こんばんは、mameです。
大変ご無沙汰しておりました。
お元気にお過ごしでしたか?
今回のお休みですが、私の想像以上に長いものとなりました。
少しづつ動くようになった指に、まかせて書いたお話です。
もしもお気に障ったら、申し訳ございません。
~ミラーイメージ~ 前篇
優秀な同級生との付き合いはこれまでにもあったが、今の状態はその際たるものだろう。
全国から選りすぐられた若者の中にあっても、彼の優秀さは頭一つ抜きん出ていた。
その上、努力する事を知っている者たちは、彼の見えにくいそれに気づかぬわけも無い。
憧れることも無く、畏怖することも無く、共に切磋琢磨するのだ。
周知の事実・・・彼はすこぶる頭が良い。
だからこその傲慢さ(以前は見受けられたが・・・)や狡猾さが出てもよさそうだが、真っ直ぐな彼の周囲には、同じような気質の者が集まっていた。
故に、いい人間関係が確立していた。
「山本、明日の夜空いてないか?」
講義が終了し、ざわざわと音をたて学生達が立ち去る中、一人が春海に近づいてきた。
「ああ佐藤か。何か相談事か?」
振り向きざま、春海は彼の顔を見ていった。
T大法学部で学ぶ学友の一人、彼は人当たりも良く明るい性格で、学内でも顔の広い・・・春海の親しいの友人の一人である。
「いや、O水女子大とのコンパがあるからさ。」
O水女子大といえば、家柄良し頭良し、その代名詞のような女子大だ。
「おい、何か良い話してるじゃないか。」
やはり同じ学部の平尾が顔を覗かせた。
「耳ざとい奴だな。」
ちょっとしかめっ面で佐藤は平尾を見るが、もちろん本気なわけではない。
もともと彼も、誘う予定だったのだから。
「O水女子大に行った女友達が、一緒に飲まないか!って誘ってきてさ。」
厳密に言えば彼らは未成年だが、大学生ともなると普通の事で、
「佐藤にO水の友人がいたとはね~。」
からかい気味の言葉に、
「高校の同級生だよ。それ以上言うならお前は誘わん。」軽く佐藤が睨む。
これは拙いと平尾が、「すまん。すまん。」と手を軽く合わせて謝り・・・春海は、軽口を言い合うそんな2人を楽しげに見上げていた。
その視線に気付いた彼らは、
「山本、折角だから来いよ。」「今回も不参加か?」おのおの口を開く。
彼らは今までも、何度か春海に誘いを入れている。
互いに参加し、今誘いをかけている彼が、まったく来ていない事も知っていた。
とは言うものの、彼の高校時代の有名さは周知、学内の噂で育ちもそれなりに把握している。
つまり、おいそれと、羽目を外す事も出来ない立場。
その上、お馬鹿なジュニアは世の中に沢山いる中で、彼の融通のきかない真直ぐさは、苦笑を誘うほど。
親の体面を潰す様な、そんな事をするような奴じゃない。
だが、今回の集まりは・・・もし良いなと思う相手がいても、十分に付き合えるようなメンバーが揃ってるからな・・・。
「相手としては申し分ないぜ。軽い気持ちでさ。」
一言添えて、もう一度誘いをかけた。
その言葉に春海は一瞬”?”を浮かばせたが、表情を見て、聡明な彼は2人の気遣いを理解した。
「気持ちは有難いが・・・本当に興味が無いんだ。」
少し微笑んで答える様は、男である彼らでさえ一瞬目を奪われ、周囲でチラ見する女子を魅入らせる。
教室に飛び交うハートマークと熱視線。
「あーー・・・モテる男は言葉が違うねぇ。」
「どっちかと言えば条件良しの俺らだけどさ。顔良し、頭良し、家柄良しの山本なら、それこそ選り取りみどりだぞ。」
尚も佐藤と平尾は誘うが、春海は首を横に振った。
その様子に、無理強いするつもりは無い彼らは、話を終えた。
今までの経験から、断られる可能性大で誘ったのだから・・・。
・・・あの山本春海くんと同じ講義を取ってるんでしょ。誘ってね。参加してくれたら嬉しいんだけど・・・。
期待も露な彼女らにも、無理だろうことは先に言ってある。
彼女らの要望は別にして、学友に申し分のない相手を選んでも、それでも・・・それでも答えが同じなら、それ以上言う必要はない。
ただ、思うことはある。
興味が無い・・・と、彼に言わしめる理由。
浮いた話一つない・・・その理由。
いや、ここまで来ると存在か?
そんな彼らの思惑をしり目に、彼はゆっくりと立ち上がり、講義室から去って行った。
「平尾、山本から女の話聞いたことあるか?」
「いや、無い。」
佐藤は顎に手をやり、思案顔で平尾を見た。
優秀な俺らでさえかなわない山本春海。
頭だけではいざ知らず、その他も完璧としか言いようの無い学友。
頭脳明晰、眉目秀麗、冷静沈着。
狙う女は数知れず。
周囲はおろか、当の本人も認識している。
彼は・・・女に興味が無い・・・とは言ってない。
その機会に興味が無いと、数多の上級の女を無碍にしても別にかまわない・・・と、言っている訳だ。
「里見出身のやつに聞いてみるか。」
「そうだな・・・。」
佐藤はそう答えた後、一言付け加えた。
「楽しみだ。」
「楽しみ・・・お前なぁ。」
「あの山本だぞ。平尾、お前も気になるだろーが。真実の追及、本望じゃないか。」
「真実の追及ねぇ・・・まぁ確かに、気になるな。」
依然誘った折に、一度聞いたことがある。
義理立てするような奴がいるのか?
彼は微笑んだだけだった。
~ミラーイメージ~中編へつづく
~和流様へ~
お返事が出来ず、大変申し訳ございませんでした。
何とか戻ってまいりました。
お許し下さるならば、今後とも宜しくお願い致します。
mame
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