こんばんは。
mameでございます。
今回の話も、ドタバタ劇となっています。
ご不快を感じられる方は、読まないでくださいね。
大丈夫な方々は、宜しければお付き合い下さいませ。
~文化祭~Xday 黒 ④~「なぁ、巧巳。山本どうしたんだ?休憩取って、戻ったらアレだぞ。」
玉置が巧巳に問いかけると、
「そうですよ。怖がって、誰も声を掛けられないじゃないですか。」
早めに戻った2人は、早速店内のサービス要員・・・実際は客引きだが・・・に戻された。
しかし、春海の眉間には深い皺がより、撒き散らす殺気で、お客達は慄くばかりである。
本当に客を引かせては意味が無い。
実際、喫茶「ベルばら」からの戻りは、巧巳でさえ声を掛けられる状況では無かった。
まぁ確かに、女子サッカー部があの状態なら、春海の心が穏やかになれる訳がない。
それは、分かる。
が、しかし、それにしても、何なんだありゃ!
「春海!お前、当分バックヤードの仕事しろ。」
巧巳は春海にそう言うしかなく、救いの天使の予約席を作り、来店を待つほかなかった。
一方、女子サッカー部の「ベルばら」の客足は途絶えることを知らず、マリー姫とオスカルとロザリーは、目まぐるしく働いている。
しかし、その想像以上の盛況に、まず寂しくなったのは添え物のクッキーで。
そしてコーヒーが心細くなる頃、加納の一言が響いた。
「マリー姫にロザリー、休憩しなさい。3時10分前に戻ればいいからね。近衛兵、マリー姫にショールを渡して。」
心待ちにしていた一言に、2人に否などあろうはずがない。
「はい!」
元気な返事を返しながら、いるかはショールを肩にかけ、他の衣装は2人ともそのままに、野球部の喫茶~みちくさ~へと、美味しいお菓子を目指した。
さて・・・可愛いマリー姫とツンデレなロザリーが廊下を歩けば、注目されない訳がない。
一部の生徒などは、後ろをついて来ている。
道々、きゃ~と喜ぶ女子と、おぉ~~と感激する男子に、慣れない玉子が顔を赤くする中、いるかはまったく頓着していない。
どこまでも天然鈍感ないるかに玉子はあきれつつ、春海に軽く同情を覚えながら、野球部の出店へと向かったのである。
案の定~みちくさ~は盛況であった。
「ベルばら」程では無いにしろ、廊下には待ちの列がある・・・が、それでも玉子は、お客が少ない気がして首を傾げ。
一方いるかは、春海の「席とお菓子を取っておくから。」の言葉をあてに、ひょいっと首を覗かせた。
だが、肝心要の姿が見えない。
キョロキョロと首を動かし春海を探す、待ち焦がれたいるかの姿に、玉置が気付いた。
「ああ~っ、いるかちゃん!!!と犬養さん。席取ってるから、早く入っておいで。あそこね。」
テーブルを指差しながらの気さくな先輩の言葉に、「は~い!」と笑顔で言いながら、いるかと玉子は”予約席・如月様/犬養様”と名前の書かれたテーブルへと向かった。
そしてそそくさと席へ座りながらも、春海と巧巳の姿を探すが・・・やはり彼らは見当たらない。
どうしたんだろ?
いるかと玉子は顔を見合わせた。
「ふぅ、さてと・・・。」
玉置が溜息と共に小さく言うと、バックヤードへと入り込んだ。
そこには・・・午前中は花形だった春海と巧巳が、裏方の仕事をスピーディかつ黙々とこなしている。
本来ならば、売り上げ貢献のために、表に居る筈の彼らであるが。
今現在は、店内からはまったく見えない所で、お客様にお出しするお菓子とお茶の準備をしていた。
実は最初、春海だけが裏へ引っ込んだのだ。
しかし、誰も言葉をかけられない雰囲気に、結局巧巳がそばに置かれた。
・・・今の彼に耐えられる人材は、野球部には巧巳一人しか居なかった為である。
「山本、巧巳、如月さんと犬養さんが来たぞ。」
これで空気も良くなると・・・救いの天使の登場を、玉置は2人に告げた。
別人だな・・・とは、野球部全員の感想。
先程までと同人物とは思えない姿に、いろんな意味で安堵する面々である。
頭脳明晰、冷静沈着、あまりにも完璧すぎて、人間では無い(失礼)ようにさえ見える彼。
その山本春海が、普通の高校生男子に見えた、大変貴重な、短くも長い時間。
だが、多大な迷惑をこうむる場合がある!と、学習した時間でもあった。
「いるか、美味しいだろ。」

「うん。すっごく美味しい。近衛道君凄いねぇ。」
いるかは満面の笑顔で答えた。
その笑顔を嬉しそうに春海は見る。
隣で玉子が、「本当に美味しいよ。」感心しきりで言うと、巧巳が「俺も驚いた。」と笑う。
春海がいるかにサービスし(他の誰にもさせる気は無く)、巧巳が玉子にサービスをする姿に、周囲の女子は色めき立っている。
絵になる光景とは、まさに今であろう。
「この後どうするんだ?」
「う~ん、お腹も空いてるし、他のも見たいしね。校内を回ろうって玉子と話してた。」
春海の問いかけに、いるかが素直に答えた。
今食べているお菓子も、実は3人前あったりするのだが、空腹のいるかには足りるはずも無い。
見事にみるみる減っていく。
「だね。また戻らないといけないしね。」
「もど・・・そうだったな。」
玉子の戻るで、春海は不愉快なことを思い出し、一瞬言葉を詰まらせた。
そうだった・・・いるかの手作りケーキとツーショット争奪!などという、神経を逆撫でしやがるアレがあったな。
一気に落ちる周囲の温度に、
「お前らさ、もうちょっとココで待てないか?」
いち早く察した巧巳はそう言って、玉置と近衛道のいるバックヤードへと向かっていった。
結局、4人での校内見物となった。
「玉置と近衛道に聞いてきた。もうこっちは大丈夫だってさ。」
突然その場を離れた巧巳は、戻りしな、そう言った。
巧巳の言葉に春海は一瞬・・・そうだったか?確かに減ってはいたが・・・と思ったが、あえて深く追求はしない。
実際は・・・。
「午前中、2人はかなり頑張ってくれたからいいさ。多分あと一時間くらいで完売だろうし・・・っていうか。今の状態じゃなぁ。」
「裏方に、あの山本君がいると、ちょっとやりにくいので。仕事は、速いんだけど・・・モゴモゴ。」
玉置と近衛道に、やんわりとした物言いだが、きっぱりと拒否られたのだ。
こうなるだろうと、予想はしていた。
こいつのアレは、かなりまずかろう。平気で横に立てるのは、いるかくらいのものだ。
俺だって平気なもんか!と、心の中で愚痴りながら、いるかを待った時間。
再びの地獄!?冗談じゃない。
実際俺達は、十分に売り上げに貢献したのだからいいだろう・・・と、お役ごめん発言に便乗し、3人に報告したのだが・・・。
そうなると・・・。
春海は言うまでも無く、2人きりで校内を回りたい!
しかし、いるかは玉子と一緒に見て回る約束をしているという。
彼氏との、2人きりの同行は思考に無いのか?・・・と、言えないのは何故だろう?
仕方なく・・・、
「犬養、いるか、俺も一緒にいいか?」と聞くと、「別にかまわないよ。」「うん。」の返事に喜んでしまう自分に、少々落ち込む。
すると・・・「ちょっと待てよ。俺1人かよ。」と巧巳。
情けない顔で3人を見る彼に、いるかが一言。
「巧巳も一緒に回ればいいじゃん! ね?玉子良いでしょ。」
「あぁ(ゲッ!!!)」
瞬間、春海が巧巳に大いなる嫉妬心を燃やしたことに、いるかだけが・・・気づかなかった。
ともあれ、お姫にメイド、執事が2人という、むやみやたらと目立つ4人での校内見物となったのだった。
~文化祭~Xday 黒⑤につづく~
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