こんにちは、mameです。
秋らしくなり、夜は冷え込むようになりましたね。
先の日、秋桜を見てきました。
とても綺麗な景色の中、ゆったりとした時間を過ごしました。
~S様~
温かいお言葉ありがとうございます。
無理せず、のんびり続けていこうと思います。
今後とも、ヨロシクお願い致します。
後編の更新をさせて頂きます。
宜しければ、お読み下さいませ。
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~浅葱色の2人~楽しき日々(後編)
「お忙しい時にすみませんね。」
「それより、大変な事っていうのは何なんだ。」
部屋を辞して廊下に出ると、土方は不機嫌も露に言った。
沖田の振り返り見上げる目に、申し訳ない・・・そんな気持ちがチラチラと見えて。
「何かあったんだろう。別に怒っちゃいない。」
本当はこんな言い方をしたい訳じゃない。先程の2人にささくれているだけなのだ。
小さな背中の後を歩きながら、はぁっと一息吐いた。
沖田は、大きくため息を吐いた土方を振り返って
「本当に怒ってないですか?あの・・・怒りませんか?」
又も言う。
沖田の歯切れの悪さと、意味不明の言葉に土方は腕を組んだ。
・・・本当に何なんだ。いったい。
「だから怒っちゃいないと・・・おい!何をする気だ?」
沖田は土方の言葉を最後まで待たず、渡り廊下から庭にヒョイッと飛び降りると、そのまま軒下へと潜り込んだ。
「おい総司!」
次いで土方も、沖田の後を追って庭に飛び降りる。
しかしもう、その姿は、無い。
あっという間の出来事である。
・・・そういや、こいつの動きに敵う奴もいないな。
沖田の瞬発力、スピードについていける者は、武芸者集団の新撰組にもいなかった。
その上、常日頃から、沖田の行動は読めない事が多いのだ。
ふっと消えたかと思えば、団子を両手に持ち、満面の笑顔で食べているし。
ある時は人目を忍びしゃがみこむ姿に、「どうした?」と尋ねれば。
「しーしー。土方さん見つかりますって。」
めっぽう本気で、近所の子供達とかくれんぼをしていたりする。
色んな意味で、到底自分には出来ない事をいとも簡単にやる彼に、嫉妬を覚える。
いや、覚えた事があった。
一番は、自身が敵わぬ近藤の上をいく、その剣術に。
小柄でしなやかな肢体から繰り出る、一技にしか見えぬ三段突き。
そして、いくら血塗られようと染まらないその両手。
何度も目を、心を奪われた。
それがいつからだったのか。今となっては土方自身にもわからない。
「あいた!ごめん、ごめんって。ちゃんと返すから。」
飛ばせていた意識が、その原因の声で引き戻された。
軒下をゴソゴソと移動してくる音がし、それが途切れると、見慣れた姿が・・・大層汚れていた。
「お前、何て姿だ。新撰組の助勤ともあろう者が。」
「あはは、埃だらけのクモの巣だらけ。」
そう悪びれず言う様に、毒気も抜かれる。
「それで結局、大変な事ってのは何だ。」
再び土方が問うと。
「あ!これなんです。」
頭や肩を払う手を止め、胸元からいそいそと、小さな物体を取り出した。
「見て下さいよ。可愛いでしょう。」
首の後ろをつまみ、足の下に優しく手を添え、ついでに笑顔も添えて、土方の眼前に両手を突き出す。
にぃやぁぁぁ。みぃやぁぁぁ。
「猫・・・。」
「そうです。子猫です。とうとう生まれたんです。」
興奮冷めやらぬ様子の沖田である。
・・・怒りませんか?の意味が、今、理解できた。
握りこぶしを静かに握る。
お・こ・ら・い・で・かーーーーー!
「”一番”に”歳三さん”に見せたかったんです!!!」
満開の、そのほころぶような笑顔。
・・・まいった。
握力が抜ける。
「すっごく可愛いでしょう。屯所の下でですよ。凄いでしょ。」
喜びに沸く声、懸命に突き出された腕と、百面相のように表情をクルクルと変える様。
目が離せない。
・・・怒れねぇ・・・。
「もう少ししたら、皆にも見せようと思ってるんですけど。一番最初に見せたかったんです。」
土方は、一度は握った拳を開き、沖田の頭に手をのせると、ポンポンと軽く弾ませた。
そして、少し目を逸らして言った。
「ああ、可愛い可愛い。めっぽう可愛いよ。」
「でしょう。可愛いでしょう」
沖田は喜びをより膨らまして、頬を紅潮させた。
そんな”そう”を見て、この日々が続く事を、土方は祈ったのだった。
~浅葱色の2人~楽しき日々・・・終わり
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