こんばんは~juniです。
お待たせいたしました。
~リアル~後編をアップします。
ではどぞ~
~リアル~後編
放課後の部活前、生徒会室に役員達が集まってきた。
初夏の行事も間近、片づけるべき雑事や決定事項の為だ。
いるかに春海、玉子に新役員が生徒会室のドアへと消えていく。
巧巳の姿は見えない。遅れているようである。
いつもの指定席、いるかの横には春海が陣取り、片側に玉子が落ち着いた。
春海が、今から話し合うであろう書類に目を通すその横で、早速いるかは船を漕いで・・・いや・・・頬杖をついて、何事か考え込んでいる。
「いるか、今日はずっと変だぞ。どうしたんだ。」
春海は、さすがに気になっているかに尋ねた。
朝から少し変だった。
様子見するように見上げ、「何だ?」と尋ねれば、「別に何でもないよ。」と答える。
何かあるのはわかっている。
しかし、纏まっていないのか、話したくないのか、・・・いつもの様に、彼は待つしかない。
「大事なことはちゃんと話すよ。」と言った彼女との約束もある。
・・・約束を違えるやつじゃないしな・・・と、深刻そうな雰囲気でも無いので、そのままにしておいたのだが。
「え?うん。べつに・・・。」
変わらぬいるかの返事に、しょうがないと、彼は書類に目を戻した。
一方玉子は、2人のやりとりを見ながら考える。
・・・いるかのやつ、確かに朝から変なんだよね。春海も大変だ・・・。
彼らのやり取りを見続けて、もう2年が過ぎた。
”お似合いな2人”と言うより、”似ても似つかぬのに、妙に似た2人”という感じだ。
今だって、平気そうな顔をしているが、心中穏やかではないだろう彼。
誰が見ても変なのに、別にと言い続ける彼女。
・・・どうせ春海がらみなんだろうな。いるかがはっきりしてないあたり。
「いるかどうしたのさ。何かあった?」
玉子はいつもの軽口でいるかに尋ねた。
「別に何も・・・。」
同じ返しのいるかだったが、玉子の「ふ~ん、そう。」の返事に、昨夜の母の言葉を思い出す。
「ねぇ。春海君はお料理できるのかしら?」
「え?どうだろ。」
「聞いたことないの?」
「うん。」
「ふ~ん?そう。・・・でも、オタオタしてる春海君って想像出来ないわね。」
「・・・。」
それから気になって気になって・・・春海って料理できるの?
答えてはくれるだろうと思う。
が!「なんでそんなこと聞くんだ?」と聞かれたら!?
なんて言うの?最近料理にしてるんだって言うの?言って、「食べてみたい。」とか言われたらどうする?
・・・やっと下ごしらえの手伝いが出来るようになったくらいだし。でも気になる。春海の事だから知りたい・・・でも・・・どうしよう。
もしも心の声が周囲に聞こえたら、そんなに考え込むことか!というような内容である。
怖いもの無しのいるかが、こと春海に関することだと、簡単に尻込みする。
春海が知れば喜ぶであろう。恋する少女の悩みは可愛い。
「いるか!」
頭を抱えるいるかに、玉子が呼びかけた。
「パーマンのあんたが悩んでも、きっと無駄だよ。」
いるかが”パーマン”に反応し、玉子を睨む。
「うるさい。あんたなんかに私の・・・そういや玉子、あんた料理できる?」
降ってわいた質問。
それでもるかの突拍子の無さはいつもの事と、玉子は驚きもせず、一言添えて答える。
「相変わらず突然だな~。まぁいいけどさ・・・料理ねぇ。あんまり得意じゃない。どっちかというと・・・。」
「あ!そっか。玉子はお菓子が得意って言ってたね。」
去年の文化祭、いるか用に「誰でも出来るチョコケーキだから。」と手渡された時、そんな事を言っていた。
「まぁね。でも、全然ってわけじゃないよ。あんたとは比べられたくない。」
玉子の言葉に、いるかが眉間にしわを寄せた。
一緒にやった学食でのバイト。
「あ~も~、お茶さえ満足に入れられないの?」と言われながら手順を教わった。
いるかの不器用さを身をもって知る一人。
・・・春海以外に聞くのは、こんなに簡単なのに・・・そう思いながらいるかが玉子に言い返そうとした時、玉子が春海に尋ねた。
「そういや春海って料理できんの?」
ちょっとした疑問。
突然何だ?と玉子を見る春海。
・・・やったぁ。偉いぞ玉子!・・・願ってもみない玉子の言葉に、いるかは耳を欹てた。
「・・・料理か。出来ると言う程じゃない。困らない程度はするけどね。」
「困らない程度って、どんなだよ。」
・・・そっか。得意じゃないのかな・・・ん?困らない程度って???なにそれ、全然わかんないよ!だいたい、困った春海も想像つかないじゃん。
いるかは、玉子の質問に瞳を輝かせ、次いで眉根を寄せたかと思うと、口を尖らせる。
百面相さながらである。
そして、生徒会室の窓に映る自分の姿に気づくと、恥ずかしさに頬を染めた。
いつのまにやら、軽く?春海と玉子の視線も感じる。
いるかがあわてて顔を伏せようとした時、生徒会室のドアが開いた。
「悪い。遅くなった。」
その声に、皆の意識が入口に向かった。
・・・て!天の助けだぁ。
役員の最後の一人、巧巳である。
彼はゆっくりと歩み入り、玉子の隣に座ると「よっ!何の話してたんだ。」と、彼女らの顔を見た。
ドアの外に漏れ出ていた3人の声、内容が不明なだけに気になる。
「べ、別に大した話じゃないよ。玉子に料理ができるか聞いてみただけ。あと、春海にも。」
いるかが巧巳に説明すると、彼はさして気にする様子も見せないながらも「それで?」と先を促した。
「玉子はお菓子のほうが得意だって。春海は・・・困らない程度だってさ。そういえば、巧巳は料理とかできるの?」
今度は玉子が耳を欹てる番だ。
「俺?俺は結構やるよ。正美が家に帰った時に、仕出しとか他人が作ったものを食わせたくないしな。」
巧巳はサラッと言いのける。
・・・へぇ、意外だね。結構やるって、どれくらいなんだろ・・・。
玉子は巧巳を見やる。
・・・でもまぁ、シスコン(ごめんなさい。)の巧巳のことだし、正美ちゃんの為ならそれくらいやるか。根が優しいからね・・・。
愛する妹の為に、問題児扱いされ留年になった里見に、通い続けたくらいなのだ。
料理くらい朝飯前だろう。
玉子は巧巳といるかの会話を聞きながら、何とはなしに春海を見た。
一方いるかは、想像だにしていなかった巧巳の言葉に興味津々である。
「そうなんだぁ。巧巳の得意料理って何?和・洋・中、どれが一番得意?」
・・・春海に内緒で教えて貰えないかなぁ・・・そんな事を考えつつ、元来作るより食べるのが得意?ないるかの事、興味は尽きないようで、身を乗り出すように巧巳に尋ねる。
「得意料理ねぇ。和なら”肉じゃが”、洋なら”オムライス”、中華なら”マーボー豆腐”とか・・・正美が好きなヤツは一通りな。」
「わぁ~すっごいじゃん!正美ちゃん喜ぶでしょ。それにさ、巧巳の彼女になる人は幸せだねぇ。」
いるかは、満面の笑顔で言った。
「そ、そっか?うん、正美は毎回喜んでるな。」
無論他意無く、もとより何気なく、和気あいあいとした2人の会話は尽きない。
さて、そんないるかの様子に・・・俺の時と全然違うだろ・・・と、見当違いな春海である。
先程と同じく視線は書類に向けたままであるが、心中穏やかではない。
・・・俺、いるかに今まで”すっごい”とか、言われたことあったか?・・・いやいや重要なのはそこじゃないだろ。いるかのタイプは”料理のできる男”?・・・。
2人の会話が終わるまで、青年の自問自答は続くのだった。
その日の部室での出来事。
遅れて部活に参加となった2人、練習着に着替えていた時の事である。
玉子がいるかに言った。
「ねぇ、いるか。春海がさ”困らない程度に料理ができる”って言ってたじゃん。」
「え?ああ、うん。」
珍しく前ふりなしの玉子に、一瞬いるかが詰まった。
「今は本当だろうけど、この先どうだろうね。」
「え?なに?なんの事?」
いるかは玉子の真意が掴めない。
玉子とて彼女に伝わるとは思っていないのだが。
「名コックの誕生かもね。ププッ!」
「え???どういうこと?」
「そういうこと!おっと藪蛇藪蛇。じゃ、先に行くね。」
玉子はいるかに背を向けると、ヒラヒラと手を振って部室を出て行く。
その背中に「ねぇ、どういうこと~~~~。」いるかの声が響いたのだった。
~終わり~
春海可愛い(///∇//)テレテレ
ほのぼのっていいす
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