いるかちゃんヨロシク 二次 小説 ファンサイト イラスト
こんばんはjuniです。
mameさんから続きが来ました。 早速アップ\( ̄ー ̄)/ エライ!
~その後の物語~ 親と子⑥
覚醒前、周囲の物音が聞こえ、思考する時がある。
どうしたんだ?・・・いるかは今、この家にいない筈・・・なのに、徹の笑い声がする。
「お父さん、もっとお家に帰って来てよ。」
お父さんと、徹が呼ぶ人物は世界で1人、春海は飛び起きた。
用意周到を常とする彼にしては、大変珍しい光景だ。
急ぎ、部屋着に着替えて、リビングルームに向かう。
ドアを開けたその先には、弟徹と、このマンションでは殆ど見たことの無い人物が笑って座っていた。
「あ、お兄ちゃん起きたんだね。お父さんがね、お兄ちゃんにお話があるんだってさ。」
ニコニコしながら兄を見る徹には、眠る前の暗い面影は見られない。
父親の存在の大きさを、再認識する。
「春海、起きたのか。なんて顔でわしを見ているんだ。そんな所に突っ立ってないで、まぁ、座りなさい。」
驚く自分を見て、何故か楽しそうな、父親の表情が気になりつつ
「はい。」
と短く答えて、彼とは反対側のソファーに座った。
その父は、今しがたの表情をがらりと変え、口を引き結び言った。
「お前に話があってな。」
その言葉に、例の話か・・・と思う。
眠る前の、父を理解したいという気持ちは何処へやら、何故か臨戦態勢になる自分が可笑しくもあり。
これも、俺なりの、オヤジへの甘え方かもしれない。
そんな風に思い・・・そう素直に思える自分に、ちょっと驚いた。
「はい、お見合いの件ですね。」
単刀直入に答える。
「ああ。」
何故か寂しげなその様子に、おやっ?と心の中で首を傾げ、葵おかあさんの言葉を思いだす。
お父様から大事な話があると思うわ・・・思い当たるのは、そこら辺だ。
「これからの話には、徹も一緒で宜しいでしょうか?」
「ああ、その方がいいな。」
徹の同席が望ましい・・・何となく察せられる。
「どうしたの?2人とも。」
喧嘩でもなく、何とも表現しがたい空気・・・険悪な2人を見慣れた弟は、逆に不安に駆られたようだ。
父と兄は、そんな徹を困ったな~と思いながら見た。
いつも気を使っていたであろう事に気付き、今更ながら、申し訳ない気持ちになったからだ。
父は、徹の顔をしっかりと見て、言葉をかけた。
「徹、今から春海に、大事な話をするから、黙って聞いていて貰いたい。お前にも関係のある事だから、しっかり聞いているんだよ。」
「はい。」
只ならぬ空気を察した徹は、大人びた返事を返し、視線を春海に向け、それを受けた兄は、何も言わず黙って頷く。
さて準備は整ったと、父は長男に正対した。
そして息子の目を見詰め、太ももに手を置き・・・、
「春海、今回の件、本当に申し訳ない。」
深く、頭を下げた。
初めての光景に・・・・・・言葉にならない。
両目を大きく開いた兄弟の目前には、父のつむじが見えている。
「オ、オヤジ。いや、父さん、どうしたんですか?」
春海は驚きを隠せず、立ち上がった。
「お前の大事ないるかさんに、何事も無く、本当に、本当に良かった。しかしこれだけは・・・」
あぁ、と合点はいくが、驚きの方が勝っている。静かに春海は座りなおし、次の言葉を待った。
「これだけは信じて欲しい。お前が一番望んでいる”いるかさん ”を、お前の隣に、座らせてやりたかった。」
やっと頭を上げた父親の顔を見て、それが嘘ではないことを感じる。
「春海、お前は昔、たった一度だけ、わしに言ったのだよ・・・お母さんの傍にいて欲しいと。そんな望みさえ、叶えてやれなかったからな。」
望み・・・父親への願いなど、春海の記憶にはまったく無い。彼が余程、小さい頃だろう。
「そしてお前に、長男として、アトを継いで欲しかったのだ。」・・・そう、山本の家名と家業の。
相変わらず言葉にはならないが、腹を割って話す父は、考えていた以上に親馬鹿で、笑いが込上げてくる。
徹も同じらしく、視線を合わせた兄弟は、微笑みあった。
「お父さん、解りました。」
攻めるでなく、揶揄するでなく、いぶかしむでなく、素直に言葉が出てきた。
はじめて、この人を、理解出来た気がした・・・。
「父さん、如月学院長は何と仰ったんですか?」
もう、何となく解るそれ。しかし、確認の意味を込めて尋ねた。
「お前を託してくれと仰った。如月家に欲しいという事だろう・・・2人の自由にさせてやれと。」
間髪をいれずに言う。
「だから、僕といるかのお見合いの話を、外務大臣に取り持って頂いたんですね。」
父は、倉鹿修学院の卒業生で、学院長とは見知らぬ顔でもない。
別にわざわざ、外務大臣を通さずともよいわけだ。
頭の良すぎる子を持つ親は、幸福だろうか?不幸だろうか?
「その通りだ。」
言葉は悪いが、借りを作りたくなかった・・・という事だろう。
いるかは学院長の、たった一人の孫だ。つまり唯一人の後継者。
「父さんには悪いですが、本心、僕はどちらでも構いません。」
父の顔が曇る・・・オヤジの気持ちを知った上で言うのは気が引けるが。
「それと、代議士を継ぐ気持ちはありません。俺には、やりたい仕事があります。」
目に見えて、落胆しているのが判る。
あの冷静沈着な人が!と思うと、申し訳ない気さえするが、もう一言。
「そして、これだけは言わせて頂きますが、いるかを巻き込むのは、金輪際止めて下さい。」
しいて強く、ゆっくりと言った。
「ああ、もう二度と巻き込まないようにする。」
父も、強く答えた。
春海は、その言葉に安堵し、父親を、存外信頼している自分に気付き、尚更可笑しく・・・続くセリフに、頭痛を覚えた。
「お前の希望も解った。だが、わしの希望も覚えておいてくれ。もちろん、いるかさんのことは約束する。」
諦めの悪い、全然悪びれない言葉。俺の希望と、いるかの事は別ということか・・・。
解ってはいたが、自分の希望を貫くことは、容易ではないようだ。
まぁ、こちらも諦めるつもりは毛頭無いが。
そう言えばこの人は「出来ないことは約束しない人」だった。
自分でさえ思い出せない、小さな春海のたった一つの望み・・・多分、約束はしていないのだろうと思う。
オヤジの仕事は、”母の傍に居る事が出来るような職業では無い”ことは、本人が、一番よく知っている筈だ。
未だに心残りであるらしいそれは、彼の望みでもあったのだろうと、春海は思った。
父と子は視線を交わしあい、お互いの意思の疎通を確認しあう。
「さて、大筋の話は終わったが・・・」
父親が一旦話をしめると、それまで黙って聞いていた徹が、突然口を開いた。
「いるかちゃんの家出に、お父さんが関係してるの? 如月家に欲しいってどういう事?」
「うっ!」
途端に、父の眉間に皺がよる。
「プッ!」
笑い事では無い筈なのだが、春海はとうとう噴出した。
今は亡き母に似た弟に、かなり弱い父親は、どう説明しようと、額に汗を浮き出させる。
しょうがないなぁ。後で必ずと約束したし、これは俺の役回りかな。
「父さんが、いるかと俺のお見合いを、計画したんだよ。」
物音に驚いた小動物のように、ピッと徹が反応する。
「お兄ちゃんといるかちゃん、お見合いするんだ。2人なら結婚するよね。いるかちゃん、僕のお義姉ちゃんになるんだね。」
喜び勇んで、春海を見ながらそう言う徹に、微笑みを向けつつ。
おいおい、お前のお義姉ちゃんの前に、俺の奥さんだぞ・・・と春海は思うが、大人気ないと自分を抑えた。
徹は、次に父親のほうを向き、
「お父さん偉い。大好き。」と笑顔を向ける。
可愛い末っ子の、満面のそれを見た父は、
「そうかな。偉いかな。」と頭の後ろに手をやり、照れた。
・・・クソオヤジ、何が偉いかな・・・だよ。オヤジのおかげで、俺はとんでもない物を見せられたんだぞ。
ある記憶と共に、湧き上がる怒り。春海は、言葉を続ける。
「だがいるかはね。見合い相手が見ず知らずの男と思っていたから、家出して。今回の騒ぎになったんだ。」
解ったか?と、笑顔で言い含めるように説明をしながら、春海は、微妙に首を傾ける。
「ふ~ん。お兄ちゃんがいるかちゃんに言えば良かったのに。え~、僕だけ知らなかったの?もちろん、お兄ちゃんは知ってたんだろ。」
さすが我が弟。良いところをついて来る。
父の顔を見て、出来れば言いたくなかったが、しょうがないな・・・という表情を作り。
「俺も、お見合いの話は、父さんから聞いていたんだよ。でも、相手がいるかとは、知らされて無かったんだ。」
春海は、キッパリと言った。
急に徹の表情が変わり、父親に、剣呑な視線が向けられた。
「お父さん、どうしてそんな意地悪したの! お父さんがお兄ちゃんに言ってたら、いるかちゃん家出しなかったんじゃないの。」
至極もっともな徹の言葉を聞きながら、父は小さくなる。
「理由次第じゃ、僕、お父さんのこと、嫌いになるよ。」
彼は、殊更小さくなり、再び謝罪する。
「本当にすまない・・・。」
そして、呟いた。
「春海は、いつも冷静だから。驚く顔をね。見てみたかったんだよ。」
・・・・・・・・・はっ?
「話さなかった理由はそれですか。」
春海は、つい、大きな声で、叫んだ。
普段冷静沈着な彼の、その素っ頓狂な声と表情を、父と弟は興味深く見入った後、徹が笑いながら言った。
「お兄ちゃんの驚く顔、見れたね。良かったね~お父さん。」
「ああ。」
「お父さん。今度はいるかちゃんがいる時に帰ってきなよ。きっと楽しいよ。」
「そうか。そうか。」
父と弟は、心底楽しそうに語り合っている。
一人、心穏やかで無いのは兄で、何をこの父子は話してるんだ!と2人を睨むが、ひるむ様子は無い。
兄は、まだまだ続きそうなその会話を、弟への説明を進める事で、切ることにした。
「徹。学院長が、俺を如月の家に欲しいっていうのは、俺が如月春海になるって事だよ。」
春海が、弟の顔を見て話しかけると、すぐに徹は質問を投げかけてくる。
「山本春海じゃなくなるって事?それじゃ、僕のお兄ちゃんじゃ無くなるの?」
そして不安げな、寂しげな表情で見上げる。
「そういう意味じゃない。いるかが我が家にお嫁さんに来るのとは逆に、俺がお婿さんに行くって事だよ。俺が徹の兄であることは一生変わらないし・・・。」
いったん言葉を切る。
「俺といるかが結婚して、もし俺が如月春海になったとしても、いるかが徹の義姉になるのは同じだよ。」
それを聞いて、徹はニコッと笑った。だったら何の問題も無い。
「徹、お前に一番関係があるのは、山本の家を、山本の姓を継ぐのか、次男のお前になることだ。」
彼は、ちょっと首を傾げた。
僕が家を、姓を継ぐ・・・。
「お兄ちゃんが山本春海のままで、大きくなって僕が誰かと結婚したら、僕は別の名字の徹になるの?」
「いや、お婿さんに行かない限り、山本徹だよ。」
彼なりに思考している様子が見て取れる。
「ふうん。家を継ぐって、僕が山本徹で結婚するってこと?」
「そうだな。」
「うん、判った。僕がお家を継ぐよ。」・・・僕にとって重要なのは、そんな事じゃない。
そのあっさりした物言いに、父と春海は驚いた。
同時に、一番の大器は彼かもしれないと思う。
自分にとって、最も大事な事を、見落とさない度量。
「そうか、徹が山本家を継いでくれるのか。だったらわしは、安心して仕事に励めるな。」
父が笑いながら言うと
「これ以上頑張らなくていいよ。それよりお家に帰って来てね。僕達も、東京に住んでるんだから。」
ちょっと頬を膨らませて、徹は父にぼやいだ。
確かに、折角同じ東京に住んでいても、この家に、殆ど彼らの父親は近寄らない。
でもそれも、今日から変わるだろうと、微笑みあう親と子の間には、確信があった。
「徹に一本とられましたね。」
春海は笑いながら言い、言葉を続ける。
「僕もまだ、如月になると決めたわけではありません。いるかと相談します。彼女の希望を優先したいんです。」
優しい表情で言うそれに、父はゆっくりと頷いた。
別室では、家族団欒とした3人を、藍さんが嬉しそうに覗き見る。
今まで見た事の無い光景に、「お昼は如何ですか。」と声をかけるべきか、しばし家族水入らずを楽しんで頂くか?と思案する。
結局30分ほど待って、時間が時間なだけに、昼食の用意が出来ていますよ、と、3人に伝えた。
その後、打ち解けた3人の笑い声は、昼食中もその後も、続いたのだった。
~⑦へ続く~いるかちゃんヨロシク二次小説 いるかちゃんヨロシクファンサイト 如月いるか 山本春海 いるヨロ いるかちゃんヨロシクイラスト いるかちゃんヨロシク画像 いるかちゃんヨロシク漫画