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~最初の夏~③

~最初の夏~

誰も居なくなった通路で、コンクリートの壁に背中を預け、一人立つ姿。

・・・俺らじゃ・・・。

言葉が続かなかった玉置。その意味を理解した。

もう一方の壁を、ただ、見ている。

いるかでさえ、言葉をかける事が躊躇われた。

それでも・・・。

「春海。」

その名を、呼んだ。

音も無く彼はいるかを見て、ゆっくりと歩んでくる。

そして・・・。

すとん!っと、彼女の肩に、顔を埋めた。

「・・・・。」

言葉無く、少し震えた肩。

いるかが両の腕を春海に回しギュッと抱きしめると、感極まったように春海も、強く、いるかを抱き返す。

ありったけの悔しさを振り絞るように・・・。

いるかの学ランの肩に白い跡を残して、彼らの、最初の夏は終わったのだった。




「はぁ・・・。」

肩越しの息にドキッとする。緩む腕と連動するように、春海の声が耳に届いた。

どれくらいの時間がたったのか、長いような短いような時間が過ぎて、やっと聞こえた、いるかにしか届かない程度の。

「負けたよ。悔しいな・・・あの一発を俺が許さなきゃ・・・。」

体を離しながら春海は言い、いつのまにかその手は、いるかの肩に移動していた。

「そんな!」

目と目が合い、口を衝いて出る言葉をいるかは飲み込む。

・・・きっとあたしもそう思う。

春海にも、いるかの気持ちが伝わったのだろう。

「次は負けないさ。」

「うん。」

いるかは素直に相槌を打った。

彼は次こそ誰にも、自身にも負けないだろう・・・そう確信する。

顔を上げた先の、勝利しか見ていない強い決意を全身に漲らせ、

「控室に行くか。」

「そうだね。みんな待ってるよ。」

振り切るように春海は、光射すグランドに背中を向け、いるかの肩に手をやった。

いるかも笑顔で、彼の肩に手を回したのだった。




春海は控室のドアを開けると、集まる視線と安堵の表情に、「ご心配をおかけしました。」と、頭を下げた。

しんと静まり返った控室。

後ろに立っていたいるかは、

「あたし、外で待ってるね。」

そう告げると、まだ開いたままのドアに向かおうとしたが、掴む腕に止められた。

強く握るその腕にいるかは足を止め、次いで巧巳が声をかけた。

「いるか、お前はいろよ。」

意図のわからない一言と、何より彼女を掴む腕に留められ、いるかは控室のドアを閉じる。

再びの静寂。

誰も動けない程のそれを破ったのは、春海だった。

ゆっくりといるかの腕を放し、控室の部員全員に向け、

「僕の気の緩みでまねいた一発でした。申し訳ありません。」

帽子を取り、頭を下げる。

ひざに置かれた手のひら、握られた帽子が一瞬、小さく震えた。

巧巳も含めて、山本春海はまだ1年の、最初の甲子園だった事を思い出す。

落ち着き払い、堂々とした投球に忘れがちな事実。

そして、誰よりも強い責任感。

「山本、頭を上げろ。あの失点は、俺のエラーのせいだろ。」

「いや、俺の送球ミスだ。山本、お前は完全に抑えてた。」

「あの時、皆の動揺に配慮出来なかった俺の責任だよ。すまん。」

選手達が、玉置が言う・・・が、

「いえ、僕の」

再び謝罪しようとする彼に、巧巳が怒鳴った。

「山本!いい加減にしろ。」

その空気を震わせるような怒鳴り声に、いるかを含め、春海や部員全員の背中が伸び、視線が集中する。

「野球はお前一人でしてるわけじゃない。戦力不足の原因は、もとはといえばリコール・・・俺だ。」

「しかし!」

春海が言葉を挟もうとするが、それを遮る様に巧巳は続ける。

「第一、お前がいたからベスト4まで来れたんだ。」

その一言に、「そうだ。」「そうだよ。」部員達の間から声が上がった。

「もう一度言うがな、野球はお前一人でやってるんじゃないんだ。」

繰り返した台詞の後、巧巳はニヤッと笑う。

「いくらお前が0点に抑えても、誰かが打たなきゃ勝てないしな。」

春海は、彼の少し意地悪な台詞に目を見張り。

「それに、0対0で延長・・・そんでジャンケンして勝っても・・・面白くないだろーが。」

予想だにしなかった結末に、破顔した。

他の部員も、いるかも笑った。

「うちの敗因は、たった一つだ。打撃力だよ。いいか春海、間違っても自分のせいだなんて思うな。」

・・・お前らは、一人で背負いすぎなんだよ。

巧巳は、睨みつける様に春海を見る。

「それは驕りだ。一人じゃ野球は出来ないんだ。」

「はい。」

・・・怒られてるのに、春海嬉しそう。何か、あたしも嬉しいや。そうだよね。一人で戦ってるわけじゃないんだ。巧巳!良いこと言うじゃん!

自然、巧巳に視線が集まる。

そんな中・・・。

「そうだ。打撃力だよ。低いもんなぁうち。巧巳と山本以外はさ。」

ボソッと・・・玉置がため息を吐きながら言って、下を見た。

釣られる様に、他の部員も床を見る。

・・・結局不甲斐無いのは、俺らなんだよ。

彼は、グッと両手を握り締めると顔を上げ、一言叫んだ。

「やる事は一つ、打撃力の強化だ。みんなやるぞ!」

「おーー!」

部員達は一斉に声を上げる・・・そうだ、進むべき方向は決まった!

一気に上がる士気に、控室の空気は一変する。

負け試合の後とは思えない盛り上がりの中、

「巧巳!春海!打撃コーチ宜しくな!」の玉置の一言に、彼らは顔を見合わせた。

燃えやすいのは若者の性とはいえ、もうバッドを握る者もいる始末で。

その中でも・・・とかく野球に関しては人一倍熱心な巧巳は、顎に手をやりもう思案顔である。

一度は諦めかけた今の状況、リコール後は尚更というものだ。

「そうなると、バッティングピッチャーをどうするかだな・・・マシーンじゃな。」

彼の何気ない一言に、いるかがピクッと反応した瞬間!

いるかの口を押さえようと春海が手を伸ばし。

ヒョイッといるかがその手を逃れ。

「はい!はいは~い!あたしやるーーーー。」

そう叫びながら右手を高く上げるいるかに、春海の表情が変わった。

こいつ!何も解ってないな!

あわてて「いるか!ちょっとまて!」と叫んだ後、落ち着いたように見せて、「俺がやりますよ。」と、言ってはみたものの。

「山本(春海)、お前にこれ以上、肩を使わせられるか!それに、バッティングピッチャーだぞ。」

予想通りの玉置と巧巳のお叱りに、黙るしかなく。

カンラカンラと笑ういるかの横で、思いもよらぬ展開に、春海は頭を抱えたのだった。

~最初の夏~④に続く


新作の中では③が一番好き( = ̄+∇ ̄=)v





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