑顔を乗せた。
その表情に、やっと人心地ついた彼らだった。
食事も終わり、佐藤と平尾組は、春海、いるかと別行動を希望した。
楽しい会食に、いるかは名残惜しそうにしていたが・・・春海が許すはずもない。
そこに気付いていない事が尚一層彼らを楽しませ、学友の知らない一面を、驚くほど沢山見られた時間に、2人は十分に満足した。
彼らを見送った後、平尾が佐藤に言った。
「惚れてんなー。」
このたった数時間で、敏い彼らは少女の気質を理解し。
同時に、気付きたくない現実・・・彼らの周りを取り囲むものをも理解した。
「ああ、ベタ惚れ。」
佐藤が羨ましげに答え、平尾が頷く。
肩書や学歴に見た目、媚びる事も無く、背負う何物にも左右されない。
得難い少女。
「羨ましいな。」
平尾は数度首を揺らし、はっきりと言葉として発した。
・・・そう、羨ましい!
・・・確かに羨ましい。だがしかし!
2人は春海の苦難を想像しあい、笑いあった。
その後、彼らの幸せを願い(主に春海の・・・)夜の街へと繰り出したのであった。
~ミラーイメージ~終わり
イラストそのままっす。
ペンダントがキラッってしたかった~(TmT)ウゥゥ・
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